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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
336/435

第335話~開拓村建設とモノの話~

更新再開!_(:3」∠)_

 新しく開拓村を拓く。

 言葉にすると簡単だが、実際にやるとなると考慮すべき点は非常に多い。例えば今後順調に発展していった場合にどのように村の規模を拡張していくのかを考えて建物や農地を配置しなければならないし、そうなると家屋や畑、水路をどのように敷設するのかという話になる。

 普通、一度建てた建物は動かすことは出来ないし、それは農地や水路だってまた然りだ。それだけでなく、農地という話になれば土地の肥沃土や水はけなど土の問題もある。森を開拓するとなれば木を一本伐採して切り株を引っこ抜くのも大仕事になるわけだしな。

 まぁ、それをさておくとしても未開の原野や荒野、森林を切り拓いて村を作るなんてのは大事業だ。決して一人でできるようなことではない。


『そのはずなんだけどね。なんだか頭がおかしくなりそうだよ』

「そこは現実を直視してもろて」


 今、俺はモノの指示を聞きながら開拓村建設予定地を駆け回り、爆速で開拓を行っていた。モノには俺が設置した物見台からゴーレム通信機を使って俺に指示を出してもらっている。

 今、この開拓村建設予定地にいるのは俺とモノ、そして俺の護衛役を担っているグランデとハーピィさんのうちの一人だけだ。残りのハーピィさんと鬼娘達には周辺に魔物や危険な地形などが存在しないか見回ってもらっている。あちらにもゴーレム通信機を一組渡してあるので、連携はバッチリだろう。航空戦力としても偵察要員としてもハーピィさん達はとても優秀だ。まぁ、今回は爆装も施していないから、基本的に偵察しか出来ないはずだけれども。

 ちなみに、モノには俺が作る住宅や給水塔に関してすでに公開済みである。住宅は身体の大きな獣人や鬼人族でも住むことができるように配慮されているものだ。それが指定した場所にポンポンと建っていく様はそりゃ初めて見ると面食らうのも仕方ないのかもしれない。

 ちなみに、今は主だった施設の位置を決めるために土地を均しているところである。意外とこういう原野というのは真っ平らというものでもないので、整地作業が必須なのだ。


『そのシャベル? は一体どうなってるのさ』

「純ミスリルの刃に最高級の素材による付与を施した一品でございます」

『何がどうなってそんなものをミスリルで作った上に付与まで施すことになったの……』


 主に俺の趣味です。まぁ、こうして実益を兼ねているだけ上等ではなかろうか。広範囲を一気に掘って均せるのは実際とても便利である。


「ところで話は変わるんだが、単眼族ってどこかにコミュニティ……こう、集まりというかそういうのはあったりするのか?」

『昔はあったけど、今は聞かないね。僕達単眼族は聖王国の連中に嫌われていたから、できるだけ目立たないように身を潜めていた人が多かったと思う。幸い、僕達は長生きで魔法や薬学、錬金術なんかに長けている者が多い。だから、他の亜人の集まりに紛れ込んで守ってもらう代わりに知識や能力を提供して生き延びた、って人は案外多いんじゃないかな』

「亜人の集まり? そういうのは弾圧されて解体されていたんじゃないのか?」

『そうでもないよ。聖王国の支配下にあっても元々メリナード王国は人間と亜人が同じ人族として共に生きてきた国なんだ。表面上は聖王国の――つまりアドル教の教えに従うふりをして、その裏で亜人を匿うメリナード王国人も多かったし、そもそも亜人は人間よりも身体能力や魔力に長けている人も多いから、元々人間が踏み込むのが難しいような環境に村や里を置いているってケースも無くはなかったんだ。そういった場所に寄り集まって難を逃れた亜人もそれなりにいるさ』

「へぇ……そういやベラが自分の村がどうこうって言ってたっけ」


 前にうちの村ではどうのこうのって物騒な話をしていた覚えがある。もしかしたらベラはそういう村とか里の出身だったのかもしれない。今度詳しく話を聞いてみようかな。


『ベラって赤鬼族の娘さんだね。鬼人族なんかは種族として戦闘力が高いから、元から環境の過酷な山奥とかに里を作って生活する傾向があるんだよね。まぁ、粗暴な人が多いからトラブルも多いんだけど、この二十年間に関しては多くの亜人を里に受け入れて保護してたみたいだよ』

「へー、乱暴者だけど人情に厚いって人が多いのかね」


 うちの鬼娘達はあんまり乱暴者ってイメージはないけどな。まぁ、里の外に出て冒険者なんてやってるのは鬼人族の中でも変わり者だからなのかもしれない。


『そんなところかな。メリナード王国の西部に関しては小国家連合やドラゴニス山岳王国との兼ね合いもあって、聖王国の支配はかなり緩めだったんだ。東部や中央部、それに北部は聖王国の勢力が強くて大変だったけどね。あと、南部には抵抗勢力が集まってて、ここ五年くらいは聖王国の連中はそっちの支配に特に注力してたみたいだ。三年ちょっと前くらいに反乱が失敗して、それ以降はかなり厳しい状況だったみたいだね』

「ああ、それは知ってる。その反乱勢力の残党が黒き森に辿り着いて、そして巻き返して今の状況になったんだからな」


 南部で酷い環境に置かれていた亜人達はレオナール卿達が起こした反乱に協力していた人達だったのだろう。それであんなに扱いが酷かったわけだ。今になって考えてみれば、アーリヒブルグ以北で解放した亜人奴隷達は南部で解放した亜人奴隷達よりはマシな扱いを受けていた人達が多かった気がするな。

 そんな聖王国の占領統治下の話をモノから聞きながら、俺はザクザクと開拓村を整備していくのであった。


 ☆★☆


 整地さえ終わってしまえば後の作業は早かった。プループリント機能を使って登録済みの住宅や給水塔、防壁などをパパっと設置して、後は農地にする場所にひたすらミスリルクワを振るうだけである。流石に農地ブロックを設置すると成長速度が異常になりすぎるからな。俺が耕せばどんな荒れ地でも普通の基準で言うところの肥沃な土地になるので、これくらいで丁度いい。

 しかし小石も低木も雑草も何もかもを分解して農作に適した土地に変えてしまうというのはこうして冷静に考えると恐ろしい能力だよな。土壌の微生物とか栄養素とかどうなってるんだろうか。実は俺はこのクワで物凄いことをしているのでは? まぁ魔法とか神の奇跡的な力なんだし、科学的な見地でものを考えても仕方がないか。

 とりあえず開拓するべき村は沢山あって、モノ達のこの村もそのうちの一つでしかない。モノはアイラ以外では始めて出会った単眼族だったし、もう少し色々と話を聞きたいところではあったのだが予定も押している。俺は後ろ髪を引かれながらもモノ達に別れを告げて次の開拓村へと向かった。


「忙しないねェ」

「仕方がないだろ。エレン達の出産だって控えているんだし、とっとと仕事に一区切り着けて帰りたいんだ」

「心配なのはわかるけど、無理はしないようにね。貴方が倒れたらみんな困るんだから」

「そう言うならトズメはもう少し夜に手加減したほうが――痛いっす!」


 いらんことを言いかけたベラの後頭部にトズメのげんこつが飛ぶ。運転中のベラの後頭部を強打するのはやめて差し上げろ。下手すると事故って俺達の身が危ないから。

 そうしてトラビス子爵の元に戻り、一つ目の開拓村の建設が終わったことを報告する。二度目の訪問なので街に入るのも子爵の屋敷に通されるのも顔パスだ。


「は……? ええと、一つ目の村の建設が終わったと……?」


 村の建設に行くって言ったの昨日だよね? という顔をしている。うん、疑問に思うのは当たり前なんだけど本当に終わったんだ、これが。


「とりあえず一つ目が終わったから報告と、その検分を進めてもらいたいという話だな。その間に我々は領内の開拓村建設予定地を回って同じようにどんどん開拓村を作っていく」

「それは進めますが、昨日の今日で……いえ、わかりました。まずは早急に人員を派遣させていただきます。三日……いえ、二日下されば」

「わかった。では二日後の昼頃にこちらにまた足を運ばせてもらう。今は一刻たりとも無駄にしたくないのでな、すぐに次の現場に向かわせてもらう」

「承知致しました。では、二日後の昼食は是非こちらで。当家の料理長に腕を振るわせていただきますので」

「わかった。それではな」


 どうにも貴族相手の王配ムーブは肩が凝っていかんな。でもあんまりフランクに接するのもよくないって話だしな。あんまり偉ぶった物言いは得意じゃないんだけど。


 そんな感じで俺達はトラビス子爵の治める領地内でいくつもの開拓村を建設していった。トラビス子爵はシルフィ達が一番最初に俺を派遣することを決めただけあって、非常に有能かつ協力的な領主だったな。何事もスムーズに事が進んで実にやりやすかった。

 さて、次の派遣先はどうかね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 待ってました♪ ありがとうございます。
[一言] 待ってました!!
[一言] 再開ありがとうございます。 ご主サバロスに陥って、読み返しを二周ほどしてしまいました。
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