第342話~帰り道~
投稿先を間違えた(´゜ω゜`)(致命的ミス
助けた女性達が髪の毛や尻尾を整えるための櫛やブラシをなどの小物を作ったり、鬼娘達にボーナスとして金一封を支給したり、助けた女性達がお昼ごはんを作ってくれると言うので材料を渡してお昼ごはんを作ってもらったり、お腹が空いたとおやつをねだってくるグランデにドーナツを作ってあげたりしているうちに夜になった。
「で、どう?」
「いくら私の目が良いって言っても心の中までは見通せないわよ。でも、身体の調子はもう大丈夫そうだし、移動には十分耐えられると思うわ」
「そいつは重畳」
と、トズメと真面目な話をしているが、俺達の現在地はお風呂である。絶賛湯船に浸かり中である。ちなみにトズメの声は俺の頭の上からしている。シュメルといいベラといい君といい、君達鬼人族は風呂に入る時に俺を抱っこしながら入るしきたりでもあるのかね?
「まァ、最後にケチがついたけど仕事自体はこれで終わりだろォ? 聖女サン達の赤ん坊が生まれるのもそろそろだし、暫くお休みかねェ?」
「どうかな。まずは今回作った開拓村の様子を暫く見て、問題点やらなにやらを洗い出してから再度計画を調整することになるかもな。そうなると暫くはフリーになるか」
「旦那は働きすぎっすよ。もっとゆるく生きても良いと思うっす」
「たしかに生き急いでるような感じはあるわね。お相手も沢山いることだし、冬までにバンバン子作りしたら良いわ」
「あたしらも歓迎するよォ?」
鬼三人が揃ってニヤニヤする。
「やめてください死んでしまいます。まぁ。メリネスブルグでやることも色々あるしなぁ」
「ゆっくりしろって言ったのに早速仕事のことを口にしてるっす」
「これは陛下に言って無理矢理にでも休ませるかねェ?」
「毎日足腰立たないようにすれば良いかしら?」
「洒落にならないからヤメロ」
俺の身体は一つしか無いんですよ。もっと労って。
「とりあえず明日は予定通りに移動するってことで良いのね?」
「そうだな。いつまでここでのんびりしてるわけにもいかんし」
身重のエレンとアマーリエさんが心配だからな。さっさと帰りたい。とは言っても、明日コモランに戻ったら数日はベリル子爵の歓待に応える必要はあるだろうな。面倒この上ないが、これでベリル子爵の歓待を一切受けずにさっさとメリネスブルグに帰るとベリル子爵の顔を潰すことになるからなぁ。仮に俺がベリル子爵の歓待も受けずに立ち去ってしまうと、ベリル子爵は他の貴族から『あいつは王配殿下をオモテナシすることもできねぇダセー奴だ』と陰口を叩かれることになる。
これで実際にベリル子爵の対応が悪くて俺が歓待も受けずに立ち去ったならまぁ自業自得なのだろうが、俺の都合で立ち去ってベリル子爵に何の瑕疵も無かった場合は単に何の罪もないベリル子爵の名誉が傷つけられることになるわけで、当然俺はベリル子爵に恨まれることになる。
いやぁ、貴族って面倒な生き物だよなぁ本当に。
「明日はベリル子爵のところに行かないとな。あぁ、めんどくせぇ」
どうにも貴族関連のあれこれとは相性が悪いんだよな。まぁ、立場上諦めて慣れていくしか無いか。多少失敗しても王配殿下の権力パワーでなんとかしてやろう。あと最終的には暴力とか暴力とか暴力とか。
こんな発想が出てくる辺り、俺も順調にこの世界に染まってきたんだな。
☆★☆
コモラン滞在は何事もなく終わった。いや、何事もなかったわけではないが、とにかく大きな波乱は何もなかった。
ザミル女史経由でベリル子爵には既に開拓団壊滅の報が届いており、遺体の引き渡しや供養に関しては粛々と事が進んだ。ベリル子爵が先だって葬儀の用意をしていたのだ。
そして葬儀が終わると、ベリル子爵自らが被害者の女性達に声をかけた。彼女達は元々ベリル子爵の領民達だ。五十名以上にも及ぶ敗残兵崩れの野盗などという存在を予測するのは無理だったのだろうが、結果としてベリル子爵が用意した護衛では彼女達を守ることは出来ず、彼女達の仲間は殺され、彼女達自身も酷い目に遭った。
そのことに対してベリル子爵は謝罪し、彼女達に銀貨の詰まった袋を渡した。金で解決できる問題ではないだろうが、今後彼女達が生きていく上では金で解決できる問題も多い。これが私にできる最良の贖いであろうと。
確かに金で解決できる問題ではないのだろうが、彼の言うことも理解できる。彼女達に関しては俺が保護すると半ば一方的に通達してもいるので、確かにこれこそが彼が今できる最良の贖いなのだろう。
無論、彼女達に謝罪する前にベリル子爵は俺にも深く謝罪した。開拓のために王配である俺が出向いたにも拘らず、開拓団が賊どもにいいようにされてしまったという失態の上、その賊の処断にも俺の手を煩わせた。この地の発展と平和を守る領主としては大失態である。
とは言え、賊の処断に関しては俺が現場で判断して勝手にやったことだ。開拓団の壊滅を目の当たりにした時点でベリル子爵に迅速に通報し、その後の処理をベリル子爵自身にやらせるというのが自然な対応で、俺がベリル子爵を差し置いて勝手に賊を殲滅するほうがどちらかと言えば越権行為というか、横紙破りというか、超法規的措置的なアレである。
その点に関しては俺がベリル子爵の面子も考えずに勝手にやったことのなので、謝罪には及ばないと伝えてはおいた。
そんな感じの堅苦しいイベントを終え、帰路である。
帰りはいつものエアボードではなく、兵員輸送用大型エアボードを突貫工事で改造して居住性というか、乗り心地を改良した改造型大型エアボードでの帰還だ。
これなら一台で全員乗れるので、二台で移動するよりも上空警戒を行うハーピィさん達の負担も減る。そして、屋根というかルーフ? が広いので、彼女達の発着場としても使えるようにした。これでハーピィさん達も自由に離着陸して休めるわけだ。
「これは良いですわね」
「ハーピィさんの離着陸と爆装ができるような大型エアボードを開発するのもアリだな」
言わば地上空母的な存在である。
爆装を施したハーピィさんはどうしても航続距離が短くなるし、ペイロードにも限界がある。ハーピィ用の航空爆弾は重量がそれなりにあるし、嵩張るから防衛戦闘ならともかく、前線ではどうしても使いづらい。だが、大量の航空爆弾を運べる移動可能な拠点があれば? ハーピィさんは前線でも猛威を奮うことが出来るようになるだろう。
「これはこれで良いっすねー。座席の位置が高くて視点が広いのが新鮮っす」
運転を担当するベラは真面目な話をしている俺とイーグレットのことなどどこ吹く風と言った様子で上機嫌にエアボードを運転している。今回、エアボードがかなり大きくなったので、視界の確保のために運転席の位置を高くしたのだ。それが思いの外気に入ったようで、ベラは終始上機嫌である。
「Zzz……」
グランデはクッションに埋もれて寝ている。そんなグランデの綺麗な金髪の髪の毛を兎獣人のメメやイタチ獣人のフェイが三編みにして遊んでいるが、本人はまったく起きる気配もない。グランデは一度寝るとなかなか起きないからなぁ。
犬獣人の双子であるルナとラナは二人でその様子を微笑ましげに眺めているし、馬獣人のシェンはシュメルと何か話をしている。鼠獣人のミトはそんなシェンにくっついている。彼女はいつもシェンかビャクにくっついているんだよな。
ちなみに、狐獣人のビャク山羊獣人のオリビアは俺とイーグレットのすぐ側――というか俺のすぐ側で俺とイーグレットの会話に耳を傾けながら何かチクチクと裁縫仕事をしている。どうやら俺が彼女達に渡した服を獣人仕様に直しているらしい。トズメもそれを手伝っている。トズメはああ見えて手先が器用で、裁縫とかちょっとした工作とかをちょいちょいやってるんだよな。
「安全運転でな。焦って事故なんか起こしたらかえって到着が遅くなる」
「了解っす!」
何にせよ、これでひとまず出張は終わりだ。暫くはメリネスブルでのんびりと過ごすかね。