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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
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第339話~後始末~

今日はぽんぺだったけど余裕を持って投稿できた。


こ、これはただの炭酸飲料じゃ……( ‘ᾥ’ )(緑色の爪痕が目立つ缶を隠しながら

「表側、掃討完了。状況は?」

『シュメルさん達は既に脱出しましたわ。追っ手は無しです』

「了解、シュメル達は安全な場所に待機するよう伝えてくれ」

『承知致しました』


 ゴーレム通信機での通信を終え、インベントリに仕舞う。辺りに散乱するかつて人間だったもの達。ゴーレムウォリアーが装備する鋼鉄製の棍棒に、盾によって打ち据えられれば人体など脆いものだ。元の形を保っていることなどほぼ不可能である。

 奇跡的に人間としての形を保っていたとしても、ほぼ即死だ。巨大な質量から繰り出される攻撃は、一撃で人間の生存に不可欠な臓器を完膚なきまでに破壊する。ぶっちゃけそういう死体のほうがばらばらになったり、ひしゃげてたりする死体よりもグロい。


「よくやった」


 そう褒めてもゴーレムが返事などするはずもない。そうは分かっていてもなんとなく褒めたくなるものだ。返事もせずに立ち尽くすゴーレムウォリアーをインベントリに収納し直したところでグランデが戻ってきた。


「終わったぞ。つまらん奴らじゃったな」

「そうだな。内部を調査するぞ。残党がひそんでいるかもしれんから、護衛を頼む」

「うむ、任せよ」


 装備を.45口径のサブマシンガンに変えて野営地へと突入する。前衛はグランデ、俺は後衛というスタイルだ。見た目少女にしか見えないグランデを前に出すのは絵面がよろしくないが、こんなに小さくてもグランデはれっきとしたドラゴンだ。着ているものも薄着に見えるが、これでいてちゃんとドラゴンとしての生命力と防御力を兼ね備えている。ぶっちゃけ見た目以上に頑丈だ。具体的にはゴーレムウォリアーの攻撃を真正面から受け止められるくらいに頑丈だ。

 ゴーレムウォリアーは人間では歯が立たないくらいに強いが、グランデはそれ以上なのである。


「居るか?」

「何人か居るの。まぁ妾から逃れるのは無理じゃな」

「なら二人以上いるところを優先して――」

「まだるっこしい。行ってくるので待っておれ」


 そう言うと、グランデは一人で野営地の中へと突入していった。丸太作りの家の壁を一瞬で破壊し、家に押し入っていく様はまるでホラーか、そうでなければコメディのノリである。

 いや、なんかヤバいと思って隠れていたら壁を破壊して金髪幼女(竜)がダイナミックこんにちは! 死ね! してくるのは間違いなくホラーだな。

 破壊音と断末魔を聞きながら待つこと数分。頬に数滴の返り血をつけてきたグランデをハンカチで綺麗にしてやってから野営地の中を家探しする。


「まぁ見るべきものはさして無いな」

「じゃろうな。このような場所に貴重なものや重要なものがあるとは思えん」

「それよりも俺は助け出した人達をどうするかのほうが頭が痛いわ」


 恐らくは開拓団の生き残りか、それよりも前に賊どもに拐われた人なのだろう。見た限り、賊どもは男ばかりだったし、人間ばかりでもあった。まぁ捕らえられていた人々の顔を見たわけではないが、恐らく捕らえられていたのは女性ばかりなのだろうな。ろくでもない。

 まぁ、何にせよ顔を合わせてみないとなんとも言えんな。


「別にお主が責任を取らねばならぬものでもあるまいて」

「それはそうだが、これで後は知らん好きにしろと放り出すのも無いだろう」


 それなら最初から助けなければ良い話だ。それに、俺はこの国の女王の伴侶、王配である。民が賊に良いようにされて絶望の淵に立っているのを見捨てるのは如何なものか。たった数人を救い、幸せに過ごさせることができない者にそれ以上の数の国民の面倒を見ることなど不可能だろう。


「それもそうじゃな。まぁほどほどに頑張るが良い」

「ほどほどにな。仕事も立て込んでるし」


 本当なら今頃開拓村を作っていたはずなんだがな。世の中うまく行かないものだ。移住者がほぼ全員族に殺されたから、今日作る予定だった開拓村はお流れだな。そうすると、余計に今回助けた人達をどうするかって話になるが。


「最悪連れ帰るか。ハーピィタワーで保母さんをしてもらってもいいし」

「そうして結局お手つきが増えるんじゃな?」

「そういう意図は一切ないし、これ以上増やす気はないから」


 今でさえお相手が多すぎて大変なのに、これ以上増やすとか俺の身体が保たんわ。というか、囚えられていた人達は多分相当酷い扱いを受けていたのだろうし、そういうのはきっと御免だろう。本当は俺も接触しないほうが良いのかも知れない。今日のところはそうも行かないだろうけど。


「で、この野営地はどうする?」

「更地にする」


 俺はそう言いながらミスリル製の伐採斧を取り出した。木材はいくらあってもいいからな。


 ☆★☆


 主に木材でできていた野営地を綺麗まっさら解体し、大量の木材を確保。ついでに奴らが開拓団から奪ったのであろう物資や、奴らの備蓄、そして装備なども諸々回収した。奴らの死体? まとめてグランデに焼いてもらったよ。あいつらの正体が何にせよ、それで聖王国になにか要求できるとも思えないしな。そんな奴らは知らん、と言われたらそこまでだろうし。


「でェ……最初に作ったのがこれかい?」

「まずは身ぎれいにして落ち着きたいだろう?」


 野営地を更地にして少し移動した場所に高床式の拠点を設営した。そしてまず作ったのは大型のお風呂である。余裕で二十人くらい同時に入れる大きさだ。なんと屋外に置いてある大型タンクには魔晶石を使った湯沸かしの魔道具まで設置されており、ふんだんにお湯を使うことができる贅沢仕様だ。


「あの……ありがとうございます」


 シュメルの傍に寄り添うように――或いはシュメルの陰に隠れるように――佇んでいた獣人の女性がそう言って頭を下げる。猫系……いや、犬か狼系の獣人か? フードを目深に被ったままなので判別がつかないが、フードの頭の部分が耳の形に少し盛り上がっているから獣系の獣人であろうということはわかる。獣耳と尻尾だけついた人間に近いタイプの獣人みたいだな。


「今は余計なことは何も考えずにまずは身体を清めて心を落ち着けてくれ。メシも用意しておくから、風呂から上がったらメシをたらふく食って身体を休めるといい。ここは安全だから。シュメル達は彼女達の面倒を見てやってくれ」

「はいよォ」

「了解っす」

「わかったわ」

「わかりましたわ」


 鬼娘達とハーピィさん達が囚えられていた女性達をお風呂に連れて行くのを見送ってから俺は自分用に用意した部屋へと移動した。その後ろをグランデがついてくる。


「グランデも一緒に風呂に入ってきたらどうだ?」

「後でお主と一緒に入る。今日は働いたんじゃから、それくらいしてくれてもよかろ?」

「OKOK、皆が上がったら二人でお風呂でゆっくりしような」

「うむ」


 グランデが満足気に頷き、尻尾カバーをつけたごっつい尻尾でべしべしと床を叩く。スライム素材製の尻尾カバーがなかったらまた罪のない床さんが負傷していたところだったな。

 で、部屋に戻ったらグランデ用にクッションの山を用意し、俺は机の上に据え置き型のゴーレム通信機を出してお仕事である。この拠点には信号増幅用の装置とアンテナを設置してあるので、そちらにゴーレム通信機を接続する。


「こちらコースケ。メリナード王国西方軍司令部、応答せよ」


 そう呼びかけると、少しして応答があった。


『こちらメリナード王国西方軍司令部。お疲れさまです、閣下。ただいまザミル司令官がこちらへと向かっております』

「ああ、着いたら教えてくれ。待機する」

 俺がそう言って一分も経たないうちにザミル女史が通信を送ってきた。

『お待たせ致しました、閣下。何かありましたか?』

「ああ、実は――」


 俺は今日あったことをザミル女史に話した。今日合流する予定だった開拓団が賊の襲撃で全滅しており、俺達の手で賊を追跡して全滅させたこと。合計八名の囚われていた被害者を助け出したこと、賊は全て処分したこと、野営地は解体し、更地にしたことなどだ。


「そういうわけで、こちらにいた賊は討滅した。もしこちら方面で被害が出ている報告があったなら、恐らく解決したと思う。騎兵が多かったから、結構活動範囲は広かったかもしれん」

『承知致しました、後でそちら方面での被害報告がなかったか照合しておきます』

「そうしてくれ。囚えられていた被害者達の体調などを鑑みて、現在地で今日と明日丸一日休養を取る。可能であればベリル子爵に連絡を入れておいてくれ」


 ベリル子爵というのは今俺達がいる辺り一帯を支配している貴族である。冴えない感じの異様に腰が低い中年貴族だ。権威に弱いのか、それとも俺の武勲の話を聞いて震え上がっているのか、或いはその両方か。俺が強く言えば唯々諾々と従いそうな感じではあったが、俺が去った後に彼女達への対応がどうなるかはわからない。人となりもわからんし、彼女たちを任せるかどうかはちょっと微妙なところだな。


『ベリル子爵領にも監査官が滞在していたはずです。賊の件も含めてこちらから連絡しておきます』

「頼む。八名の被害者についてはとりあえず俺が保護しておく。今後の身の振り方をどうするかは本人達と面談してみる」

『わかりました。私にできることがあれば何なりと』

「ああ、その時は頼む。通信終了」

『はい、お気をつけて。通信終了』


 通信を終えてぐっと背筋を伸ばす。

 今日は血なまぐさいことをやらかして精神的に疲れた。本当はシルフィの声でも聞きたいところだが、流石にアンテナと増幅器を使ってもここからメリネスブルグまでは通信用の魔力波は届かない。何箇所か通信をリレーしていけば情報を伝えることは可能だが、シルフィの声を直接聞くのは不可能だ。


「終わったか? ならこっちにきて妾を甘やかすのじゃ」

「はいはい」


 クッションの山に埋もれてこっちに手を伸ばすグランデに誘われて俺もクッションの山へと近づく。まぁ、彼女達が風呂から上がるまでグランデとだらだらしてますかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ウソをつけ…という前に もういい…!休めっ…!!
[良い点] >金髪幼女(竜)がダイナミックこんにちは! 死ね! してくるのは間違いなくホラーだな。 人攫い相手に遠慮は無用。慈悲は無い。 パワーとタフネス据え置きで小型化したドラゴンが問答無用で殺しに…
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