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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
異世界の森でサバイバル!
28/435

第027話~そっかぁ、こういう感じかぁ~

あっ(察し)ふーん……というタイトルにしようかとして自重しました。

過度な語録使用はいけない(戒め)_(:3」∠)_

 はい、翌日のコースケです。昨夜はイタズラし過ぎて逆襲に遭いました。シルフィ、あんなに初心だったのに一体どこであんなテクニックを……怪しいのはここのところ一緒にいることが多いメルティだろうか。

 とにかく、今日はギズマ狩りに行く予定である。万全の準備が必要だ。俺はシルフィが朝ご飯を作っている間に作成物の回収を済ませ、改良型作業台でスプリントを作っていた。

 スプリント、と言っても普通の人にはなかなか伝わりませんね、はい。つまり添え木セットです。骨折とか捻挫の治療に使うアレです。

 なんでこんなものを作ったのかというと、それはこいつが骨折や捻挫の概念のあるサバイバル系ゲームにおける必須アイテムだからだ。

 サバイバル系のゲームにおいて骨折や捻挫はとても恐ろしいデバフである。移動力やジャンプ力が大幅に減少し、場合によってはスリップダメージすら入る。移動力が減少すると敵対キャラクターから逃げることが困難になるため、死に直結しかねないのだ。

 大体は高所からの落下によって受けるデバフだが、場合によっては敵対キャラクターの攻撃によって引き起こされることもある。備えておいて損はないだろう。


「コースケ、朝食が出来たぞ」

「はーい」


 今日の朝食はナンのような薄焼きパンと、野菜やキノコのみじん切りに豆を加えてスパイシーに煮付けた料理だった。チリビーンズっぽいかな? チリビーンズにはきのこは入っていなかった気がするが、なかなかに美味しい。

 昼食用に薄焼きパンとチリビーンズっぽいものの入った鍋をインベントリに入れ、製造設備を回収して防壁へと向かう。

 防壁に辿り着くと、そこには出撃準備を行う難民兵達の姿があった。装備はてんでバラバラだがクロスボウだけは全員装備しているようである。


「おはよう、諸君」

『おはようございます!』


 難民兵達が声を揃えてシルフィに挨拶を返す。うん、悲壮な感じは無いな。士気は意外と高そうだ。


「姫殿下、おはようございます」

「ああ、おはよう。コースケ」

「アイアイマム」


 ダナンに挨拶を返したシルフィの視線を受け、俺は既に設置されていたテーブルの上にインベントリからドサドサとクロスボウのボルトを取り出す。


「載りきらないな。当たり前だけど」

「ちょっと待ってください。数を管理しなければならないので、五〇〇本ずつ出してもらえますか?」

「あー、了解」


 メルティの指示に従ってクロスボウボルトを納品し、数えられ次第難民兵達にボルトが配給されていく。こういう管理って大変だな。

 難民兵達は配給されたボルトを矢筒のようなものに入れたり、紐で纏めて袋に入れたりして持っていくようだ。うーん、そうだよな。持ち歩くための装備も必要だよな。失敗した。


「改良型クロスボウもいくつか作ってきたけど」

「通常型の残りと一緒に受け取りますね」


 残り二五〇台のクロスボウと、少しだけ作ってきた十五台の改良型クロスボウも納品する。これで一通りの納品は終了だ。


「クロスボウとかボルトが損傷したり、折れたりした場合でも極力回収するようにしてくれ。直せるから」

「そうですね。特に鉄の鏃は貴重品ですし」


 メルティが頷き、ダナンに向かって歩いていく。納品した品の管理については彼女の部下、というか手伝いをしている人々に既に任せてあるようだ。この場で俺がやることはこれで終わりなので、シルフィの元へと向かう。


「よ、今日は頼むぜ」


 そこにはクロスボウを持ったキュービがいた。どうやら彼も一緒に行くらしい。


「今回の討伐は三人一組単位で動くことになっているのでな。私とコースケ、キュービの三人で動く」

「なるほど。どういう風に動く?」

「キュービが前衛、私が中衛、後衛がコースケだな」

「そのこころは?」

「キュービは素早く、感覚が鋭い。ギズマと不意の遭遇をしても一撃でやられるということはあるまい?」

「ま、そうですね。そうじゃなきゃこの森に辿り着いてないんで」


 そう言ってキュービが肩を竦める。そうか、五体満足でこの黒き森に辿り着いているキュービはこの中で多分一番ギズマと戦って生き残っているんだよな。


「キュービがギズマと戦闘に入ったらすぐに私が援護に入る。近接戦闘なら私が一番強い」

「それはそうだな」


 この前もギズマを手玉に取って大型ナイフで解体してたもんな。


「で、この中で一番近接戦闘が苦手と思われるコースケを一番後ろに置く。強力な改良型クロスボウを素早く撃てるのも後衛向きだな」

「誤射だけはしないように気をつけるよ」


 改良型クロスボウを誤射したら洒落にならんからな。丈夫そうなシルフィのぴっちりスーツもこいつの貫通力は止められまい。

 各々の役割を確認したところでダナンから軽く訓示のようなものがあり、ギズマの撃破よりも各々の命を最優先とすること、可能であればボルトを回収すること、クロスボウが壊れた場合も同様、とはいえ死んでしまっては元も子もないので固執はしないようにとのことだった。

 既に空を飛べるハーピィ達による偵察が行われており、最大でこの里と森境の中ほどまで流入してきている可能性があるとのことだ。


「侵攻ペース早いな?」

「……思った以上だな。このペースだと、最悪今晩、遅くとも明日中には里に到達しそうだ。コースケが居なかったらと思うとゾッとするな」

「確かにそうですね。コースケが居なかったら今頃取るものも取りあえず森の奥に向かって行かなきゃならんところです」

「役に立ててよかったよ」


 この場には出撃する人々だけでなく、見送りに多くの難民達が訪れている。その中には身体の各部に癒えない傷を負った人や、子供、老人などもいる。俺の能力が彼らを過酷な逃避行から救えた、そう思うとなんとなく誇らしい気分になる。


「さて、ダナンの訓示も終わったようだ。我々も出るぞ」

「了解」

「あいよ。命大事に、で行きましょうや」


 シルフィの言葉に俺とキュービが頷きを返し、キュービを先頭にして森へと入る。さて、クロスボウはどれくらいの戦果をあげられるかな? 流石に何の役にも立たないということはないと思うけど、少し心配ではあるな。


 ☆★☆


 里を出て一時間くらい経った辺りでキュービが片手を挙げて立ち止まった。一瞬後ろにいる俺達に視線を向け、先を指差す。一見したところ指差す方向には何も見えなかったが、よくよく地面を見ると不自然に枯れ葉が除けられて土が露出している場所がある。

 キュービは俺達がギズマを認識したのを見て取ると、クロスボウを片手に保持したまま足元の石を拾い、土の露出した辺りに投げ込んだ。

 瞬間、土を巻き上げながらギズマの巨体が地面に飛び出してくる。あれが話に聞くギズマのアンブッシュ・タックルか。うん、あれは食らったらただじゃすまんね。軽トラックに撥ねられるようなもんだろ、あれ。


「私は回り込む、後退しながら攻撃を加えろ」

「アイアイマム」


 返事をしながらボルトのセットされた改良型クロスボウの照準をギズマに合わせる。


『GIIIII!?』


 俺が撃つ前にキュービの放ったクロスボウのボルトがギズマの首の付け根辺りに深く突き刺さった。ギズマも痛みを感じるのだろうか? 怯んで動きが止まる。


「ナイスショット!」


 後退するキュービに声をかけながら俺はギズマの真正面に陣取り、ボルトを放つ。改良型クロスボウから放たれたボルトは真正面からギズマに向かって飛び、その顔面のど真ん中に突き刺さった。いや、貫いた。

 矢羽が見えなくなるほど深くボルトが突き刺さり、ギズマがビクリとその巨体を震わせる。かなり効いてるな。


「おいコースケ! 真正面は危ないぞ!」

「知ってる」


 真正面に立つと突っ込んでくるっていうのは既に知っている情報だ。俺とて何の策も無しに真正面に立っているわけではない。


『GYAAAAAAAAAAAAA!!』


 最後の悪あがきなのか、ギズマが凄い速度でこちらに突っ込んでくる。ははは、所詮は本能でしか動かない虫畜生だな。


「ほい」


 俺はレンガブロックを真正面に置いた。奥行き、横幅、高さ1mのやつである。


 ドゴォン、と物凄い音が響いた。


「えげつねぇ」

「私の出る幕がなかったのだが……」


 前が見えねェ……状態になって絶命しているギズマを前にキュービとシルフィが呆れたような声を出す。うん、正直ここまで上手くいくとは思ってなかった。頭部の潰れたギズマの死体、というオブジェクトをインベントリに入れながらそう思う。


「いやぁ、本来こういうのはウッドスパイク先生に任せるんだが、この巨体を止められるかどうか怪しかったからなぁ」

「うっどすぱいくせんせい?」

「これ」


 前に作っておいた逆茂木を設置して見せる。逆茂木というのは鋭く削って尖らせた木材を地面に刺して並べた防御施設だ。とあるサバイバル系ゾンビゲーでは『先生』と敬称をつけられるほど頼りになる存在である。非人道兵器マキビシ的な強さを誇るサムシングなのでさもありなんといった感じだ。


「確かにこれでは止まるか怪しいな」

「ギズマ相手にこれじゃ刺さるかどうかも怪しいんじゃねぇか」

「金属製のスパイクじゃないとギズマ相手は難しそうだよな」


 つるはしを取り出し、レンガブロックを回収しておく。まぁ、逆茂木は後で防壁の外側に設置するつもりだけどね。アレは施設がなくても作れるので現在進行系で量産中だ。

 その後もレンガブロック戦法でガンガンとギズマを仕留めていく。キュービが発見し、俺と二人で先制攻撃。突っ込んでくるギズマをレンガブロックで迎撃し、仕留めきれなかった場合はシルフィが接近戦で即座に止めを刺す。

 レンガブロックで即死するギズマは全体の約半分くらいで、即死しなくてもあまりの衝撃で動きが止まっているのでシルフィは楽にギズマを仕留められていた。


「こんなに楽なギズマ狩りはしたことがない」

「不意に襲われない限り負ける気しねぇな」


 八匹目のギズマを仕留めたところでシルフィとキュービが呟く。ギズマにしてみれば手痛い攻撃をされて野郎ォぶっ殺してやるぅ、って必殺の体当たりをしたら目の前に滅茶苦茶頑丈な壁が現れるという悪夢。確かにえげつないかもしれない。


「はっはっは、えげつないやり口はまだまだあるぞ」


 時間があればエルフの里から少し離れたところにトラップ満載の迎撃拠点を作っても良かったんだけどな。現状でできそうな迎撃拠点は壁にトゲを生やして周りに深い空堀(底にはウッドスパイク先生を配備)くらいだけど。勿論迎撃拠点にはクロスボウを持った兵を大量に配備だ。拠点が破られた際の脱出用に空中通路か地下通路は絶対に要るな。ん? そう言えばこの能力で作ったブロックって重力に影響されるんだろうか? ちょっと試してみるか。


「どうしたんだ? 急に壁なんて作って」

「ちょっと実験を」


 木材ブロックを縦に二段積み、下のブロックを破壊してみる。


「あー、なるほどね。こういう感じかぁ」


 上のブロックは空中に静止していた。押しても引いてもビクともしない。


「キュービ、私は疲れているのかな。何か眼の前に変なものが見えるのだが」

「俺にも見えてるんで、多分正常っす」

「ははは、これは空中拠点が作れちゃうねぇ」


 問題は、俺が離れてもこのブロックが空中に在り続けられるかどうかだが。俺の能力に有効範囲があったりしたら、突如空中拠点が落下して崩壊なんてことが起こりかねない。とりあえず耐荷重などの設定があるかどうか試すために空中に静止している木材ブロックの横に別の木材ブロックやレンガブロックもくっつけて伸ばしてみる。


「うん、落ちないな」


 上に乗ってジャンプして踏みつけてみる。まるで大地そのもののような安心感。ピクリとも揺れない。これは空中拠点作成も視野に入ってきましたね。いや、空中拠点って作ることは出来ても何か地上と簡単に行き来する手段を作らないと良いことが殆ど無いんだけどさ。ワープゲート的なものか、空中を移動できる乗り物でも作らないとダメだな。


「すまんすまん、時間を取ったな。どうしたんだ、二人とも疲れた顔をして」

「いや、なんつーか……アイラのやつがお前にくっついて不条理不条理言ってた理由が痛感できたぜ」

「それわかるー」

「お前が言うな……コースケのやることにいちいち心を乱すのはやめよう、そう思っていてもなかなかうまくいかんな」


 実験も終わったので気を取り直してギズマ狩りを再開する。再開して三匹ほどレンガブロック戦法で倒した時のことだった。


「ん?」


 突然キュービが耳をピンと立ててあらぬ方向を向いた。キュービの向いた方向に俺も目を向けるが、特に何も見当たらないように思う。


「どうした?」

「ギズマの咆哮だ。一匹や二匹じゃねぇな」

「群れに当たった部隊がいるのかもしれん。確認に向かうぞ」

「了解、俺が先行しますわ」


 言うなりキュービが走り出す。おいおい、そんな無警戒に走って大丈夫なのかよと思ったがシルフィも何も言わないので俺も後を付いて走る。

 十分ほど走ると、程なくして破壊痕が目に入ってきた。そこそこの太さの木が何本も圧し折れている。間違いなくギズマの痕跡だろう。


「近いな」

「あっちですね」


 この辺りになると俺にも木が圧し折れる音やギズマの咆哮が聞こえてきた。そういえばあいつらは一体どうやって咆哮しているのだろうか? 声帯とかがあるとも思えないんだが。


「見えたぞ! 誤射に注意してまずは敵の注意を引きつけることに専念しろ!」

「わかりやした」

「了解」


 駆けつけた先には三匹のギズマがひしめいていた。その三匹のギズマと戦っているのはいずれも見覚えのない難民兵だ。一人は栗鼠系の獣人で、もう一人は下半身が大蛇のラミア、その尻尾の上に背負われてぐったりしているのはリザードマンだろうか。

 彼らは三匹のギズマに追われていた。恐らくリザードマンが負傷し、撤退しようとしたところで他のギズマを引っ掛けてしまったのだろう。いわゆるトレイン現象ってやつに近いんだろうな。栗鼠系の獣人は木を利用しながらギズマ達の気を引いて時間を稼いでいたようだ。


「俺は追われてる方のカバーに入る!」


 そう宣言して負傷者を運ぼうとしているラミアとそれを追うギズマの間にインターセプトする。


「あんた!?」

「俺は大丈夫だから下がれ!」


 早速突っ込んできたギズマとの間にレンガブロックを設置し、突進を防ぐ。すぐさま下がりながらレンガブロックを設置し、更に横にも設置して壁にする。コマンドジャンプで壁の上に登り、動きの止まっているギズマに照準、発射。


『GIIIIII!?』


 当たりどころが良かったのか、ビクリとギズマが硬直したので立て続けに改良型クロスボウでボルトを撃ち込んで仕留める。死んだらインベントリに入れられるようになるから生死の判断は楽だ。

 視線を他に向けると、シルフィがギズマの首筋にククリを打ち込んでもう一匹を仕留めたところだった。キュービと栗鼠獣人がクロスボウを撃ち込み続けている残りの一匹もかなり弱っているようだ。俺もレンガブロックの壁の上からボルトを撃ち込んで援護をする。


『GIEEEE……』


 三本ほどボルトを撃ち込んだところで最後のギズマも息絶えた。うん、クロスボウは十分ギズマに効くみたいだな。

 ギズマの回収は後回しにして、負傷者を抱えているラミアの元に急ぐ。彼女は少し離れた場所でリザードマンの介抱をしていた。見たところ、足をやられたらしい。血塗れの右足が不自然な方向に折れ曲がり、骨が突き出してしまっていた。


「開放骨折か……」


 幸いスプリントとライフポーションが手持ちにある。アイラもライフポーションの効果には太鼓判を押していたし、ここは是非じっけn――救護をするとしよう。


「治療をする。痛いと思うが我慢しろよ」

「ああ……」


 俺の言葉にリザードマンは静かに頷いた。うーん、爬虫類顔は表情が読めないし、汗もかかないみたいだからなんともやりづらいな。インベントリから飲料水を取り出し、まずは血塗れの患部を洗う。リザードマンは痛みに強いのか、呻くこともなく治療を受け容れている。


「んで、スプリントを……っと」


 スプリントを手に持って骨折したリザードマンの足を注視すると『使用する』というポップアップが出てきた。ポップアップを選択すると、身体が自動的に動いて淀みない手付きで添え木を当てて包帯を巻いていく。


「ちょ、ちょっと! 先に折れた骨を直さないと!」

「まぁまぁ」


 折れたままの足に添え木を当てて包帯を巻く俺にリザードマンを介抱していたラミアが声を上げる。そりゃそうだよね、俺もそう思います。でも、多分大丈夫だと思うよ。


「ぐっ!? おおっ!?」


 折れたリザードマンの足に包帯を巻き終えると、すぐさま折れた足が矯正されて真っ直ぐに直される。まるで折れた足が自分で正常な状態に戻ったみたいだ。有り体に言ってキモい。戻る際に痛みがあったのか、リザードマンが苦痛の声を漏らしたが、些細な問題だ。ははは。

 足が真っ直ぐになったらスプリントは砕けるようなエフェクトを残して消えた。うーん、不可思議。


「あ、足が勝手に真っ直ぐになった……」

「ちょっと特別な神聖魔法的な何かだよ、きっと。俺にもよくわからんけど」

「わかんないのかい!?」


 ラミアさんのツッコミが激しいが、軽く流してインベントリからライフポーションを取り出す。骨折ほどの重症ならスモールじゃなくてこっちの方が良いだろう。


「アイラの太鼓判つきの薬だ、さぁ飲め」

「ああ……」


 ライフポーションの栓を抜いて手渡すと、リザードマンは躊躇なくその中身を飲み干してみせた。


「味はどんな感じだ?」

「少し苦味があるな……むっ!?」

「ど、どうしたんだい?」

「痛みが消えた……」


 リザードマンはそう言ってすっくと立ち上がった。折れていた右足の調子を確かめるかのように何度か足を踏み直し、体重をかけたりしている。


「治ったようだ」

「えぇ!? あんなに酷い骨折だったんだよ!?」

「うむ……だが治ったようだ」


 リザードマンはそう言ってジャンプすらしてみせた。確かに治っているようだ。スプリントとライフポーションの効果高すぎない? ラミアさんが戦慄している間にシルフィ達もこっちに来た。


「怪我の様子は……大丈夫そうだな」

「ええっ!? 酷い骨折だったじゃないか! 一体どんな魔法を使ったんだい?」

「彼の治療とポーションで治った。ありがとう、助かった。あの傷では助かっても足を切断する事になっていたと思う」


 リザードマンが感情の見えづらい顔をしっかりと俺に向けて頭を下げた。


「ああ、助けになれてよかったよ」

「そんなに酷い傷だったのか?」

「酷いなんてもんじゃないよ! 骨が肉を突き破って外に出てたんだから!」

「……本当かよ?」


 栗鼠獣人の主張を聞いて傷を見ていなかったシルフィとキュービが困惑している。うん、実際にあの傷を見てないと信じられないよな。本人ピンピンしてジャンプしてるし。


「失った血液までは戻ってないかもしれないから、大事を見て撤退したほうが良いと思うぞ」

「そうだな……お前達は何匹仕留めた?」

「二匹です」

「今仕留めた分と我々と合わせて十三匹か……戦果としては十分だろう。一度里に戻るぞ」

「了解、撤収準備するよ」


 展開したレンガブロックとギズマの死体をインベントリに回収し、俺達は六人で警戒しながらエルフの里に戻った。帰り道に追加で二匹のギズマを仕留め、俺達の戦果は二チームで合わせて十五匹となるのだった。

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― 新着の感想 ―
空中に静止するのはさすがに世界観どうなってるの…と思いました。 そうなってくると壁が動かないのも重量とか固定させる仕組みがあるわけじゃないのか、と思いますし、 リアルな世界があってこそ能力が際立つの…
[気になる点] この世界も昼夜があるから自転によって空中ブロックはどうなるのか…
[一言] 物理法則さんはどうやら有給休暇中なようですね。
2022/10/11 20:53 退会済み
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