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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
異世界の荒野でサバイバル!
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第035話~建築するということは穴を掘るということだ~

「ふむ、なかなかに美味いのである。この肉は挽肉を焼いたものであるな? しかもこの肉はビィフの肉のようである。ビィフを口にするのは久々であるな」

「手掴みで食えるのは良いな」

「食べやすいです」


 レオナール卿とジャギラ、ピルナの三人が頬張っているのはハンバーガーである。レシピはこうだ。


ハンバーガー――素材:パン×1 野菜類×1 トメル×1 肉類×1


 これでハンバーガーが二個できる。二個だ。なかなかにコスパが良い。ちなみに、トメルというのはこの世界のトマトにあたる野菜で、完熟していても緑色であること以外はまんまトマトそのものである。リコピンさんはどこに行ってしまったのか。

 ちなみにハンバーガーに使うパンはフランスパンっぽいものだったはずなのにゴマの振られた柔らかいバンズになっており、ギズマの肉を使ったはずなのにどう見てもビーフパテになっている。

 野菜に至ってはオニール(紫たまねぎ)を使おうがディーコン(黒ダイコン)を使おうが何を使おうがシャキシャキのレタスになる。ふしぎだなー、すごいなー。

 俺のクラフト能力って本当に大雑把だよな……いや、良いんだけどさ。

 ちなみにザミル女史は無言でハンバーガーにかぶりついている。食事中に会話をしない主義の人なのか、あまりに気に入って会話するどころじゃないのかは判然としない。なんとなく後者に見える。目の輝きが違う。


「二つじゃ足りんのである」

「あたしもおかわり」

「私はおなかいっぱいです」

「おかわりを所望する」

「はいはい」


 インベントリから木の大皿を取り出し、その上にハンバーガーを積んでおく。好きなだけ食うが良いぞ。


「動けなくなるほどに食べるのはやめておくように」


 そう言いつつシルフィも大皿に手を伸ばしている。シルフィも気に入ったのね。それにしてもこのハンバーガー、結構大きいんだよな。俺は二つで腹いっぱいだよ。

 食事を終えたらまずはトイレを作っておく。ここで今日は夜を過ごすわけだからね。トイレは大事。食ったり飲んだりしたら誰しも出るものは出るのだ。

 当然ながら水洗式などにはできるはずもないので、穴を深く掘ったボットン式である。仕方ないね。男性用と女性用ってことで場所を離して二つずつ作っておく。


「まずは今晩の宿泊場所だな」


 レンガブロックを使って床を敷き、壁を作り、屋根を作る。ブロックの大きさは無調整の一辺1mの立方体だ。壁としては分厚いが、ギズマやメリナード王国に駐留している聖王国軍の攻撃を想定するなら分厚いのに越したことはないだろう。昨日検証してみたら半分の厚さにすると耐久力も半減したんだなこれが。検証って大事だね。


「もうできたのか」

「建物だけな。内装はまだだ」


 と言っても今日寝るだけの場所なので、食堂と大部屋の寝室を二つ作るだけだ。寝室にはハンモックスタンドを並べておく。意外と寝心地良いんだよね、これ。ちゃんと毛布に包まらないと寒いけど。


「さて、次は防壁だな」


 第一拠点となるこの砦は、約三百人いる難民が全員入れるほどの大きなものにしようということで話が決まっていた。黒き森を出て最初の拠点となるこの場所は、場合によっては黒き森への侵攻を防ぐ最終防衛線になる可能性があるからだ。

 また、黒き森に近いということはエルフの支援も受けやすいということでもある。俺達がメリナード王国を解放し、本拠地が向こうに移った際にはこの砦は黒き森のエルフ達に引き渡され、彼等が利用するということも決まっている。

 代わりに、俺達は彼等の全面支援を受けるというわけだ。

 さて、肝心の大きさとデザインだが、これはダナンやレオナール卿、ザミル女史といった軍事知識に明るい人、それにメルティやアイラといった知識人を交えてかなり話し合った。話し合った結果、砦の広さは100m四方の正方形、城壁の高さは7m、厚さは3mということになった。

 また、正方形の角の部分にはダイヤ型に張り出した稜堡という防衛施設を作り、門を攻撃しようとする敵を側面から攻撃できるようにする。

 折角クロスボウという優れた射撃武器があるんだからこれを活用しない手はない。エルフのメイン武器である弓矢で防衛を行なう際にも有効だしね。

 まずは木枠のブロックを仮置きして大体の形を決める。この木枠ブロックはちょっと特殊な建築ブロックで、破壊しなくてもそのまま回収できるのだ。材料も軽いし建設時の目安作りに非常に役立つ。

 三十分ほどで仮置きが完了したので、ピルナに上空から見てもらったり、稜堡の形状についてレオナール卿やシルフィと話し合ったりする。問題無さそうなので着工を開始。

 まずは穴を掘る。深めに5mくらいだ。城壁を築くにあたって、基礎工事は大事である。基礎を地中に埋めておかないと、地面を掘って簡単に侵入されてしまうからな。


「あの速度はちょっと無いよな」

「土魔法の使い手でもああは行かないのである」


 俺の穴掘りを眺めながら護衛のジャギラとレオナール卿が好き勝手言っている。手伝えよオラ、と言いたいところだが、この掘削速度は彼等には出せない。寧ろ邪魔である。

 穴を掘ったら今度はレンガブロックを置いていく。みっしりと。

 ブロック設置にも慣れてきたけど、ひとつずつ置くのは面倒だな……複数個一気に置けるようにならないものか。と考えていたら突然3×3×3の二十七個を一気に置けるようになった。なんだろう? もしかして何かアチーブメントを解放したんだろうか?

 パッと確認してみると、新しいアチーブメントが解放されていた。


・初級ビルダー――建築ブロックを合計5000個設置する。※まとめ置き機能をアンロック。左右対称モードをアンロック。


「Oh……もっと早くアンロックしてくれませんかねぇ」


 左右対称モードというのは任意の地点に左右対称の軸となる中心線を設置し、ブロックを設置すると中心線を基準とした反対側にも同じブロックを設置する機能である。これがあれば建築がとても捗る。左右対称の建造物を作るなら労力が半分以下になるからね。

 なお、あくまでも左右対称なので既に設置済みの場所に関しては今からでは左右対称モードではどうにもならない。今まで作った分を破壊して作り直すか、今から左右対称モードでブロックを設置して、後でコツコツと反対側のブロック未設置部分をコツコツと埋めるかである。


 俺は後者を選ぶことにした。


「コースケ、何故か向こうにも壁が築かれているのだが」

「新しい能力を使えるようになったんだ。建築が捗るよ」

「……そうか」


 シルフィはちょっと遠い目をして現実を受け容れることにしたようだった。流石はシルフィ、俺との付き合いがこの世界で一番長いだけはあるな。俺? 俺はもうこの能力の不条理さは受け容れると決めたんでな。便利になったぜヤッターって感じだよ。深く考えるとクラフト能力が発する不条理ダークパワーで頭がおかしくなって死ぬからな。

 左右対称モードとまとめ置き機能を使ってガンガン城壁を作っていく。


「流石に今日中には終わらないのではないかと思っていたのであるが」

「できちゃったな」


 まだ細かい部分で修正しなければならないところはあると思うが、一辺100m四方、高さ7m、基礎の深さ5m、厚さ3mの城壁が出来上がってしまった。


「では、各員は防壁の点検を行なってくれ。問題点を見つけたら報告を頼む。コースケは整備を続けてくれ」

「アイアイマム」


 俺以外の人員が防壁のチェックのために散っていくのを見送り、俺は防壁に登るための階段や物資の備蓄倉庫、宿舎などの建設に取り掛かる。

 これが終わったら今度は井戸を掘ってみるかね。水が出れば良いんだが。

 井戸を掘ると言えば、地下の掘削もしなきゃいけないな。いざという時に砦の外に脱出するための脱出路は作っておきたい。でもなぁ、地下掘るのはしんどいんだよなぁ。

 俺もね、思ったんですよ。わざわざ地上を行かなくても安全な地下通路を掘ってメリナード王国までトンネル掘っちまえば良いんじゃね? とはね。

 エルフの里の防壁も基礎を強化しなきゃいけないから早速昨日試したよ。


 結論から言うと死にかけた。


 いや、掘るのは良いんだよ。サクサク掘れるんだ。ただ、あまり深く掘ると水が出る。空気が薄くなって苦しくなる。あと普通に落盤というか土が崩れてくる。生き埋めになりかけた。

 どうやらシャベルを突き立てた際に俺の理不尽力が適用されるのはシャベルの上側というか、土を乗せる側と先端だけみたいだ。裏側には何の効果もないらしく、俺のシャベルでいくら掘っても土は土である。

 どんな理不尽面があるのかも調べてみたが、要は石や砂利、土の硬さを無視してガンガン掘れるということに特化しているようだった。落盤とか空気対策は別でしてね、ということらしい。

 一応落盤に関しては木材ブロックでもなんでもいいから建材ブロックを配置することによって防ぐことが出来た。換気に関してはふいごのデカいのを作るか、風魔法とか風の精霊魔法とか、風の精霊石を使うかしなければならないのでは? という話になった。開通しちゃえば割と大丈夫っぽいから、空気穴を適宜作るという方法でもいけると思う。

 シルフィと一緒に潜れば問題ないんだけどね。シルフィのブレスレットには風の精霊石を始めとしていくつかの精霊石が嵌っていて、精霊石の効果で新鮮な空気を生み出し続けることができるのだ。

 トンネル戦法は考えていたんだけど、それなりにしんどいというか危険もあるし、準備もいるんだなぁということもわかって有意義ではあった。

 宿舎や倉庫の内装は今すぐに使うものでもないので、建物だけ作っておくことにする。


「コースケ、そろそろ陽が落ちる。作業はそこまでにしておけ」

「ん、了解」


 建物の設置は半分くらい終わったか。残ってるのは宿舎くらいだけど。防壁の出来は完璧だったらしい。土に塗れて頑張った甲斐があったというものだ。


「ほら、コースケ。服を脱げ。水で洗ってやる」

「はいよー、生ぬるいのでお願いしま――ウギャー! 冷たい!」

「ははは、すまんすまん」


 笑ってるけど、これ絶対わざとだろう。でも精霊魔法で水を出してくれるのはありがたいから許しちゃう。


「ははは、コースケはもう少し鍛えなければならんのであるな」

「筋肉が足りないな」

「そうですか? あれくらいが良いと思いますけど」

「骨格は悪くないですね。鍛えればものにはなると思います」


 レオナール卿、ジャギラ、ピルナ、ザミル女史が俺の裸を見て好き勝手に評価している。ジャギラはマッチョが好みらしい。ピルナはそうでもないようだな。ザミル女史の目線は女子というより教官ですね。

 恥ずかしくないのかって? 生娘じゃあるまいし、裸くらい俺はなんとも思わないぞ。

 そりゃ皆が服を着てるのにずっと裸で過ごせとか言われたらそりゃ御免だが、労働の後に泥を落とす時に肌を晒すのは別にって感じだ。嫌なら見るなの精神だぜははは。

 泥を落とし終わったら今度は温風を吹かせて肌や髪を乾かしてくれる。至れり尽くせりだ。


「皆も水浴びするか?」

「吾輩は明日の朝で良いのである」

「あたしは寝る前に浴びたいな」

「私もです」

「私もお願いします」


 女性陣は寝る前に水浴びをするようだ。覗かないよ? シルフィの裸なら毎晩見てるし。他の女性の裸体は怖くて見ようとは思わないね。ピルナ以外には簡単にワンパンでやられそうだし、何よりシルフィが怒りそうだ。


 この後は夕食を取ってすぐに寝ることにした。女性部屋の方からは何か黄色い声が聞こえていたような気がするが、女子会でもやってるんだろうか。俺の方はね、早く寝ないとレオナール卿にひたすらミスリル武器を強請られそうだからね。


 寝るよ。おやすみ! 俺は寝るんだ! だから肩を掴むその手を離せ! 離せぇ!

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