第363話~招待状~
寝不足でエンジンがかかるのが遅いのがいけませんね_(:3」∠)_
仕事だけでなく家族サービスもしながら……させられながら? いや、まぁどっちでも良いか。とにかく暫くの間日々を平和に過ごしていた俺であったが、その平和な日々も長くは続かなかった。
「ドラゴニス山岳王国への親善使節ね」
今からおよそ一ヶ月後――秋口にドラゴニス山岳王国建国八百年の記念式典が開催される。その式典に是非ともメリナード王国からの親善使節を迎えたいと、そう書かれている書状――まぁ、招待状だな。招待状を眺めながら呟く。
「これは暗に俺とグランデを招待したいということだよな?」
「そうなるだろうな。そう書かれてはいないが、そのように期待されているのは間違いないだろう」
シルフィが執務机に着いたまま肩を竦めてみせる。うん、ナイス。何がってそれはアレだよ、たゆんぽよんは最高だよな。
「しかし一ヶ月後か。普通はもっと早く報せるものじゃないのか?」
心の中で思っていることなどおくびにも出さずにメルティに視線を向けてそう聞く。
エアボードやグランデによる空輸を使えば一月どころか一週間もかからない程度の距離ではあるが、普通に馬車や徒歩で行くのでは絶対に今からでは間に合わない期間である。
親善使節ともなれば当然俺とグランデだけで行くというわけにもいかない。供回りとしてそれなりの数の人員を連れていかなければならないし、国威を示すためにある程度の戦力――精鋭部隊を連れていかなければならない。地球じゃ親善訪問に戦力を同行させるなんてことは考えられないが、この世界ではそういうものなのだそうだ。まぁ、野盗や魔物に対応するための護衛という側面も大いにあるのだろうけど。
当然それだけの頭数を揃えるのも、それだけ人数で動くための物資を準備するのもそれなりに時間がかかるので、今から一ヶ月でドラゴニス山岳王国まで行く――というか来てくれというのは普通に考えればかなり無理な注文だ。
「必要であれば飛竜便の迎えを寄越すとのことです。それも必要なだけ。帰路も任せてくれて構わないと」
「なるほど。なんとしても俺とグランデを呼びたいって感じだな」
必要なだけ寄越す、というのはつまり護衛や荷物が多くなっても構わないということなのだろう。飛竜を使った飛竜貿易はドラゴニス山岳王国の屋台骨だ。それに使う飛竜をいくらでも融通するというのはかなりの高待遇だな。
「当然、手ぶらでってわけにもいかないよな」
「そうですねー。現金というのは品がないですし、まぁ持っていくなら黒き森のエルフの産品ですとか、うちの特産品、最新技術製品とかでしょうね」
「となると、缶詰や即席麺なんかも良いだろうな。あとはエアボードを一台に、ミスリル製の装飾品や武具なんかが良いか?」
「ミスリルの騎槍なんて喜ばれるかも知れませんね。ドラゴニス山岳王国と言えば騎槍を携えた竜騎兵ですから」
「なるほど、作っておくか」
ミスリルの在庫は山ほどある。ゴーレム作業台にクラフト予約を入れておけばミスリル武器を作るのもすぐだし、作っておくとしよう。
「ドラゴニス山岳王国には今まで一方的に世話になっているからな。借りを返す良い機会ではある」
「それはそうだな」
ドラゴニス山岳王国は俺とグランデの存在を認識して以降、一貫してメリナード王国を支持する立場を取り続けている。真っ先にメリナード王国が正当なる国家であると公式に認め、メリナード王国に手を出さないようメリナード王国西方に存在する少国家群に睨みを利かせ続け、飛竜貿易を始めとして様々な便宜を図ってくれている。ここらで今までの借りをまとめて返すのも悪くない。
「問題は、また出張になるってことだな」
親善使節のメンバー……というかリーダーとして俺以上に相応しい人物は居ない。俺が行くならグランデとシュメル達鬼娘達も当確となるだろう。護衛は必要だからな。他には……供回りとして獣人メイド達と、ゲルダも同行することになるか。他には外交相談役としてセラフィータさんかドリアーダさん辺りが適任か?
あとは護衛戦力としてメリナード王国軍の精鋭部隊を連れて行くことになる。これは銃士隊か魔銃隊だろうな。これは最低でも四十人くらいだろうか。それに文官もそれなりの数連れて行く必要があるだろう。メリナード王国とドラゴニス山岳王国の間で行われる様々な交流について色々と話を進める良い機会だからな。
「コースケも辛いだろうが、私も――私達も辛い。ここはお互いに涙を呑むしかあるまいな」
「そうだな、またシルフィ達と離れ離れになるのは辛い。あと、エリーゼとコンラッドにパパとして認識してもらなくなるんじゃないかと心配になる」
「あはは、そんなことは……ない、と思いますよ?」
「俺の目を見て言ってどうぞ」
メルティは決して俺と目を合わせようとしない。おい、こっち見ろよ。
「とにかく、事情はよくわかった。持っていくべき物資は俺がインベントリに入れていけば良いから、城に集積してくれ。ミスリル騎槍は俺が作っておく。他に俺がやっておくべきことは?」
「グランデに事の次第を話しておいてくれ。グランデが従う……というか寄り添う相手はあくまでもコースケだからな。私達がグランデに行け、というのは少し違うだろう」
「了解。同行者の人選はそっちに任せたほうが良いよな?」
「そうですねー、相談はしますけど基本的にはこちらで決めます。メイドさん達は連れていきますよね?」
「そうだな、こういう時のための彼女達だし」
こっちに残って俺の関わっている仕事を進めてもらうのもアリなのだろうが、まだ彼女達にはそこまでの判断は任せていないし、任せるべきではないだろう。
「コースケ将軍としては護衛戦力はどうしたい?」
「将軍て……まぁ、ウチの技術の最先端を見せるなら魔銃隊じゃないか?」
「なるほど、銃士隊ではなく魔銃隊を選ぶか。わかった、そのように手配しよう」
「移動手段はどうしますか? エアボードで行きます?」
「いや、飛行船開発に目処が付きそうだから、そっちで行こうかなと」
「え、大丈夫なんですか? テスト飛行もまだですよね?」
「無理そうならエアボードで行くさ。全員合わせても百人くらいだろ? それくらいならなんとかなる」
エアボードなら一週間かからずにドラゴニス山岳王国まで行けるはずだ。最悪、麓までエアボードで行って、山岳王国まで飛竜で連れて行ってもらっても良いしな。
飛行船もここ一週間くらいで大分形になってきたからな。研究開発部のケツを引っ叩けばなんとかなるだろう。まぁ、ケツを引っ叩くと言っても俺も一緒に働くんですけど。
またRimworldをしているのです( ˘ω˘ )(無限に時間を吸われる