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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
355/435

第354話~発見者特権~

今日はぽんぺでしたねぇ……何も変なものは食ってないはずなんですが_(:3」∠)_

 エリーゼとコンラッドが産まれたその夜。二人が眠ったその隙間時間を使ってアクアウィルさんの部屋へと向かった。エレンとアマーリエはまだ目が冴えていて眠れないようで、二人で飽きずに赤ちゃんを眺めていた。俺もつい先程までその隣で同じようにエリーゼとコンラッドを眺めていたわけだが。


「また随分と大勢で来ましたね」

「話をしたら興味があるって皆がな」


 皆、と言っても着いてきたのはアイラと茶色羽ハーピィのフラメ、それにトズメの三人だが。そして、フラメとトズメは興味があると言ってついてはきたものの、初めて入るであろうガチのお姫様の私室が放つ絢爛さと優雅さに気後れしてしまっているようだ。シルフィや俺の部屋と違って王族に相応しい調度品を取り揃えているからな、アクアウィルさんの部屋は。

 え? 調度品の費用? まぁそれはシルフィが……間接的には俺が出していることになるけど。

 まぁ、こういうのは様式美みたいなものなのだろうしな。質実剛健のみで押し通そうとするのはそれはそれで経済が回らなくなってしまうし。メリナード王国の王族は締まり屋で、王族の部屋にすら質素で貧相な調度品しか置いていないと商人連中に噂されるのもうまくないようでな。なんともままならんね。


「ど、どうしましょうぅ……思いっきり場違いですよぉ……」

「そこまで狼狽えなくても良いと思うけど」


 震えながら足に縋り付いているフラメにそう言いながらトズメは苦笑いを浮かべているが、その本人もうっかり高そうな壺やら家具やらを壊してしまったりしないように気をつけているのがわかる。そもそも敷いてる絨毯からしてふっかふかだものな、この部屋。

 部屋の中で待機していたレビエラとゲルダが俺が追加で連れてきたアイラとフラメ、そしてトズメの分の席とお茶を用意し始める。


「それで、どんな成果が上がったんだ?」

「せっかちですね。まぁ、貴方らしいと言えばらしいですけれど」


 アクアウィルさんはそう言うと席に着くように俺達に促し、何かが書きつけられた紙のようなものをテーブルの上に広げた。一見、それは地図のようであった。


「……どこの地図?」

「うん? これは……」

「こ、この辺りの地図ではない、ですね? それどころか、メリナード王国周辺の地図ではないみたいですけど」


 アイラ達が首を傾げる。アイラなら地図なんて暗記していそうだし、元冒険者のトズメや夜目が利くのでハーピィさん達の中でも斥候を務めることの多いフラメなら普通の人よりも遥かに土地勘があるし、地図だって読める。その三人をして一目でメリナード王国周辺の地図ではないと判断するような代物。俺には心当たりがあった。


「オミクルの地図を描いたのか?」

「はい。貴方から……供与された天体望遠鏡を使ってオミクルを観察し、作成したものです。無論、私一人の手によるものではありませんが」

「そうなのか?」

「貴方が言ったことでしょう。オミクルや他の星々の観測をしている研究家を招いて話を聞いてみると良い、というのは」

「ああ、なるほど」


 アクアウィルさんは俺のアドバイス通りに専門家を招聘してオミクルの謎を解明するために精力的に動いていたようだ。


「このオミクルの地図がその成果というわけです。貴方が用意してくれた天体望遠鏡と予算はたいそう役に立ってくれました」

「そいつは重畳。追加や改善点などの要望があるなら承るぞ」

「それは助かりますが、まずは成果を確認してください。その上で予算を投入するかどうか決めるのが正しいやり方では?」

「それもそうか」

「本当に大丈夫なのですか? そんな適当な感覚で予算を湯水のようにじゃぶじゃぶと使うようではいずれ立ち行かなくなりますよ?」

「すみません」


 そこら辺を掘ればいくらでも金を稼ぎ放題だから、金銭感覚がな……僻地の言わばなり岩山なりを更地にすれば希少金属も宝石も好きなだけ出てくるもんで。はい。


「とにかく、説明しますね」


 そう言ってアクアウィルさんは地図を指差して天体望遠鏡で確認した地形を説明し始めた。


「まず、こことここ、それにここに川が流れているのを確認しました。そしてこの辺りは山脈になっているようですね。あと、川が海へと流れ出ているこの周辺は平野のようです」

「ふむふむ。見事な三角州だな」

「そうですね。それでここからが本題なのですが」

「うん」


 地図の上にはいくつかポイントが打たれている。それは今俺が指摘した平野部の三角州であったり、川沿いであったり、湖の近くであったりした。


「これらの地点に人工物かもしれないものを発見しました」

「なるほど」

「えっ」


 俺とアイラは納得して頷き、トズメとフラメは驚きの声を上げた。


「まぁあってもおかしくないだろうなとは思っていたけど、本当にあったか」

「興味深い」

「え、なんで二人とも普通に受け容れてるの?」

「か、神様の国ですか? 死者の国? それとも魔物の国なんですか?」


 トズメは動じない俺達二人に困惑し、フラメは完全に混乱している。何らかの文明の痕跡らしきものを発見したアクアウィルさんと天体観測の専門家だか権威だかさんは一体どう思ったんだろうな? 俺? 俺はほら、水と大地、森林らしきものがあるなら知的生命体がいるかもしれないなとは思ってたし。

 というか、この世界自体がどうも不自然というか作り物っぽいんだよ。俺からすればアドル教の神であるアドルは高度な生命工学技術を持つ知的生物のようにしか見えないしな。こんな超至近距離に存在するもう一つの地球型惑星ってのもなぁ。隣接していた二つの惑星を同時にテラフォーミングしたんじゃないかって気がするんだよな。で、こっちとあっちの両方に人間と亜人を移住させて、自分は神を名乗った。そんなシナリオがちらつく。


「空の向こうのオミクルに居るのは神か、死者か、それとも魔物か。それはまぁ、今は結論は出ない。でも、何らかの文明の痕跡がありそうだとわかったのは面白いな。いつかアクアウィルさん達の研究が大きく取り上げられて脚光を浴びる日がくるかもしれない」

「いつか、ですか」

「いつか、だろうな。少なくともここ十年やそこらの話じゃなく、もしかしたら数百年は未来の話かもしれない」

「数百年ですか」

「私達の子供か孫の世代」

「んンッ! 長命種っ!」


 そう言えばこの人達普通に寿命がうん百年とかだったわ。


「こ、この中だと私と旦那様とゲルダさんはその日を見るのは難しそうですねぇ」

「あー、私はもしかしたらその脚光を浴びる日ってのを見られるかもしれないのね。そう考えると凄いことだと思うけど、一体どういう風に脚光を浴びるの?」


 トズメが首を傾げる。あまりイメージが沸かないんだろうな。目に見えるけど決して手が届かない場所。そんな場所の地図があったところで一体何の役に立つというのか? そう思うのは当たり前だな。


「俺達が考案したエアボードでメリナード王国は狭くなったよな」

「狭く……? ああ、まぁそうね。足が早くなってオミット大荒野からメリネスブルグまで一日で来られるようになったのは、確かにメリナード王国が狭くなったと言えるかもね」

「うん。いずれは空を飛ぶ乗り物も俺は作りたいと思ってる。今はグランデに頼ってるけど、エアボードみたいな感じで人が乗って空を飛べる乗り物をな」

「そ、そうなったら私達は流石にお役御免ですねぇ」


 フラメがそう言いながらにへらと笑う。彼女は臆病な性質だし、本当は爆撃部隊の隊員や斥候として働くのは嫌なのかも知れないな。


「その延長で、いつかオミクルまでも乗っていくことができるような乗り物が作られるだろう。そうなった時、あちらで活動するための重要な情報としてこの地図が用いられるかもしれない。もしかしたら、そこまで行かなくとももっと早い段階――世界中でオミクルの観測が行われるようになった時にそうなるかもな」

「なるほど」

「へー……凄いですねぇ」


 俺の説明でトズメとフラメもわかってくれたようだ。よしよし。


「名前をつけるといい」

「名前ですか?」

「ん、そう。今、この地図を――つまりオミクルの地形を把握しているのはアクアウィル様だけ。発見者が名前をつけるのが妥当」

「それはいいな。こういうのは早い者勝ちなとこあるし。ササッと名前をつけてしれっと私が命名しましたと書いておいてしまえば後の歴史に名が残るかもしれんぞ」

「えぇ……そんな適当な」


 そう言いつつも、後の歴史に名が残るかもしれないという俺の言葉にアクアウィルさんのエルフ耳がピーンと立ったのを俺は見逃さなかった。口ではああ言いながらもかなり心躍っているな。間違いない。口に出して指摘するのは無粋だからやらないけど。


「と、とにかくこの地図を見ながら実際にオミクルを観測してみてください」


 そんな自分の反応を自覚したのか、アクアウィルさんは顔を赤くしたまま早々に席から立ち、天体望遠鏡が設置してあるバルコニーへと足を向ける。俺達はその後を追ってバルコニーへと向かうのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冒頭、前話からの続きであるならば産まれた日から4日は経ってるのではないかと思われます。
[気になる点] もう死ぬほど指摘されてると思うけど時空歪んでね? 出産後数日絞られてからアクア達に助けられてここに居るのに生まれた日の夜になってる 若干流し読みしたから私の勘違いだったらすまん
[気になる点] 皆、と言っても着いてきたのは → 皆、と言っても付いてきたのは(?)
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