第316話~ゴーレムタレットと衝撃発言~
今日はめちゃくちゃ寝坊しました(´゜ω゜`)(1400に起きた
「これが『たれっと』ですか」
「いえす。ゴーレムコアによって制御される防衛兵器です」
アクアウィルさんの質問に俺は胸を張って答える。
タレットの設置場所はプラットフォーム上の四隅に二基ずつ。そしてプラットフォーム裏面中央に四基、四隅の柱に二基ずつの合計二十基である。設置数が少々過剰かもしれないが、ここは魔物の領域に片足を突っ込んでいるような場所なのでこれくらいの備えがあったほうが良いだろう。
「重機関銃という強力な銃器にゴーレムコアとゴーレムアームを組み合わせて作り出したもので、設定によって目標を変更することができるようになっているんだ。今は魔物を目標にしているけど、目標の設定を変えれば対人用途にも使える」
「危険ではないのですか? 誤射される可能性は?」
「このゴーレムコアが人族とそれ以外を見分けるのには魔力波長の違いを利用してるから、故意に射線に飛び込んだりしない限りは大丈夫。一応射線上に標的以外の生物が存在する場合には発砲しないようにセーフティも組み込んではある。ちなみに、グランデみたいなドラゴンもまた人間とは魔力波長が違うらしいんだけど、魔物とも違うようなので区別がつくようになってるぞ」
この辺りはアイラや研究開発部の面々にも相談してゴーレムコアの制御術式を構築したし、グランデにも協力してもらって開発したから間違いは無い。
「なるほど……それにしても随分と威嚇的というか物々しい感じの武器ですが、威力はどの程度なのですか?」
「口径は12.7mm、銃口初速は音速の三倍弱、有効射程凡そ2000m、最大射程凡そ6700m――と言ってもピンとこないよな。鎧を着た騎士数人を貫通して即死させるレベルだ。ワイバーンくらいまでなら間違いなく貫通。グランデの話でもはドラゴンでも何十発と受けると危ないらしい」
「そんなものをこんなに沢山設置して一体何と戦うつもりですか?」
「……ドラゴンが襲ってきても大丈夫!」
「妾がいるから襲ってはこんじゃろ」
苦し紛れに笑顔でサムズアップしてみたが、グランデに冷静に突っ込まれてしまった。こういう防衛設備は過剰なくらいで丁度いいんだよ。資材に余裕があると拠点を無駄に堅固な要塞にしてしまうのはサバイバーの性みたいなもんだから許して欲しい。
「本当に大丈夫なんですか?」
「……撃たれたら間違いなく助からない」
「そ、そこは旦那さんを信じるしか無いですよぉ……」
碧羽ハーピィのフロンテと黒羽ハーピィのレイ、それに茶色羽ハーピィのフラメの三人が12.7mmゴーレムタレットを見て不安げにしていた。
「大丈夫だから。もし偵察に出てワイバーンに追っかけられたらここまで逃げてくれば勝手に撃墜してくれる頼もしいやつだよ」
「その時が一番怖いんですよねぇ……」
「後ろからワイバーン、下からこれの銃撃……漏らしそう」
「お、お祈りするしかないですねぇ……」
「……なんだか物凄く恐れているようですが、本当に大丈夫なのですか?」
「あはは、私達はコースケさんが作り出す武器の凄まじさというのを恐らく一番わきまえているので。もしそれが自分の身に降り掛かった時にどうなるかというのが容易に想像できるだけに、怖いんですよね」
「これ、銃士隊の銃よりもかなり太くて長い」
「た、多分私達にまともに当たるとばらばらになりますよね、これ」
「ばらばら……」
ハーピィさん達が空中でバラバラに四散する姿を思い浮かべたのか、アクアウィルさんの顔色が悪くなる。うん、確かにそうなる可能性はあるけどもね。
「大丈夫だから! 味方を誤射しないように万全の対策をしてあるから! でもできるだけ標的からは離れてね!」
「やっぱり危ないんじゃないですかやだー!」
大丈夫だけどほら、万が一ってことはあるからね! 一応ね!
☆★☆
怖がるハーピィさん達を宥め、ジト目で本当に大丈夫なのかと問い質してくるアクアウィルさんの追求に真摯な回答をしている間に日が傾いてきてしまった。まぁ、今日は移動日ということで探索する予定は無かったし良しとしよう。
「ベッドメイキングなどは終わらせておきましたので」
「それはお手数をお掛けいたしまして……」
「いえいえ、これも私達の仕事ですから」
レビエラはそう言って愛想の良い笑みを浮かべる。うーむ、何故だかメルティの笑顔と被る気がするな。目鼻立ちは全然違うんだけど。
「それじゃあ夕食を作りましょうねぇ」
そう言ってゲルダは食堂の片隅に積まれている木箱に視線を向けた。なるほど、あの大量の木箱には食料が入っていたのか。
「一応煮炊きはできるようにしてあるけど、俺が作り置きしてある食事を出しても良いぞ? 今日は慣れないエアボードに乗って二人とも疲れてるだろうし」
「ええっと、それなんですけどぉ……」
俺の提案にゲルダは困ったような表情をする。うん? なんだろう?
「私達三人は貴方の出す食事は遠慮させていただきます」
いつの間にか食堂の入り口からアクアウィルさんが顔を覗かせていた。なんでそんな隠れるようにこっちの様子を伺ってるんだ、君は。
「貴方の出す食事を口にすると貴方に籠絡される確率が高くなりそうなので」
「人の出す食事をそんな怪しげな物体みたいに言うのはやめないか」
「確かに旦那の出す食べ物は美味しいっすよね」
「うむ。はんばーがーは至高の食べ物じゃな。ぱんけーきとかぷりんも素晴らしいぞ」
「味が濃くて美味しいのは確かだねェ。あたしのイチオシは腸詰め肉とか燻製肉だけど」
食事を怪しまれているのにそれを肯定するような発言をするのはやめないか。ほら、アクアウィルさんの疑惑の眼差しが強くなってるじゃないか。
「確かに美味しいけど、それだけで関係を結んだわけではないわよね」
「コースケさんの人柄と甲斐性に惹かれているんですよ、私達は」
「旦那さんは優しいし甲斐性たっぷり。みんな幸せにしてくれる」
「た、頼りがいがありますから……」
流石トズメだ。そうそう、そういう援護射撃が欲しかった。ハーピィさん達も良いぞ。というか、俺の出す食事に俺を好きになる成分的な何かが入ってるなら、解放軍構成員の大半が俺にぞっこんになってないとおかしいと思う。特に解放軍発足当初はほぼ俺の作り出す食事やブロッククッキーでみんなの腹を満たしていたわけだし……ということを主張してみた。
「……」
「疑いの色を隠す気のない視線が俺を襲う!」
容赦のないジト目に俺のガラスのハートは砕け散る寸前である。いや、流石にそれは冗談だけど。
「まァ、飯食わせて惚れさせるなんて力があったら確かに凄いと思うけどねェ……少なくとも、あたし達はそんな理由でコースケを選んだわけじゃないから」
「妾だってそうじゃぞ。確かにコースケの出す飯は美味いが、それだけでつがいに選ぶほど妾は食道楽ではないわ。侮るでない」
シュメルは苦笑いする程度で済ませているが、グランデは唇を尖らせてちょっとご機嫌斜めである。おおよしよし、怒らない怒らない。破壊的に可愛いけど落ち着き給え。
「まぁ、それで気が済んで安心するって言うならそうすれば良いんじゃないっすか? 旦那の出す食い物を食えって強制するのもそれはそれでなんか変っすし」
「では、私がコースケ様の出す食事を口にしてコースケ様に好意を抱くかどうかを試すという方向でどうでしょうか?」
レビエラの提案に全員の視線が集まる。
「私は見ての通り翼魔族で、肌の色も目の色も普通の人間男性の好みとはかけ離れています。コースケ様も私のような女には興味を抱かないでしょうし――」
「いや、それは無いっす。あたしとかトズメも余裕でOKな旦那なら余裕でいけるっすね」
「私達でも大丈夫ですしね」
「城の地下に済んでるスライムどもとも懇ろな仲のコースケじゃぞ?」
ベラ、フロンテ、グランデがほぼ同時にレビエラの発言を否定する。いや、まぁそうだけども。そうだけども君達、今ここでそれを言うと俺が警戒されるだけでは?
「……」
レビエラから視線を感じたので視線を向けてみると、滅茶苦茶ガン見されていた。このタイミングでそんなにガン見されるとなんとなく気恥ずかしいんですけど。
「……なるほど。人柄や甲斐性に惹かれたという意味がわかった気がします」
「レビエラ?」
「アクアウィル様、アレは天然の女たらしです。食事に何か混ぜてるとかそういうのではないと思います」
「そんな馬鹿な!?」
俺が天然の女たらしとか何の冗談だ。俺の恋愛偏差値は最低レベルの筈だぞ。そんな天然の女たらしとか言われるような才能があったら元の世界でもっと楽しい人生送ってたわ!
「あ、あのぅ……お夕飯の準備を早く始めないと、日が落ちてしまいますよぉ……」
一人蚊帳の外から様子を伺っていたゲルダがオロオロしながらそんなことを言っているが、俺としてはそれどころではない。今の女たらし発言について詳細な説明を求めるぞ!