第400話~祝い品お披露目~
今日はエンジンがなかなかかかりませんでした_(:3」∠)_(ユルシテ
流石に建国記念祭当日ということもあって、今日の宴料理はここ数日提供されていたものに比べても更に豪華なものであった。ドラゴニス山岳王国の料理の他にも大陸各地の宴料理や珍味――当然ながら小国家群の宴料理や宮廷料理といったものも多数並んでいるらしい。小国家群から招かれた来賓がその見事な再現度と質の高さに舌鼓を打っている。
「……個性的な見た目の料理もあるな」
「一応どの種族が食べても大丈夫な料理ばかりのはず」
「興味はあっても手を出しづらいものもありますわね」
そう言うドリアーダの視線の先にあるのは1.5リットルのペットボトルくらいの体型をしているイグアナのような爬虫類に豪快にそのまま串を通して丸焼きにしたような料理だ。口がでかくて顎が強靭な種族なら頭からバリバリいけるんだろうが、俺やアイラ、ドリアーダがそうやって食うのは無理があるな。大柄な肉食系獣人とかは普通に頭からいってるけど。
「今日は料理よりもあちらに人が集まっておるようじゃな」
グランデが視線を向けた先には人集りができていた。そこに何があるのかは俺達は見るまでもなく知っている。
「やっぱりミスリル製の武具は大人気だな」
「それはそう。普通に考えると国宝級の一品」
当然だという顔でアイラが頷く。あちらの人集りが出来ている場所には今回の建国記念祭に使節を送ってきた各国からの祝いの品が展示されている。その中でも注目を集めているのは俺がクラフト能力で作って贈ったミスリル製の竜騎槍である。刃は勿論、柄までもがミスリル製の一品で、更にその刃は通常の騎槍よりも長く、鋭く、遥かに頑丈だ。飛竜の速度と質量を活かした突撃は勿論のこと、長さの割に軽く、膂力に優れる者が使うのであれば通常の刺突や振り回しての斬撃までもが可能である。
しかもミスリル製なので魔力の通りが非常に良い。優れた武人は武器に魔力を通わせて身体の一部のように扱うらしいのだが、ミスリル製の武器というのはそういった運用に大変向いているのだとか。
「調子に乗って宝剣まで作るからです」
「槍だけってのもなんか片手落ちじゃん?」
そう言って俺は肩を竦めてみせる。間合いの長い竜騎槍だけだと小型の敵に肉薄されたら面倒だろうから、ミスリル製の大ぶりのファルシオンも一振り作ってセットで贈ったのだ。
俺が今回作ったファルシオンは曲刀というよりは直刀に近い構造のもので、幅広で頑丈な刃を備えている一品だ。幅広の刀身は切れ味が抜群の上に打撃力も有しており、ミスリルの切れ味も相まって鋼鉄製の鎧程度なら人体ごとバッサリと断ち割れる凶悪な威力を発揮する。作った時にテッドに試し切りをさせたのだが、鋼鉄の鎧を着せた丸太製の標的を丸太ごと叩き斬っていた。
斬ったテッド本人はその威力に顔を引き攣らせていたな。俺はそんなに剣の腕は良くないんですが、とか言っていた気がするが気のせいだろう。うん。
「他にも黒き森のエルフの産品とかもある。しばらく供給が止まっていたから、貴重品」
「それもコースケ様とシルフィエル女王殿下が共に成し遂げた成果ですわね」
今日のドリアーダは外交モードというかお姫様モードである。他国の人間も俺達の会話に耳をそばだてているだろうからな。彼女は王族としてちゃんと教育を受けている立場なので、少しお上品に振る舞っているというわけだ。俺達三人が素のままだから台無しな気もするが、まぁ指摘するほどのことでもあるまい。
俺達は祝いの品が展示されている場所からほど近いところにあった席を確保し、リザードなメイドさん達に頼んで食事や飲み物を運んで貰いながら待ちの姿勢を取ることにした。ドラゴニス山岳王国の王族達が会場に現れたら挨拶しに行かなければならないだろうが、それまではこの場所に留まってグランデに好きなだけ料理を食べさせてやろうと思ったわけである。
そもそも、ドラゴンというのはあくせくと動き回って他の個体とコミュニケーションを取るような生き物ではないのだ。基本的に巣に腰を落ち着けて食っちゃ寝する生き物なので。そんな彼女に俺達の都合に合わせて歩き回らせるのも酷というものだろう。体力的には何の問題もなくとも、ストレスは溜まる一方だろうからな。
ただ、そうしてこの場に留まっていればそれはそれで騒がしくなる。この場に参加しているのは殆どが小国家群に属する国々の親善使節で、彼らの国に比べればメリナード王国は一応格上ということになる。そうなると、あちらとしても挨拶に来ないわけにも行かないわけだ。
「ある意味新興国みたいなもんだと思うんだけどな……」
何組目かの親善大使と差し障りのないやり取りを終え、溜息を吐く。
優れた技術製品やミスリル製の武器、或いはミスリル鉱石やミスリルそのもの、もしくは黒き森のエルフ達が作る工芸品や蜜酒などを融通して欲しいという思惑が透けて見えたり、聖王国や北方二国を跳ね返し、屈服させた軍事力に関する探りをいれてきたりとなかなかにあからさまである。正直こういうやり取りをするくらいなら荒野を駆け回って開拓村でも作っていたほうが精神的にずっと楽だ。
「聖王国に滅ぼされる前は小国家群にしてみれば聖王国に対する都合の良い盾だった。彼らとしても聖王国の侵攻を跳ね返せるメリナード王国の復活は喜ばしいこと」
「その割にはメリナード王国の領土奪還の際に領土を切り取ろうと画策していた連中も居たみたいだけどな」
「国益に沿うなら火事場泥棒でもするし、平気で裏切りもする。それが国家というものですし、統治者たるものそうあるべきです」
「そういうものか。そういうものだな」
正義や仁義といった綺麗事は圧倒的強者にのみ許される贅沢品なのだろうな。まぁ、それならそれなりに対応するだけだ。争いごとは無いに越したことはないが、必要とあらば力を振るうまでである。そうならないように魔導飛行船なんてものを作って見せびらかしているわけだが。
「コースケに対するハニートラップ攻勢が無くて良かった」
「ここまで徒歩で来るのは相当な難易度だって話だし、まぁそういう人は同行してないわな」
「コースケ様は女性に甘いですから、もしそんな事になっていたらまた一人二人くらいは妻が増えていたかもしれませんね」
「断言はできないけど、流石に無いんじゃないか……」
何度も言ってるけどこれ以上増えたら身がもたないよ。手を出した以上は強い意志を持って責任を取るつもりではあるけどさ。というか二人して生温かい視線を送るのはやめてくれ。君達は本当に色々と大らか過ぎる。良かったとか言いつつあまり深刻さが無いよ。その時はその時とかちょっと思ってるだろ。