第411話~瓦礫の山~
今日は間に合ったぞい( ˘ω˘ )
「投下!」
号令とともにガチャン! という音が鳴り、少しして轟音が鳴り響く。腹の底まで響くような爆発音だ。衝撃波と言い換えても良いかもしれない。
「効果確認、派手に吹っ飛んだな。アイラ、こちらコースケ。無差別絨毯爆撃を開始する。微速前進してくれ」
『ん、了解。微速前進』
魔道伝声管越しのアイラの声とほぼ同時に魔道飛行船が微速前進を開始する。そして俺がテッドに目配せをすると、彼は頷いて号令を発した。
「絨毯爆撃開始」
「「「アイアイサー!」」」
テッドの指揮で八人の魔銃兵達が爆弾投下装置に魔道飛行船用航空爆弾の装填をし始める。
まぁ、絨毯爆撃とは言っても数十、数百発と垂れ流すような派手な爆撃ではない。装填手八名が間断なく爆弾を投下するだけのものなので、延々と大量の爆弾が降り注ぐ本物の絨毯爆撃に比べれば大分迫力は控えめだろう。しかしこの世界において岩を粉々に砕くような威力の攻撃を一方的に空から叩きつけ続けるというのは悪夢のような出来事である。
「人工的なドラゴンとまで言うのは烏滸がましいけど、それに近い脅威だよな」
「確かに。既存の戦力では対抗のしようが無いですな」
竜はその身体の強靭さや力の強さ、そして竜の吐息の威力だけで恐れられるのではない。空から一方的にそれらを叩きつける能力を持つからこそ恐れられているのだ。
それに、この世界では投射兵器があまり発展していない。精々が粗末な弓か投石、投槍程度で、俺が作り出すまではクロスボウやそれに類する兵器なども開発はされていなかった。なんて言っても魔法があるからな。それに、魔道士達が投射兵器の発展を妨害していた節もあるし。
まぁ何が言いたいのかと言うと、高空の敵に対する攻撃手段というものが乏しいのである。この世界には。空からの脅威と言えばまぁドラゴンを筆頭として様々な魔物がいるわけなのだが、その中で空から遠距離攻撃を仕掛けてくるような魔物は殆ど居ないらしい。なので、あまり対空攻撃手段が発展しなかったという側面もあるようだ。接近戦を仕掛けてくるなら剣や槍で戦う戦士でも倒せるわけだからな。
え? ドラゴンも近接戦でなんとかなるのかって? ドラゴンは遠距離戦でも近接戦でも普通なんともなりません。げんこつでなんとかできるメルティが異常なだけです。
そして暫く爆撃が続き、ついに満載していた爆弾が底を突いた。八人で十五発ずつ。合計百二十発の爆弾が地表へとばら撒かれたわけだ。
「見事に更地というか、瓦礫の山だな」
「ですな」
テッドと一緒に効果確認用の小窓から地上――というかフライングバイターの巣を見下ろす。ゴツゴツとした岩場は魔道飛行船用の大型航空爆弾の雨によって無残に打ち砕かれ、瓦礫の山と化していた。爆撃前と比べると幾分地盤が沈下しているようにも見える。岩場の地下に空洞でもあったのだろうか? もしかしたらその地下空洞がフライングバイターの巣の本丸だったのかもな。
「ここまで完膚なきまでに破壊すれば戦術目標は達成したと見て良いだろう。竜騎兵に確認してもらうから、念の為それまで対地監視を続けておいてくれ」
「了解」
頷くテッドに俺も頷き返し、魔道伝声管でアイラに連絡して竜騎兵に現地の確認を依頼するように支持を出してから航空爆弾の補給を始める。
「しかし百二十発ともなると相当な量だよなぁ。ああ、また資材が吹っ飛んだ……今度また補充せにゃならん」
「閣下にも悩みはあるんですね」
「そりゃあるさ。こうして何もない場所からポンポンと爆弾を取り出しているように見えるが、こいつは俺が予め用意しておいたものを出しているだけなんだ。水の上を優雅に泳いでいるように見える水鳥と同じだよ。見えない水面下ではバタバタと足を動かしているのさ」
そう言いながら魔道飛行船用の大型航空爆弾百二十発分の資材を頭の中で計算して内心溜息を吐く。外殻の主な構成素材は鉄で、あとは火薬と機械部品、それに信管に使う魔石を少々。この中だと意外と鉄がネックなんだよなぁ……火薬の材料は概ね街中で入手できるし、魔石なんかも大した量が必要なわけではないから、今まで討伐した魔物の死体から手に入れたもので十分賄える。だが、鉄は大量に手に入れようと思うと自分で採掘するのが一番効率が良い。それに、鉄って街で大量に買おうとすると高くつくし、俺が必要とするような量を無理矢理買うと鉄不足になって市場に与える影響が大き過ぎるんだよ。
「またどこかで採掘せんと……せっかく周りが岩山ばかりなんだから、こっちにいる間に一日くらい採掘デイにできんかな」
この魔道飛行船を作るのにも大量の資材――特にミスリルや銀、銅を使ったので在庫が心許ない。この辺の素材も岩をガンガン掘っていれば手に入るので、是非とも補充したいところだ。グランデに頼めば適当な岩山のてっぺんにでも連れて行ってくれるだろうから、頂上から地上に向けて掘っていけば山の一つくらいは更地にできるだろう。今ならミスリルツルハシもあるしな。ちょっと帰ったらドリアーダに相談してみよう。予備日は用意してあるから、一日二日くらいはそうやって使っても問題あるまい。ああ、でもさっさと帰ってお子様達の顔も見たいんだよな……実に悩ましい。
そんな事を考えながら爆弾の補充が終わった頃、アイラから連絡が入った。
『確認完了。フライングバイターの巣は完全に崩壊』
「了解。それじゃあ帰投しよう。竜騎兵に先導するよう伝えてくれ」
『ん、わかった。戻ってくる?』
「今から戻るよ」
『了解』
魔道伝声管による通話を終え、テッド達と共に上甲板へと上がる。地上というか下方の監視に人は残さないのかって? パッシブ魔力レーダーがあるから人員は配置してないんだよな。魔力を使わずに魔道飛行船が航行する高度まで達してくる生物って基本的にはいないから。でも、今後は人員を配置するべきかもしれんな。だとすると対地監視に適した場所をどこかに作った方が良いかもしれん。この爆弾投下部屋は狭いし、ほぼ真下しか見ることが出来ないからな。うーん、そうなると船体の抜本的な改造が必要になるかな……考えてみれば船の形に拘る必要も無いのだし、強度の許す範囲で船殻に手を加えるのも良いかもしれない。
何にせよこの試作型魔道飛行船は突貫工事で作ったものだから粗が多いんだよな……他にも色々とプロジェクトが動いているからこの船にばかりかかずらっても居られないんだが、こいつはこいつで大きなプロジェクトだから中途半端に放り出すわけにもいかないし……まったく、困ったもんだ。
「現場の兵隊さんも大変だろうけど、開発者サイドも結構大変なんだよ……」
「ご自愛ください。閣下に倒れられてしまうと国が傾きますよ」
「そうなんだろうけど割と酷使されてるんだよなぁ……使い勝手が良すぎるのも問題か。まぁ、不満はないけれども」
頼ってもらえるのは嬉しいことだしな。これから子供達も増えていくわけだし、頼れるお父さんの姿も見せていかないと。まぁ、頑張るにしても出張が多すぎて顔も覚えられていない、みたいな悲劇だけは避けたいところだ。今回の出張を終えたら暫くはのんびりしたいもんだな。




