第333話~フードの単眼族~
朝六時近くまですてらりすマルチプレイをしていたというアレ。起きたら15時近くでした_(:3」∠)_(ゆるして
こちらを警戒するように見つめている亜人達の前に進み出た俺は彼らをまずは観察した。年寄りはあまりいないようだが、子供は結構いる。家族単位で移住を試みようとしているか、それとも親を失った子を皆で面倒を見ているかってところだろうか。子供達はそうでもないが、大人達は若干痩せているように見える。
「どうも、この先の開拓村の開設予定地で農地や家屋を作る作業をする者だ。気軽にコースケと呼んでくれ」
名乗ってもこれといった反応はない。シルフィと違って俺の名前はそこまで大々的には広がっていないからな。王配が不思議な力を持ってて、アドル教の聖人として認められていて色々奇跡を起こしているとか、北方戦役を収めたとかそういう話は流しているようだが、俺個人の名前に関しては意図的にぼかしている。王配という言葉だけが強調されている感じだな。これはメルティによる意図的な情報操作である。
「実際に住むのは俺じゃなくてあんた達だろう? 色々と話をしたいんだ。兵隊さん達には話をつけて今日の作業はここまでってことになってるから」
そう言うと、彼らは互いに顔を見合わせてからとある人物に視線を集中させた。亜人達の中でも非常に小柄な人物だ。子供みたいな体格で、フードを目深に被っていて表情が窺えない。
「もしかして単眼族か?」
俺の言葉に小柄な人物がビクリと身体を震わせる。どうやら怖がられたらしい。
「別に単眼族に思うところはないから。今は一緒じゃないけど、単眼族の女の子と仲良くしてるし。ここにいる全員があんたを頼ってるようだし、話を聞かせてもらえないか?」
彼――もしくは彼女――はフードを目深に被ったまま頷いた。それを受けて俺はインベントリからテーブルセットを取り出し、道端に適当に置いて座る。フードの単眼族も少し戸惑いながらではあったが、席に着いた。
「他に一緒に話を聞いたほうが良い人は居ないか?」
「それじゃあ……デネロスとラーヤも一緒に」
フードの単眼族が二人の人物を呼ぶ。デネロスというのは体格の良い牛系の獣人で、ラーヤはウサミミの女性だった。人間にウサギの耳が生えたような感じだが、一応兎獣人ということになるのだろうか。
「おう、呼ばれてきたぜ」
「どうもー」
デネロス用に普通の椅子ではなく大きな椅子を用意する。身体の大きなダナン用に用意していたものであったのだが、彼の体格はダナンに非常に似通っている。牛系の獣人はやっぱり身体が大きいものなんだな。
「まずは何にせよ家だな。どれくらいの数の家が必要なのかを話し合いたい。将来的には子供達が大きくなって家が必要になったりするだろうし、移り住んでくる人も増えるかも知れない。それにいずれ村の中でも子供が生まれて新しい家庭を築くようなこともあるだろう。だから、ある程度余裕を持って作ったほうが良いと思うんだよな」
「それはわかるけど、家を建てるのはそんなに簡単なことじゃないと思う」
「その点は心配しなくていい。後々のことも考えて村の敷地は大きく取っておこうって話だと思ってくれ。その上で、今すぐにでも移住するってなった時に必要な家の数や規模を検討したいってことだ」
「なるほどー」
ラーヤは長い耳を揺らしながら熱心に話を聞いてくれている。なんというかこの組み合わせはアイラとダナン、それにメルティを彷彿とさせるな。なんだか少し面白い。
「それなら――」
ということで実務的なお話に入る。ここにいる家族に十分な広さを持つ家をいくつ用意するのか、村の共同施設としての集会場や倉庫、来客用の宿泊施設や作物を運び出す際に使用する馬車や馬を管理する施設、それに家畜用の施設など、何がどれだけ必要になるかということも決めていく。
「開拓村の建設予定地は水源も無ければ土地も痩せている場所だと聞いているけど、本当に大丈夫なの?」
「その点は心配いらない。水に関しては村の中央に設置するこの給水塔で全て賄える。将来的な水不足の心配も必要ない」
「随分と自信があるね。でも、農業にも使うってなると少々の水量じゃ話にならないよ」
「大丈夫、無限水源だから」
「無限水源……?」
何言ってんだこいつ、といった雰囲気でフードの単眼族が首を傾げるが、スルーしておく。説明するとなると面倒くさいからな。
「とりあえず水の心配と農地の心配はいらない。難しいだろうけどそこは信じてくれ」
「住むところができるだけでも十分だ。少し足を伸ばせば森があるから、狩猟もできるだろう」
「あまり狩りが得意な人は多くないですから、心配ですけどねー」
まぁ、そういう人なら冒険者でもやってるだろうしな。ここにいる人達というのは基本的に冒険者や軍人など、荒事のある職に向かない人達が多いのだろう。
「ところでメシは食えてるのか? 病気や怪我で苦しんでいる人は? ついでと言っちゃなんだが、そういう事態にも今のうちに対処していきたいと思うんだが」
「ミューゼベルグに来てからはちゃんと全員が食事にありつけてる。ただ、少し体調を崩し気味の奴が何人かいるな」
「それなら少し診ていこう。普通なら治らない古傷とかも治せるかも知れないから、居るならそういう人も集めてくれ」
俺の言葉を聞いてデネロスがフードの単眼族に視線を向ける。フードの単眼族は無言で頷いた。
「ただ、私達には何も返せるものがない」
「気にしないでくれ。これを恩に感じるなら、その分他の誰かを助けてやってくれ。それが続いていけばいずれ世の中は良いものになるさ」
「理想論だね」
「現実だけじゃ腹は膨れても心が貧しいままだからな。綺麗事でもなんでも良いから、少しは夢や理想を追い求めるべきだと俺は思うね」
俺がそう言うと、フードの単眼族はフード越しに俺の方にじっと視線を向けてきた。フードを被っているから表情や顔立ちはよく見えないが、大きな瞳が俺の顔をじっと見つめているのはよくわかる。
「貴方みたいな人が国のトップに近い場所に居るなら、この国も良くなっていくだろうね。私は私なりに頑張っていくよ」
「そうしてくれ」
そんな話をしている間にデネロスが体調の悪い人達を連れてきた。
さて、ここを後にする前にもうひと働きと行くかね。
最強宇宙船を1/20に更新したらちょっと原稿作業のため更新をお休みします!
ゆるしてね!_(:3」∠)_(ご主サバは1/19の更新をしたらしばらくお休み




