第407話~接敵~
危うく本日の更新分が消し飛ぶところだった( ‘ᾥ’ )(投稿しようとした時にライターが固まって落ちた
艦橋を降りて甲板に出ると、魔銃兵達が先程の戦闘で使用した魔銃の様子を各々確認しているところだった。
「テッド、兵の状態は?」
「問題ありません。弾薬の補給もすぐに終わります」
そう言っている間にも魔力が充填されていると思われる魔晶石と弾頭が入った金属製の弾薬箱が運ばれてきた。魔銃兵達は補給物資に殺到することなく、秩序を保ったまま補給を行っていく。
「兵達も落ち着いているようで何より」
「ワイバーンに比べれば容易い相手でしたから。的は小さくて狙い辛いですが、脆くて打たれ弱いようです。ワイバーンなら一発二発銃撃を食らってもまだ襲いかかってくることがありますが、フライングバイターにはそこまでの生命力は無いようで」
「なるほど。その分数で押してくる可能性があるから、油断はするなよ」
「勿論です」
自信たっぷりに頷くテッドに俺も頷き返し、今度は竜騎兵との交信を行っている竜騎兵見習いの側についているダルコの元へと向かう。
「ご苦労さん。問題はないか?」
「はい、閣下。今のところは恙無く」
特別製の魔銃用ホルスターで二丁の魔銃を背中に背負ったダルコが頷きながら答える。多腕族の彼女はあの二丁の魔銃を同時に扱うことができる。ソレル山地での訓練飛行で二丁の魔銃を六本の腕で高速リロードしながらドッカンドッカンぶっ放す姿はなかなかに壮観だった。
「彼はドラゴニス山岳王国の精鋭と連携を取る上での最重要人物だからな。守り通してくれよ」
「お任せ下さい。彼らには指一本――って奴らに指は無いか。とにかく毛筋ほどの傷もつけさせません」
「頼もしいな。君達から見ればうちの国の軍は何もかもが目新しい――ともすれば珍奇なものに見えるだろうが、こういう連中もいるのだと知っておくことはきっと無駄じゃない。恐らくは君が連絡員としてこの船に乗るよう差配されたのも、きっとそういうことを期待されているからじゃないかな。任務に支障が出ない範囲で色々と見ておくといい」
「はっ、ありがとうございます」
この船に搭乗しているドラゴニス山岳王国の連絡員二名はどちらもかなり若い。恐らくは将来的にドラゴニス山岳王国の軍で重要なポジションを期待されている新人なのだろうと思う。まぁ、仲良くしておいて損は無さそうだ。
「そろそろかな。それじゃあ俺は艦橋に戻る。死ぬなよ」
「「「はっ」」」
ダルコと若い連絡員二名の返事を聞きつつ、艦橋へと戻る。観戦武官達も今度は艦橋に留まらずに甲板に出てきているな。戦闘時にはこちらの指示を聞くように言ってあるが、さて実際にはどこまでいうことを聞いてくれるやら。邪魔にならないと良いんだが。
☆★☆
艦橋に戻る。若干魔道士さん達の視線が冷たい気がするが、敢えて気づいていないフリをしておく。ごめんて。でも必要なことだったと思うんだよ、俺は。この後絶対長期戦になるし。
「反応は?」
「まだ――いえ、魔力反応を検知しました。数は……多いですね。先程の三倍はいるかもしれません」
「そりゃ大変だ。総員、第一種戦闘配置。敵の数は先程の三倍近くと思われる。気を抜くな。乱戦時は誤射に注意。ホローポイント弾の用意もしておけ」
魔道伝声管で全艦にそう伝えながら俺もショートカットから各種武器を呼び出して装填状況や残弾を確認しておく。まぁ、この状況ならアサルトライフルが鉄板だが、至近距離の威力を考えればショットガンも選択肢に入るな。通常の拳銃弾を使うサブマシンガンじゃちょっと火力不足かもしれん。流石にガチの魔物相手に対した防弾装備も着けていない生身の人間相手の弾薬じゃ力不足が否めない。貫通力の高い弾丸を使うPDWでも今度作っておくべきだろうか? スライム素材をポリマー代わりに使えるから、なんとかいけると思うんだよな。
「コースケ、ハーピィ爆撃隊はどうする?」
「まだ待機だな。爆装の準備だけしておいてもらうけど、空戦装備はまだできてないし。まぁ、空戦装備が完成したとしても、実際に彼女達に空戦をさせるのは下策だと俺は思うんだけどな」
「そう?」
「そりゃそうだ。彼女達の本領は偵察と対地攻撃だと俺は考えてる。制空権の確保に関しては別の道を模索するべきだと思うね。今開発を進めてる空戦装備も、俺は自衛用って割り切ってるぞ」
「なるほど。その話は後でじっくりする。今は目の前の戦闘が大事」
「それはそうだ」
強力な7.62mm弾を使用するアサルトライフルをショートカットにしまい込み、魔力レーダーを担当している魔道士さんに視線を向ける。
「間もなくアイラ部長の視界に入る距離かと。交戦開始まで凡そ五分」
「はい、せんきゅー。どれどれ」
望遠鏡を使って魔道飛行船の左舷方向に目を向ける。うん、まだ何も見えんな。しかしアイラには見えたらしい。
「見えた。あっち」
「あっちか。ああ、見えた見えた。操舵手、取舵――よし、ここだ」
魔道飛行船には転舵用の風魔法式推進器が装備されているので、空中に静止したまま方向転換することができる。
「左舷側から敵が接近中。戦闘準備。戦闘に参加する観戦武官は魔銃兵の行動を阻害しないよう、補助に回るつもりで動いてくれ。下手に動いて流れ弾に当たっても責任は取らないからな」
血気盛んな観戦武官達には一応釘を刺しておく。観戦武官が死ぬのもまずいし、観戦武官のせいでうちの魔銃兵が死ぬのも避けたい。本当は見るだけにしてくれるのが一番なんだがな。
「敵集団接近、間もなく接敵します」
「了解。雷撃砲、発射準備。発射のタイミングは砲撃手に任せる。先程と同じく、友軍への誤射を避けることを優先しろ」
魔道伝声管で指示を出している間にフライングバイターどもの群れがみるみる近づいてくる。やっぱり速いな、空を飛ぶ生物ってのは。
「総員、全兵器使用自由だ。迎撃しろ!」
丁度良いタイミングだったのか、俺の言葉と同時に雷撃砲が放たれ、轟音と共に青白い光が魔道飛行船の左舷側を塗り潰した。さぁ、ここからが本番だ。




