第334話~元亜人奴隷達の扱い~
原稿作業のため暫く更新をお休みします!
ゆるしてね!_(:3」∠)_
ここを後にする前にということで治療を始めた。
日常生活には問題はないが、身体のどこかに慢性的な痛みを抱えている人。なんとか動けるが、微熱と咳に苦しんでいる人。慣れない環境で熱を出した子供。そんな感じの命には関わらない軽症者が殆どで、まともに歩くのも難しい人、働くのが不可能な人は殆ど居なかった。
「軽症者が多いのは良いことなんだが……」
「怪我や病気で働けなくなった人は放逐されて死んでいったんだ。奴らにとって亜人は使い捨ての労働力以上の何ものでもなかったからね」
「はぁ……それで神の愛を説くってんだから救いようがねぇなぁ」
宗教関係の話はデリケートだからあんまりしたくないけど、地球の宗教でも異教徒は人に非ずなんてのがあったみたいだしなぁ。それにしたって愛や善を語った口でよくもまぁって感じだよ。
「彼らにとっては善行だからね。彼らにだってそんな我々を哀れに思う心はちゃんとあるのさ。ただ、彼らはその善性でもって私達を使い潰し、野垂れ死にさせるんだ。亜人は厳しい試練の末に死ぬことによって罪が贖われ、来世では真っ当な人間に生まれ変わってくる。そして彼らはそんな哀れな亜人達に艱難辛苦を与え、心を痛めながらも亜人達に試練を全うさせることによって、より良き者として神の御下に迎え入れられることになる」
「そんな無茶苦茶な」
「実際にそこまで敬虔な信者はいないけどね。ただ、そのように神が言っている、そう聖職者が言っているっていうのが大事なんだよ。神様がそう言ってるって偉い聖職者が言ってるから大丈夫。皆がしてるから大丈夫ってね」
フードの単眼族はそう言いながら俺が開拓民達を治療するのを横でじっと見ていた。
「ところでそれは……何をしているの?」
「添え木を当てて包帯をしているんだぞ」
「……?」
「おお! 膝の痛みが消えた!」
「……???」
フードの単眼族が少し前のアイラみたいな反応をしている。
「そういや名前を聞いてないんだが」
「……ああ、うん。モノって呼ばれてる」
「一つ目? 本名か?」
「いいや。でも、良いんだ」
何か彼――多分だけど彼――にも思うところというか、抱えているものがあるんだろうな。知的好奇心が旺盛なのはアイラと同じであるようだが、アイラに比べると随分と大人しいというか、影があるように思える。
「そっか。まぁ、これからはきっと色々と上向いていく一方だろうから、気楽にやれよ」
「そうだね。そう願うよ」
☆★☆
程なくして治療が終わり、その間に用意されていたメシを頂くことになった。用意されていたのは野菜のスープと粥だ。どちらも干し肉で出汁が取ってあるようだが、あまり美味しくはないな。量だけはあるから腹はいっぱいになるけど。
「まぁ、街からこれだけ離れるとこんなもんか」
「そっすねぇ。カンヅメとかがもっと普及すれば変わると思うっすけど」
「流石にまだ生産量が少ないからなぁ」
俺が提案して立ち上げを行った缶詰や即席麺の事業は順調に拡大しているようだが、まだこの辺りにまで普及するほどの生産量は無い。まだゴーレムを使った大量生産工場とかが出来たわけじゃなく、手工業の範囲だからなぁ。
機械化による大量生産をしようにも、缶の材料となる金属原料もこの世界ではまだ大規模工業による大量生産は出来ていないわけで、まだまだ改善すべき点が多いわけだ。鉄の大量生産をするためには鉱石も大量に確保しなきゃならないからなぁ。まずはそっち方面にも力を入れなきゃ缶詰の大量生産なんて夢のまた夢だな。
「やることが多いなぁ……」
「なんで今の会話からその言葉が出てくるのかわからないっす」
「旦那はあたしらよりもずっと頭がいいからねェ。あたしらには見えないものが見えるんだろうさァ」
「コースケー、食い足りん。食った気がしない」
「はいはい」
若干真面目な話をしていてもグランデがこうして甘えてきたら終了である。我が家のドラゴン様は食い物の満足度にうるさいのだ。
「何が良い? ハンバーガーで良いか?」
「うむ、ぱんけーきもじゃぞ」
「はいはい。シュメル達は?」
「あたしも一個もらおうかね」
「うちも食いたいっす」
「私は良いわ。でもぱんけーきは食べたい」
そんな感じでグランデとうちの鬼娘達にハンバーガーやらパンケーキを出し始めると、なんだ嗅ぎ慣れない食い物っぽい匂いがするぞと開拓民達も集まり始める。幸いハンバーガーとパンケーキの在庫も材料も沢山あるので、開拓民だけでなく彼らを守っている兵隊さんにもハンバーガーとパンケーキを出してやることにした。生クリームは材料が限られているから、ジャム類で我慢してくれ。
「うめぇ!」
「なにこれおいしいー」
開拓民達の好みはハンバーガー派とパンケーキ派に見事に別れた。やはりというかなんというか、獣人でも肉食系の獣要素が入っている人は肉のほうが好きで、草食系の獣要素が入っている人はパンケーキの方が好きであるようだ。無論、その例に漏れる人も居るようだから、絶対にそうというわけではないようだけど。
というか君たち、飯食ったよね? そんなに食ってお腹壊しても知らんぞ俺は。
「ところで、開拓村の現場でも意見を聞きたいから、できれば誰かについてきてもらって現場でも直接意見を聞きたいんだが……」
俺がそう言うと、開拓民達の間に緊張が走った。うん、これはしくじった。ハンバーガーとかを食わせる前に話すべきだった。
「OK、落ち着いて話をしようじゃないか」
話し合いは大変に紛糾したが、最終的にはモノを連れて行くことになった。身体は小さいが頭がよく回るモノはなんだかんだで皆に頼られているらしい。
実はそれだけでなく、彼は魔法の達人で回復魔法や攻撃魔法なども使えるそうだ。それで皆に頼られているということだったのだが、病気や怪我は俺が一通り直したし、魔物や盗賊対策に関しては兵士達が守っているということで彼が送り出されることになった。
「よし、行くか」
「くぅ……私も行きたかったー」
「俺だって行きたかったぜ」
「遊びじゃないからね。それより、私が留守の間は頼むよ」
まだブチブチと文句を言っているデネロスとラーヤ他、開拓民達に見送られながら俺達は開拓村へと向かうことになった。
さて、サクサクと仕事を終わらせていくとしますかね。