第379話~着陸地点確保~
きょうはぽんぽんぺいんでした_(:3」∠)_
「基本的には伸ばす方向で良いかな? それとも交差させるか。交差ってか丁字型というか」
「伸ばすのも丁字型にするのもそんなに簡単なことだとは思えないのだが……」
「どっちも簡単にできるから。どっちのほうが使い勝手が良いんだ?」
「伸ばして貰ったほうが使い勝手は良いな」
「じゃあそういう方向で」
早速インベントリ内の建築用ブロックの在庫をチェックする。そうだな、建材としてはやはり丈夫な石材が良いか。まぁ、俺が配置したブロックは明確な意思を持って『攻撃』しないと耐久が削れないんだけど。流石に木材で作ったら見た目的に不安になるだろうしな……人間はともかく、飛竜も不安になったりするんだろうか? ちょっと見てみたい気はするな。
「しかし現時点でかなり攻めた造形してんな」
「そのせいでこれ以上伸ばすとなると基礎からごっそりと手を入れる必要があるらしい」
なんというか、飛竜の発着場はみょーんと伸びていた。いや、みょーんって何だよって言われそうなんだが、俺にはそうとしか表現のしようがないんだ。
王都ドラッドは巨大な岩山に作られた都市で、その頂上に王城が建てられている。巨人が踏んだら痛がりそうな尖塔が目立つ城だ。正直魔王城っぽい。そんな魔王城っぽい城の二階部分辺りから滑走路じみた飛竜の発着場が伸びているのだ。横から見ると根本が太く、軽量化のためか先に行くほど細くなっていっている。確かにこれを更に伸長するとなると大変そうだ。これ以上土や石を使って長くすると自重に耐えきれずにポッキリと折れてしまいそうだしな。
「ちょっと先っぽ削るぞ」
「ああ――うん? 削る?」
「そぉい!」
カルータス殿の生返事をそのまま了承の意味と受け取り、俺はクイックスロットに登録されているミスリルツルハシを取り出して滑走路に叩きつけた。付与によって強化されたミスリルツルハシは魔法で強化されているであろう滑走路の先端部分を難なく砕き、削る。
「ちょっ――ちょっと、ちょっと待たれよ! な、何を――!?」
「いや、接合部は平らじゃないとやっぱ見た目悪いからさ」
別に今のままでもくっつけられるけど、見た目がちょっと悪すぎるからな。隙間が空いてしまう。
騒ぐカルータス殿を無視して掘削作業を終える。流石に飛竜の巨体が行き来する発着場なだけあって横幅も割とあるな。まぁ、俺のミスリルツルハシの敵ではないけど。
「よーし、早速設置していくぞ。というか結構怖いな、端っこ。風も強いし」
「もし落ちたら妾がちゃんと拾ってやるからの」
「大丈夫だ、絶対に落ちないから」
そう、実はスニーク状態だと1m以上の落差がある段差の上からは決して落ちないようになっているのである。実は高層建築する時に便利なんだよな、これ。ボクセル形式のサンドボックスサバイバルゲームでこれを使わずに足を踏み外してくたばるプレイヤーは数知れず。無論俺も何度も死んでいる。マグマにダイブしたり奈落の底に落ちたりな……あぁ、思い出すと心臓が痛くなりそうだ。装備全ロスは嫌じゃ。
「うわぁ……」
「うむ、気持ちはわかるのじゃ」
「ドン引きされるのにも慣れたわ」
俺がスニーク状態――つまり中腰でコマンドアクションを使って前後左右に動くと、中腰でスライド移動をするという大変に気味の悪い絵面になる。コマンドアクションを使った移動で気味悪がられるのも慣れたものだよ、ハハハ。
慣れたと言えば平面上にブロックを配置するのも慣れたものだ。新しい離着陸場の床の厚さは2m――つまり2ブロック分あればとりあえずは問題あるまい。ブループリント機能を使って10m×10mの石材床をバンバン設置していく。まずは一段目。そうしたら一段目をブループリント機能でコピーして再設置すれば二段目の完成だ。完成までの時間は十数分ほどだ。ちょっと広めに作ったので、余裕を持ってちゃくりくできることだろう。
「……頭がおかしくなりそうだ」
「それな」
「コースケが言うのはなんか違うんじゃないかの?」
細かいことを気にするな。こういう場合にはとりあえず同意してやるのが一番角が立たないんだよ。後は忘れないうちに係柱も作っておく。あれだ、港とかにあるつい片足を置いて海を眺めたくなるやつだ。ロープをかけて船を繋留するための突起だな。ボラードとも言う。
無論、本来の海に浮かぶ船のように繋留するために使うためではない。横風に煽られて船が転覆――というか転倒しないようにするためのものだ。まぁ、着陸装置として強力なゴーレムアームが六本ついているから多分大丈夫だと思うが、念の為にな。
「とりあえずこんなもんか。よし、呼ぶぞ」
インベントリから携行型のゴーレム通信機を取り出して魔道飛行船のアイラに連絡し、着陸地点を確保したことを伝える。
『ん、こちらでも確認した。着陸する』
「わかった。慎重にな」
『ん、まかせて』
連絡を終えたのですぐに着陸地点から退避する。すると程なくして魔道飛行船が徐々に高度を下げ、危なげなく着陸する。六本の屈強なゴーレムアームで作られた着陸装置も問題なく機能しているようだ。
着陸が完了した魔道飛行船の前方下部がパカリと開き、中から船員達が飛び出してくる。係柱に丈夫なロープを結びつけて船を固定するためだ。丈夫なロープを探している際に下半身が蜘蛛のようになっているアラクネという種族の存在を知ってその糸を使って紐を作ってもらい、実験の結果大変に丈夫で素晴らしい性能だったのだが、火に弱いのとあまりに丈夫過ぎて普通の刃物で切るのが難しいレベルで丈夫過ぎたために採用は見送られた。いつか別の用途でお世話になりたい逸材だったな、アレは。
「到着」
「お疲れ。俺は船倉に荷物を吐き出してくるわ」
今、船倉には必要最低限の物資しか積んでいない状態だ。ドラゴニス山岳王国への贈り物やその他滞在に必要な物資などの大半は俺のインベントリに入れたままなので、船倉に収めておく必要がある。
「ん、わかった。私はドリー姉のところに行ってくる」
「ああ、レザルス殿と滞在について話し合っているはずだから、話を聞いてきてくれ。多分向こうの想定以上に人数がいるはずだから、最悪俺達の宿舎は自前で作ることも考える方向で」
「ん、わかった。でもそういうことにはならないと思う。招待客が想定以上に多くて寝床を用意できませんでした、じゃあ顔が潰れることになる」
「そういうものか」
「そういうもの」
アイラがコクリと頷く。なるほど、そういうものか。誰が俺達の宿舎を手配することになるのかわからんが、今頃人員の数を聞いて顔を青くしているかもしれんな。正直すまんとしか言えん。まぁ、いざとなれば警備のためと称して大半の人員を船に留めるって手もあるか。その辺りはドリアーダさんと話をして調整するべきだろうな。あまり先方に迷惑をかけすぎるのも良くない。
「キリキリ働くかね」
まずはスッカスカの船倉を満杯にしないとな。考えて配置しないとブーイングされそうだから、誰か捕まえて相談しながらやるとしよう。