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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
異世界の荒野でサバイバル!
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第034話~オミット大荒野へ~

一章が終わったからって俺は止まんねぇからよ……_(:3」∠)_

 はい、どうも。異世界サバイバーのコースケです。私は今、オミット大荒野に来ています。何をしてるのかって? そりゃあれですよ。


「コースケ、この辺りで道標を立てるのである」

「あいよ」


 レオナール卿の発言に俺は肯定の意を返し、すぐさまジャンピング足元置きテクでレンガブロックを三段重ねにする。そして更にその上にたいまつを置いた。

 これで日中は勿論夜間でも視認性が上がるというわけだ。木材ブロックではなくレンガブロックにしている理由はギズマに攻撃されてもそう簡単には破壊されないようにしようという目論見がある。木材ブロックだと突進で破壊されそうだったからね。

 いやまぁ、究極的な話、一番上のブロックだけ残してした二つ破壊してもいいんだけどさ。後々のことを考えるとどう見ても異常な物体をポンポン置いていくのもね? 結局ギズマにブロックを破壊されたら同じことにはなるんだけども。

 たいまつを設置し終えた俺は3mの高さから飛び降り、地面に落下する前に木材ブロックを足元に置く。これで落差は2m。これくらいの高さでアシクビヲクジキマシターとは流石にならない。3mはちょっと危ないけど。


「何度見ても奇妙な……」

「あいつのやることにいちいち驚いても仕方ないと思うぞ」


 ザミル女史の言葉にジャギラが肩を竦めながら答える。お前さんは逆に適応しすぎと違うか?


「これで道標は六つ目か。もう少し行けそうか?」

「そうですな。兵でなくとももう少し歩けると思いますぞ」

「ではもう少し進むぞ」


 レオナール卿とシルフィがやり取りをして本日の荒野行が更に延長されることが決まった。まぁあと二つくらいは設置することになるかね。


「しかし、コースケ殿の発想は柔軟というかなんというか……」

「大荒野に道を作って、更に安全な砦を作っていこうってのは確かになぁ」


 ザミル女史とジャギラ感心したような、あるいは呆れたような様子でそんなことを言っている。

 そう、俺達が今オミット大荒野に来ている理由とは正にそれだ。オミット大荒野に安全な道と、防衛に適した砦を作る。これが俺の提案したメリナード王国奪還に向けた第一の手である。

 事の発端は二日前の朝に遡る。


 ☆★☆


「私はメリナード王国の奪還に向けて動きたいと思っている」


 いつもの会議場所に人を集め、シルフィはそう宣言した。シルフィの宣言を聞いた各人の反応は様々だ。

 猛牛のような角を生やした巨漢で、メリナード王国の近衛騎士であった牛獣人のダナンは腕を組んで難しい表情をしている。

 巻き角を頭から生やした羊獣人の女性、元はメリナード王国で内政官を務めていたというメルティは考え込むかのように頬に手を当てて目線を上に向けた。

 小柄な身体つきの単眼族の少女であるアイラはいつも通り大きな瞳を少し眠たげに半開きにしている。真理の探究者であり、凄腕の錬金術師であり、また高度な魔法を使いこなす魔道士でもある彼女は、その才能を認められてメリナード王国では宮廷魔道士として働いていたらしい。

 愉快そうな笑みを浮かべている狐顔の男の名はキュービ。特に官職にはついていなかったというが、身のこなしは王国軍の斥候並みかそれ以上に軽く、細身なのに腕っぷしも強いらしい。元々はスラムの住人だったという話だが、さて。只者じゃないのは確かだな。

 そして、厳しい獅子の顔に満足そうな笑みを浮かべているのは獅子獣人のレオナール卿だ。彼はメリナード王国の元貴族で、メリナード王国にこの人ありと言われていた武人であったらしい。双牙のレオナールとして聖王国の兵から恐れられていたという。

 表情の読めない爬虫類顔でシルフィの顔をじっと見つめているのはリザードウーマンのザミル女史だ。メリナード王国の槍術指南役を務めていた女傑で、その武威はレオナール卿にも匹敵するという。

 最後に、一番獰猛な表情を見せているのは元高位冒険者であったという赤鬼族のシュメルだ。彼女はダナンをも超える巨躯の女性で、赤い肌を持ち、髪の毛の生え際、額のあたりに二本の角を持つ女性である。身長は恐らく2mをゆうに超え、2,5mくらいはあるのではないだろうか。俺と並んで立つと、身長175cmくらいあるはずの俺が子供に見えるくらいの体格差である。

 以上七人、俺とシルフィを入れて九人というのがこの場にいる面子の全てである。最初に口を開いたのはキュービだった。


「いいねぇ、姫様もやっと調子が戻ってきたみたいだな」

「アタシは賛成だね。聖王国の豚どもに舐められっぱなしってのは我慢ならないしねェ」


 キュービとシュメルは大いに賛成、という立場のようだ。


「吾輩も賛成である。我らの祖国を奴らに土足で踏み躙られたままにしておくわけにはいかぬのである」

「私は姫殿下のお望みのままに槍を振るう所存」


 レオナール卿とザミル女史もシルフィの方針に賛成を意を示した。


「私も心情としては姫殿下の方針に賛成したいと思いますが、現実としては問題が山積しております。そこをどう解決していくか、それが問題です」


 王国民の実質的なリーダーであるダナンは賛成の意を表明しながらも慎重な立場を取っている。確かに、そうだよな。この世界に来て二週間ぐらいしか経ってない俺でも簡単に三つくらいは思い浮かぶ問題がある。


「戦をするだけの補給物資を準備するのには時間がかかります。それに、いくらエルフの助けを借りられると言っても、限度というものがあるかと。今でも我々はほぼ一方的にエルフの里に負担を強いている状態ですし」


 メルティはその端正な顔の眉間に皺を寄せて首を横に振った。彼女は約三百人にものぼるメリナード王国民達に日々の糧を分配している立場だ。今でも割とカツカツだというのに、更に戦に備えた備蓄を行うなど無理がある、と言いたいのだろう。ワイトもそう思います。


「コースケの力で良い感じにやればいい」


 アイラの意見はアレだ、なんというか俺とシルフィの真意を正確に見抜いた上での雑な発言なんだろうな。


「まぁ、そういうことだな。身も蓋もないが。問題を解決できるかどうかに関してはコースケが鍵を握っている。コースケには頼りきりで申し訳ないが、力を貸して欲しい」

「出来る限りはな」


 俺にだってできないことくらいある。多分。予防線を張っておくのは大事だ。


「では、問題点を一つずつ挙げていくとしよう。まず問題となるのはオミット大荒野だな」


 シルフィの言葉にこの場に集っている全員が頷いた。


「確か徒歩で十日くらいかかるんだっけか、抜けるのに。まぁ日が出てから歩き始めて、日が落ちる前に余裕を持って到着できる位置に拠点――砦を建てるのが良いだろうな」


 サバイバル系のゲームで遠征の際の危険を減らす方法はいくつかあるが、一番確実で安全なのは拠点を作ってしまうことだ。安全な建物と、夜を過ごすために必要な家具。非常時に備えた備蓄食料や医薬品、予備の武器などもあればなお良い。


「簡単に言うがな、と言いたいところだが……」

「コースケさんは実際にそれを出来てしまいますものね」


 慎重な意見を述べたダナンが苦笑し、メルティが微笑む。あ、メルティのその顔は怖い。


「どうせなら道も作ってしまいましょう。荷車を引けるだけの道があればコースケさんに頼らずともある程度エルフの里から物資を運べますし。道幅は6ブロックくらいで」

「それマジで言ってんの?」


 道幅6ブロックの街道を徒歩十日分引くとか嘘だろおい。資材と時間がいくらあっても足りねぇよ。


「道を作るのは後回しだ。道は侵攻ルートにもなる。もし作るとすれば、それはメリナード王国を奪還した後の話だろう」


 シルフィがメルティの提案を却下してくれた。流石はご主人様! あれ? でも後回しってことはいつか作るってことかな?


 考えないようにしよう、うん。


「日中に移動し、夜は頑丈な砦で過ごす。確かにそれならばオミット大荒野を無事に抜けることも可能であろうな」

「だが、ギズマは何も夜にだけ襲ってくるわけじゃないぜェ? 道中の安全確保も課題だ」

「そこは移動する際にある程度の戦力を随伴させるしかあるまい。幸い、コースケ殿が作ってくれたクロスボウがある。あれの扱いは容易だし、先日のギズマの襲撃の際に実際にギズマに向かって撃った者も多い。なんとかなるだろう」


 武闘派の三人、レオナール卿とシュメル、ザミル女史が意見を交わし合う。うん、まぁ防御設備が全く無い状態で奇襲されたらヤバいと思うけどね。


「日中ならハーピィの斥候も使える。なんとかなる」


 俺の懸念を先回りしたのか、アイラがそうつぶやいた。なるほど、ハーピィの斥候ね。ハーピィの斥候は非常に視力がよく、オミット大荒野のような遮蔽物の少ない場所に置いては特にその威力を発揮する。ただし、彼女達はあまり夜目が利かないらしいので、夜戦に弱いのだとか。


「そうだな、ハーピィに上からギズマを見つけてもらいさえすればクロスボウで穴だらけにしてやれるぜ」


 アイラの言葉にキュービが頷く。移動するメリナード王国民がクロスボウで武装さえしていれば、確かにギズマの一匹や二匹くらいは脅威でもなんでもないだろう。近づいてくる前に穴だらけのスイスチーズになるのは確実である。


「前途多難ではあるが、まずは第一歩だな。今後も粘土は多く使うことになるだろう。可能な限り収集に当たってもらうということで頼む」

「わかりました。食料の備蓄も可能な限り進めます」

「そうだな。食料の供給量を上げてもらえないか私からも長老衆に働きかけてみる」


 ☆★☆


 こういう流れでオミット大荒野に拠点を築くということになったわけだ。先遣築城隊のメンバーは俺、シルフィ、レオナール卿、ザミル女史、ネコ科獣人の斥候ジャギラ、同じく斥候のハーピィであるピルナの六人だ。ピルナは先行して偵察を行なっている。


「それにしてもコースケ、このぼるとあくしょんらいふるってのはすげぇな!」

「あんまりバカスカ撃つなよ。弾の製造が安定してないんだから。あと薬莢は絶対に拾ってくれ」

「わかってるよ」


 ニコニコしながらジャギラが手に持っているのは歩兵小銃――ボルトアクションライフルである。今回の探索行に備えて俺が三丁作り上げたうちの一丁だ。後の二丁のうちの一丁は俺が装備し、もう一丁は予備としてインベントリに入れてある。

 口径は7.62mm、固定弾倉型で装弾数は五発。全長は1100mm、重さ3.9kg、ライフリングは四条の右回り、銃口初速は音速の二倍強である秒速760m、有効射程は500mだ。

 機構は堅牢で信頼性の高いボルトアクション式で、デザインは……正直に言うと俺はボルトアクションライフルの見た目で見分けが付くほどのガンマニアじゃない。ガンマニアじゃないんだが、これは物凄く有名なやつだ。大戦中にちょび髭さんのお国で使われてたやつだと思う。

 正直、現段階でこれを量産するのは難しい。なんせ、一丁作るのに八時間かかる。作業台を増やして複数同時生産すれば無理ではないが、厳しい。素材はたいしたことないんだけどな。

 これに関しては作業台を何かしらの方法でアップグレードしないことにはどうにもならないと思う。数でゴリ押すのも一つの手ではあるけど。

 今の所、作業台のアップグレード方法は判然としていないんだよな。何らかの動力が必要じゃないかとは思うんだが……水車か風車と組み合わせるか、蒸気機関でも作り上げるか……アイラに魔法機関的なものが作れないか聞いてみようかな。

 弾丸に関しては、弾丸と薬莢の材料となる鉛と銅、亜鉛はそこそこの数が手に入った。ただ、これは精々二丁や三丁を運用する上での話であり、二百丁三百丁と運用するとなれば数が全然足りない。

 対して、火薬は思ったよりも多くの量が作ることができた。おトイレの土を採取するのは非常に苦痛を伴う作業ではあるが、人々には感謝されるし、俺は火薬を大量にゲットできる。正にWin-Winな関係と言えよう。


 ところで爆発って浪漫だよな。


「その武器は非常にうるさくて吾輩は好きになれないのである」

「私も好きになれないな」


 武人肌のレオナール卿とザミル女史は今ひとつボルトアクションライフルが気に入らないようである。本能的に、この武器が武人や騎士という存在を駆逐するものであると感じているのかも知れない。これが数十丁、数百丁と揃えば個人の武勇なんてものは時代遅れの骨董品になってしまうからな。


「威力には目を見張るものがあるがな」


 シルフィも発砲音がうるさいボルトアクションライフルは苦手らしい。シルフィはお耳が良いからな。発砲音は耳に堪えるのだろう。

 ちなみに、威力に関してはギズマを二発で絶命させると言えば伝わるだろうか? 俺とジャギラが真正面から頭部の辺りに一発ずつぶち込んだけでギズマは息絶えてしまった。もう一匹後続が居たのだが、そちらも同様である。しかも、まだまだ遠い、余裕で100m以上離れたギズマを倒してしまったのである。

 意気揚々と武器を構えたレオナール卿とザミル女史、あとペイルムーンをスラリと抜き放っていたシルフィからすれば肩透かしも良いところだっただろう。代わりに、クロスボウ狂だったジャギラはボルトアクションライフル狂になってしまったが。

 そうして歩くこと更に二時間ほど。途中でもう一本道標を立て、そこから更に歩いて辿り着いたのは小高い丘のようになっている場所だった。


「ふむ、時間も良いところだし立地も申し分無いのではないか?」

「そうですな。丘になっておりますし、ここならば砦の立地として申し分ありますまい」


 確かに、良い立地である。障害物の少ない荒野であるだけに、丘の上からの見晴らしはとても良い。防御に適している立地と言えるだろう。


「では、ここで休憩だ。休憩の後、コースケは砦の建築を始めてくれ。他の面々は周囲の探索と警戒を行なう」

「アイアイマム」


 シルフィに返事をして俺はテーブルと椅子を取り出し、食事の準備を始める。まずは腹ごしらえだ。その横でジャギラが笛を鳴らし、甲高い音を遠くに響かせた。偵察に出ているピルナを呼び戻しているのである。


 さ、まずは腹ごしらえだな。その後は楽しい楽しい拠点づくりだ。

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生産力と人口にアドバンテージがある相手に銃で 戦うのってかなり悪手だよな、技術ツリー中抜きして いきなりレーザーやレールガンならともかく 火薬武器は分解すれば原理が手に入る 槍振り回してた野蛮人舐めて…
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