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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
異世界の森でサバイバル!
31/435

第030話~皆、武器は持ったな!! 行くぞォ!~

ちょっと短め_(:3」∠)_

「構え! 撃てぇ!」


 ビビビビビッ! と弦の弾ける音が無数に響く。ボルトの矢羽が風を切る音は殆ど聞こえない。元々矢羽が小さいからか、飛翔中のクロスボウボルトというのは実に静かなものだ。もしかしたら、クロスボウを向けられている者達には死の羽音めいた音が聞こえているのかもしれないけど。


『GIEEEEE!?』

『GOEEEEE!?』


 着弾の音は殆ど聞こえない。聞こえるのはギズマ達の断末魔ばかりである。

 

 うん、結論を言おう。


「圧倒的じゃないか、我が軍は」

「ははは。数が揃うと圧倒的だよな、この武器って」


 改良型クロスボウの弦を引きながらジャギラが笑う。うん、そうなんだ。数を揃えたクロスボウの一斉射はギズマ達によく効いた。いや、効きすぎた。なんと言っても、射手の数がモノを言っている。


「何人くらいいるんだ、これ」

「二〇〇人ちょいってさっき聞いたぞ」

「単純計算で一斉射二十匹か……そりゃ相手にならんわな」


 ギズマ達は後から後から暗い森から這い出してきてはいるのだが、まず無数に設置された障害物で足止めをされて撃ち殺される個体が多数。

 そしてその死体が邪魔で森とキルゾーンの境に団子になったギズマ達が次の一斉射でズタボロに。無事だった個体も結局のところ死体が邪魔でなかなか前に進めない。そのうち左右に回り込み始める個体が出てきたが、横っ腹に多数のボルトを撃ち込まれて行動不能に。仲間の死体を乗り越えて防衛線を突破しようとした個体も出るが、そういう個体は城壁上から見ていると非常に目立つ。


「突破させるな! 撃てぇ!」


 当然のように集中射撃を喰らって撃破される。


「リロード早えな、皆」

「獣人は基本的に身体が強靭だからね。多分、全員が改良型クロスボウを使ってもそんなに連射速度は落ちないと思うよ」

「なるほど……改良型クロスボウの量産も考えたほうが良いのかね」


 ちなみに、さっきから俺の隣に陣取って改良型クロスボウをバシバシ撃っているのはクロスボウ狂のジャギラさんだが、俺の隣に陣取ればクロスボウボルトに不自由しないだろうと思ってここに陣取ったらしい。流石は斥候、慧眼である。


「これはエルフの精霊弓士の出る幕が無いんじゃないか?」

「無いね」


 既に無数のギズマの死体がキルゾーンを埋め尽くしつつある。今はペースを落としているが、襲撃が始まった直後は十秒から十五秒に一回くらいのペースで斉射してたんだよな。最初のペースで撃ち続けていたら五〇〇〇本の矢が四分くらいで撃ち尽くすのか。


「コースケさん、矢が足りません」

「好きなだけ持っていってくれ……」


 俺とジャギラの分ということで二〇〇本だけ残し、残りのボルトを全て放出して催促に来たメルティに渡しておく。合計一万本作っておいて本当に良かった。

 一時間もしないうちにギズマ達の襲撃は散発的なものになったため、ダナンは一斉射の運用を停止し、ボルトの節約を意識してか引きつけてから撃つように指示を変更した。回収の手間を考えるとギズマ自身に壁に近づいてもらったほうが楽だもんな。


「ギズマの肉ってどれくらいで悪くなるものなんだ?」

「ん? 半日も放っておいたらダメになると思うぞ」

「なるほど……回収しに行くか」

「へ? この中をか?」

「近接戦ができる人員で固めていけば大丈夫だろう。ギズマの肉は結構美味いし、腐らせるのは勿体無い」


 唖然としているジャギラをその場に置いたまま指揮を執っているダナンの元へと向かう。ダナンが陣取っているのは防壁に設けられた門の上で、ここはダナンの指示を受けながら特に手を入れた場所だ。スペースも広く取ってあって、指揮所としても迎撃拠点としても使えるようにしてある。


「む、コースケか。どうした?」

「うん、ギズマの襲撃も散発的になってきただろう? だから、キルゾーンに転がっているギズマの死体を回収したいと思うんだよ。俺の能力を使えば素早く回収できるし、俺の能力で保管している間は肉も腐らないからな」

「なるほど……では近接戦闘に優れる者を集めて回収部隊を編成する。ウォーグ、この場の指揮を任せる」

「はっ」


 狼獣人のウォーグがダナンに敬礼をする。どうやらウォーグはダナンの副官的な立場にあるようだ。


「近接戦闘ということなら、私も行きますねぇ」


 熊獣人のゲルダも一緒についてくるようである。確かに大柄な彼女は見るからに力が強そうだ。のんびりぽんやりしてる感じだけど、戦えるのだろうか? 俺が修繕してダナンに渡した剣は一応腰に下げてるみたいだけど……人間サイズの鉄剣は大柄な熊獣人のゲルダの武器としてはいかにも頼りないな。

 うーん、しまったな。近接戦闘をするつもりがなかったから、ろくに武器なんて作ってない。何か使えそうなものは……ああ、これならどうだろうか。


「ゲルダさん」

「はい? なんでしょう? あ、私のことはゲルダで良いですよぉ」

「ああ、うん。わかった。いや、その剣じゃなんとも心許なさそうだなぁと」

「ああー、そうですねぇ。私、馬鹿力なので正直すぐに折ってしまいそうなんです」


 そう言ってゲルダは頬に手を当てながら苦笑いを浮かべる。うん、ゲルダは身体が大きいものな。普通の長剣のはずなんだけど、腰に吊っている鉄剣がショートソードに見えるよ。


「俺は門の近くで待機してるってダナンに言っておいてくれるか? 何か良さそうな武器を作ってみるよ。ちなみに、好みの得物は?」

「わぁ、良いんですかー? 私、メリナード王国で重装歩兵をやっていた頃は特注のタワーシールドとロングメイスを使っていたんですよぉ」

「タワーシールドとロングメイスね……了解」


 ニコニコしているゲルダにこの場を任せ、門の近くの少し開けた場所に向かう。シルフィの家の作業場よりもここで作業している時間のほうが遥かに長いんだよな……そのせいか、最近はここが俺の作業スペースだと難民の皆さんにも認知されつつあるみたいだし。

 まぁ良い、ダナンが回収部隊を編成している間に近接武器をさっさと作ることにしよう。鍛冶施設を設置し、燃料を投入して武器一覧を見る。ロングメイスは無いな。

 柄が長く、丈夫で、打撃部の頑丈なメイス。メイスをそのまま大型化したものをイメージする。


・ロングメイス――素材:鋼の板バネ×3 鉄×3


 素材が重め。まぁ、総金属製だとこうもなるか。後はタワーシールドだな。タワーシールド、タワーシールド……無いな。いや、スクトゥムがあるな。これで良いか?


・スクトゥム――素材:動物の皮×3 布×3 鉄×1


 鉄で補強した皮の盾って感じなんだな、スクトゥムって。ゲルダが使うなら金属の比率を高めたタワーシールドで良いのじゃないだろうか? スクトゥムのイメージはそのままに、薄く頑丈な鋼板と木、革で補強したタワーシールドを想像する。接合にはエルフの倉庫で貰ってきた接着剤を使えば良いだろう。


・ヘヴィタワーシールド――素材:鋼の板バネ×3 木材×2 動物の皮×2 接着剤×1


 うん、これで良いだろう。作成開始だ。ついでに俺の武器も見繕ってみる。うーん、所詮は素人だしなぁ。俺なんてクロスボウやら銃を使うのが一番お似合いなんだろうが、近接戦に巻き込まれる可能性は常に考慮すべきだ。何が良いか? 古今東西で雑兵が持つ武器なんて決まっている。槍か棍棒だ。


・鋼の槍――素材:鉄×3 木材×2

・スパイクドクラブ――素材:鉄×2 木材×2

・メイス――素材:鉄×4 木材×2


 というわけでこの辺りを作ることにする。スパイクドクラブは所謂釘バットの凶悪版みたいなもんである。メイスと使い比べてみよう。

 と、そういう感じで装備品を作っているとダナン達が歩いてきた。シルフィも居るところを見ると、エルフの精霊弓士も防壁上で配置についたんだろう。随分時間がかかったな。


「おかえり、シルフィ」

「ああ、ただいま。本当にコースケも行くつもりか?」

「使えるものをわざわざ腐らせるのは勿体無いだろ。ゲルダ、武器ができたぞ。試してみてくれ」

「わぁ、ありがとうございます」


 ゲルダにロングメイスとヘヴィタワーシールドを渡すと、彼女は新しいおもちゃを貰った子供のように喜んだ。うん、嬉しいのはわかったからもう少し向こうで振り回して欲しい。風圧が、音が怖いから。


「重さも良い感じです。これならギズマも叩き潰せますねぇ」

「それは何よりだ」


 鍛冶施設を片付け、自分の獲物を試し振りする。槍は思ったより重い。叩きつければ普通に鈍器としても使えそうだな。スパイクドクラブとメイスに関しては、俺としてはスパイクドクラブの方が手に馴染む感じがする。メイスは俺には少し重く感じるな。


「新作か?」

「うん、試しにな。メイスは俺の手にはあまり馴染まないな」

「そうか。じゃあメイスは私にくれ」

「え? まぁいいけど」


 シルフィが欲しがったので、素直にメイスを渡すことにする。おお、小枝か何かのように軽々と振り回していらっしゃる。シルフィって腕はそんなに太くないし、触ってみるとちゃんと柔らかいのに妙に力持ちなんだよな。魔法的な力とかなんだろうか?


「準備はできたか?」


 おぉっ! と回収部隊の面々が気合の入った声を上げる。面子は俺、シルフィ、ダナン、ゲルダ、角が生えてて赤肌の鬼っぽい女性(丸太を加工したデカい棍棒装備)、鉄の槍を装備したリザード系の人物(性別の判別ができない)、鉄剣を二本装備した獅子顔の男性(昼に足を治療した人)、そして杖を持ったアイラである。


「アイラ? 大丈夫なのか?」

「大丈夫。宮廷魔道士の肩書きは伊達じゃない」

「そうなのか……」


 目からビームでも撃つんだろうか。いや、冗談だけど。きっと魔法的なサムシングで戦うんだろう。ちょっと楽しみだ。


「作戦目標はギズマの死体の回収だ。回収はコースケが行う。コースケ以外の人員はコースケを守ることを最優先とする。良いな? では開門!」


 閂が外され、鉄で補強された大扉が開く。よーし、素材回収フィーバータイムだ!

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