第382話~スイートルーム~
肩こりが酷い……整体とかマッサージとか行ってみたいけど、このご時世だとなんともなぁ_(:3」∠)_
暫くして部屋の用意ができたということで俺とグランデ、それにドリアーダさんと従者として同行しているゲルダの四人で用意された部屋へと向かう。
「立派な部屋だな。メリネスブルグの王城で使ってる部屋と遜色ないんじゃないか?」
所謂スイートルームと言われるような作りの部屋である。広いリビングから複数の寝室へと繋がるようになっているようだ。
「ふむ、そうじゃの。コースケ、妾の寝床はあのへんが良いぞ」
「はいはい」
グランデが指差した窓近くの日当たりの良い場所にクッションを山積みにしていく。背中の翼とか腰の尻尾が邪魔になるからグランデはベッドよりもこういう寝床の方が好きなんだよな。
「主寝室はこちらの部屋のようですぅ」
部屋の確認をしていたゲルダの声に釣られて部屋を確認しに行くと、大変に大きくて立派なベッドが鎮座している寝室が確認できた。大人が余裕で三人くらい寝られそうな大きさだ。一体どうやってこの部屋に入れたんだろうか? ここで組み立てたのか?
「ん? この扉は?」
寝室の隅に目立たないように設置されている扉を見つけた。クローゼット……ではないな。開けてみると、普通のベッドが三つ並んでいる。ちょっと内装が質素だが普通の寝室だな。
「何故主寝室に他の寝室と繋がっている扉があるんだ?」
「コネクティングルームですねぇ。従者や護衛が待機する場所ですよぉ」
「なるほど。この部屋の扉は……廊下に繋がってるのか」
「そうみたいですねぇ」
スイートルームから繋がっている他の部屋を見てみると、今見た主寝室とほとんど同じデザインの部屋がもう一つと、ランクを一つか二つ下げたようなツインの部屋がもう一つあった。もう一つの主寝室にもコネクティングルームが用意されているようだ。
「左右のコネクティングルームにメイド達のうち六人、ツインの部屋に二人、あと主寝室を俺とドリアーダさんとアイラで使うって感じでいいか」
「コースケくん。さん付けに戻ってるわよ?」
「む……なかなか慣れなくて」
ドリアーダさんは最初からお姉さんの雰囲気が強くてなぁ。なかなか呼び捨てにするのが難しい。アマーリエも呼び捨てにするのに結構時間がかかったし。まぁ気長に待ってもらうとしよう。
「妾はここで良いぞ。コースケのとこで寝ても良いしの」
そう言いながらグランデがクッションの山に飛び込み、クッションの位置を調整して理想の寝床を整えていく。なおクッションの配置パターンは毎度違う上に毎日変わっているので他の人が彼女の理想の寝床を作るのは不可能である。そのうち乱数発生器か何かに利用するのも良いかも知れない。いや、実は何かパターンがあるかもしれないが。誰か研究……しないよな。
「ベッド滅茶苦茶でかいからな。あのベッドだけで三人は寝れそうだわ」
あのでかいベッドならグランデも不自由なく眠れることだろう。まぁその、グランデと一緒に寝るとたまに尻尾とか鱗に覆われた手足が襲いかかってくる事があるんだけどな。アレ実は結構危ないから、一緒に寝る時はスライム素材のカバーが欠かせないんだよ。
「ところで二つの主寝室を三人で使うの?」
「そういうことになるんじゃないかと俺は思ってるけど。まぁ、俺が寝る方の主寝室で誰が一緒に寝るかってのを俺が言うのは角が立つ仕組みになってるから……」
「なるほど……今回はアイラが取り仕切る形になるのかしら?」
「それが良いと思う」
アイラはなんだかんだでほぼ最初期から俺と関係を持っている女性の一人だからな。
「アイラ、こちらコースケ。メイド隊と俺達の寝室は確保された。他の人員の宿舎も現在確保中とのこと。ただ、魔銃隊とハーピィ爆撃隊の半数と研究開発部の面々は船の維持と警備のために船に残るということにしたから、船に残す人員を選定しておいてくれ。滞在期間中は交代で船と宿舎を行き来してもらう。文官は全員こっちに宿舎を手配してもらう」
『ん、了解。テッドとダルコに言っておく』
「そうしてくれ。そちらからは何かあるか?」
『特になし。大丈夫』
「了解。それじゃあまた後でな。通信機は部屋に設置しておくから、何かあったら連絡してくれ」
『ん、わかった』
通話を終えたゴーレム通信機をスイートルームのリビングに設置し、部屋を見渡す。まずは荷物を出すとするか。
「ここの仕事が終わったらゲルダもメイド隊の指揮を頼む。船の方の食事の用意は……どうなるんだ?」
「こういった場合はホスト側が用意するのが普通だと思います。一応後でこちらのお城の人に聞いておきますねぇ」
ゲルダがそう言ってにへらと笑みを浮かべる。なんだかゲルダの笑顔は見ているとホッとするな。
「あとはー……何をするべきだろうか?」
「私達の私物を出したら、後はゆっくりとしていれば良いですよ。こういう時、長はドンと構えていれば良いんです。悠然と構えて下の者を安心させるのが上の者の仕事です」
「そういうもんか? なんか落ち着かないなぁ」
こういうのも貧乏性って言うのかね? 他の人達が働いているのに自分がゆっくりと休むとかそういうのはどうも落ち着かないんだよな。ああいや、上に立つ者が自分がやったほうが早いからってなんでもやってしまうのに色々と問題があることはわかるんだけどもね。
「コースケ様、お荷物の整理が終わったら通信機使わせてもらいますねぇ」
「ああ、うん。好きに使ってくれ」
そうして結局ドリアーダさん――ドリアーダに促されるままスイートルームのリビングで落ち着かない心地でゲルダの淹れてくれたお茶をドリアーダと飲んだり、お腹が空いたと騒ぐグランデにおやつを用意して食べさせたりしながら時間を過ごすことになるのだった。