第349話~旧交~
寝不足で筆が……ユルシテ_(:3」∠)_
メリネスブルグに戻ってきて一週間ほどが過ぎた。
エレンとアマーリエさんの出産予定日は順調に近づいてきており、話によると俺が作った開拓村の運営も好調な出だしであるらしい。まぁ、しっかりと畑と防壁を作ったので、当たり前ではあるが。
そんな報告を聞いたり、エレンとアマーリエさんを気遣ったり、シルフィを始めとして皆とイチャイチャしたり、獣人娘達の教育の様子を見届けたり、商人組合や冒険者ギルドに俺が提供した資金の運用について進捗を報告するようにという内容の書状を認めたりしていたある日、久々に見る顔が訪ねてきた。
「久しぶりなのである」
「本当にな。元気そうで何より」
訪ねてきたのはレオナール卿であった。相変わらずのライオン顔で老けたんだがなんなんだか全くわからんが、とりあえず負傷などもしている様子はないから元気なのであろう。
「そっちは元気がなさそうなのである。いつものことなのであるが」
「放っておいてくれ」
今の時間は昼前。まだ俺の身体は怠い時間帯である。巷では俺がシルフィを含めた美女をとっかえひっかえしていると言われているようだが、実態はその逆だ。とっかえひっかえされているのである。男冥利に尽きる状態ではあるが、普通に身体がつらい。しかも皆エレンとアマーリエさんの大きくなったお腹に触発されて積極的だし。
「それで、久々に冷やかしに来たのか? この時間から酒というのも無いだろうから、お茶くらいなら出してやるぞ」
「我輩は酒でも良いのであるが、まぁ茶にしておくのが無難なのであるな。コースケは弱っていることであるし」
「だからほっとけ」
筋肉痛の身体を無理矢理動かしてベッドから降り、テーブルに着いてティーセットを出す。
「で? 今日はどうしたね? わざわざ出張から戻ってきた俺に挨拶するためだけに来たわけじゃないだろ?」
「うむ。コースケ相手に取り繕っても仕方がないのであるな。実は、頼みがあって来たのである」
「頼みね。まぁ、聞くだけ聞こうじゃないか」
「武器が欲しいのである。できるだけ多く」
「穏やかじゃない話だな」
「コースケが知っているかどうかわからないので説明するのであるが、どうも聖王国内で内乱の兆しがあるようなのである」
「それは聞いているな」
俺がそう言うと、レオナール卿は満足そうに頷いた。
「流石、耳が早いのであるな。それで、少数精鋭の部隊を秘密裏に聖王国へと潜り込ませて内乱を煽ろうと思うのであるな」
「それで武器か。聖王国内の亜人奴隷に流して反乱でも起こさせるのか?」
「それも一つの手なのであるが、それでは元メリナード王国民に大きな被害が出かねないのであるな。なので、内乱を起こそうとしている勢力に肩入れをするつもりなのであるな」
「なるほど? でもそれって担がれると俺の作った武器が向こうに使われかねないよな」
俺の作る武器の品質はこの世界の職人曰く、中の上から上の下くらいの品質はあるらしい。そんな高品質な武器を持った敵軍が現れるのは流石に避けたい。
「それは当然なのである。なので、まずは情勢の把握に努めるつもりなのであるな。武器の供与も今すぐというわけでなく、最終的にという話なのである。今のうちに話を通しておこうということなのである」
つまり事前の根回しということか。こういうところ、流石は元貴族といった感じだよな。ただの食い道楽で戦闘狂なおっさんではないというわけだ。
「シルフィとメルティの許可が出れば俺は構わんぞ。クロスボウや銃器の供与は当然しないよな?」
「当たり前なのであるな。高品質の剣と盾、槍辺りが良いであろう。大量の矢なども欲しいのである」
「OK、なら準備をしておく。各一万もあれば十分か?」
「矢の方は十万本ほど用意しておいてほしいのであるな」
「了解」
すぐの話でないならコツコツと作っておけば問題はないだろう。もし使わなくなったとしても、この世界なら剣、盾、槍、矢の需要なんていくらでもある。無駄にはなるまい。
「で、俺の方は相変わらずだけどそっちはどうなのよ。何人かいただろ、お慕いしていた人」
「我輩の愛は亡き妻に捧げられているのであるな」
「というわけにも行かないのがこの世界だよなぁ? 男の責任果たさないとだよなぁ?」
そうじゃなかったら俺だってこんな状態にはなっていない。いないよ。多分。きっと。めいびー。
いや、そんなことないかも知れないけど! 結局同じことになってそうな気がするけど!
「……黙秘するのである」
「なるほど、黙秘しなきゃならないような状況なんだな」
「……」
レオナール卿はそっと俺から顔を逸した。レオナール卿は力も地位もある人物だが、メリナード王国軍の編成上の問題で傍にどうしても女性を置く機会が多くなる。何故なら、現メリナード王国軍の前身であった解放軍自体が止むに止まれぬ事情で女性が多かったためだ。
で、女性が側にいて、向こうがその気でガン押ししてくるとなかなか逃げるのが難しい。何せ周りを巻き込んで外堀を埋め、包囲網を敷いてくるのだ。籠城戦で勝つのも、包囲網を突破するのも至難の業である。
「諦めてこっちにこい。慣れてしまえば天国だぞ」
「住めば都という言葉もあるのであるが、それは単に過酷な環境に慣れて麻痺しているだけなのであるな。というか、我輩のような『濃い』獣人は定期的な発情期以外での子作りはかなり疲れるのである……」
「できないわけじゃないなら気合で頑張れ」
「最近強制的に発情させようとしてくるので油断ならないのである……」
ああ、なるほど。いわゆる『濃い』獣人は発情しないと子作りが難しいけど、強制的に発情状態に持っていく術が何かあるわけね。鼻が良いみたいだし、フェロモン系の何かかな。まぁ、周期が合わなかったりすると大変だろうし、そういうのはあるんだろうなぁ。
「精力剤持っていくか? 良いの入ってますよ旦那」
「無理すると死にそうなので遠慮しておくのである。我輩、そんなに若くないのであるな」
「大丈夫、実際安全。俺死んでないし」
「コースケの生命力が油虫並みだから死なずに済んでいるという話を聞いたのであるが」
「誰からだよ。なんか否定できない気がするけどこれは大丈夫だから。なんならライフポーションもつけてやるから」
「そもそも薬に頼らないとならない生活を送りたくないという話なのである」
その後もレオナール卿は俺から薬を受け取るのを拒否しようとしたが、結局嫌がるレオナール卿に無理矢理押し付けることに成功した。
いや、押し付けとかないと、もしレオナール卿が陥落した時に急死とかするかもしれないしさ。基本的にこの世界の女性はバイタリティがヤバいし。タフとも言う。
レオナール卿にお薬セットを押し付けた後は北方戦役の話を聞かせたり、逆にメリナード王国東部で起こったこととかを聞いて暫くレオナール卿と旧交を温めることになった。
最終的に昼間から酒を飲むことになったのはまぁ、たまに羽目を外したい日もあるということでお目溢しいただきたい。