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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
259/435

第258話~出発前の顔合わせ~

明日4/23は最強宇宙船コミカライズ単行本の発売日! 買ってね!!!_(:3」∠)_(ストレート

 話し合いの結果、あちらでは量産型の魔銃を装備した戦列歩兵めいた兵科――魔銃兵を編成することになった。

 量産型の魔銃は既に五百丁が調達されており、弾丸三万発、魔晶石一千五百個、弾丸鋳造用の金型百個、中核部品である魔道尾栓百個が輸送用エアボードによってオミット大荒野の後方拠点やアーリヒブルグから運ばれてきているという。

 それらの物資をインベントリに収納し、北部へと向かって軍事拠点を作り、現地で志願兵を徴募して北部侵攻を跳ね返すだけの兵を育てるのが今回の俺の仕事だ。

 同行者は解放軍改めメリナード王国軍の精鋭兵五十名とハーピィ爆撃隊一小隊五名、そして護衛のグランデと――。


「よォ、久しぶりだねェ」

「お久しぶりっす」

「お久しぶりね」

「なるほど、信頼できる冒険者ってのはシュメル達だったか」


 シュメル、ベラ、トズメの鬼娘三人がダナンの手配した信頼できる冒険者というやつであった。

 シュメルは黒き森の頃から解放軍と行動を共にしていた赤い肌の鬼人族の女性で、頑丈で重い大金棒を小枝のように振り回して戦う剛の者だ。アーリヒブルグで解放軍から抜けて元の鞘である冒険者に戻ったが、その後も解放軍に協力して様々な任務を手伝ってくれている。

 ベラとトズメはシュメルがアーリヒブルグで冒険者稼業に戻ってからできた仲間で、ベラはシュメルと同じ赤い肌の鬼人族の女性冒険者、トズメは人間と同じ肌色の一つ目鬼人族――サイクロプス族の女性冒険者だ。それぞれ大斧と大槌を武器としていて、全員が以前俺が作ったミスリル合金製の武器を手にしている。


「私達じゃ不満かい?」

「どんな人かぶっちゃけ不安だったけど、その不安が一気になくなった。シュメル達なら間違いなく信頼できるからな」

「あはは、そりゃ信頼を裏切らないようにしなきゃいけないねェ」

「まぁ、コースケさんのことをちゃんと知っていたら裏切るとかありえないっすよね」

「万が一コースケをどうにかできても後が怖いわよね」

「わかる」


 俺をどうにかしたとしても、その後でシルフィやアイラ、グランデやハーピィさん達の壮絶な復讐を受けることは必至だ。実際それで今も大使館に籠もって一歩も出てこないクソ狐がいる。


「それで、今回は長期の護衛だってェ?」

「おう。北方でキナ臭い動きがあるから、その対策で軍事拠点をおっ立てて新兵の育成をしなきゃならん。その間の護衛だな」

「それってめっちゃ長くないっすか?」

「ワンチャン春になって敵が攻めてきてそれを押し返すまである」

「それは長いわね……」

「別に構わないだろォ? メシも宿もあっち持ちで、金も入る。危険も少ないんだから」


 シュメルの言葉にベラとトズメもまぁそうかと頷いている。結局のところ冒険者もメシを食って金を儲けるのが目的だ。地道に行商人の護衛で稼ぐのも、魔物を狩って素材で稼ぐのも、今回のシュメル達のように用心の護衛をして稼ぐのもなんでもアリである。気に入らなければ依頼を蹴ることもできるのだから。


「まぁ、あんまり退屈で依頼を途中で放棄したい場合は要相談で。代わりの信頼できる冒険者を用意してくれるならアリだから。その時点で報酬も払うし」

「そん時は相談するよォ。まぁ、アンタと一緒ならそうそう退屈はしそうにないけどねェ」

「それは確かにそうっすね。またエアボード運転したいっす」

「事故らせるんじゃないわよ」

「そうだぞ。事故らせたら前は活用できなかったトラウマものの恥ずかしい格好をさせてやるからな」

「ぐっ……だ、大丈夫っす!」


 ベラは一瞬怯んだが、エアボードを運転する魅力には抗えないらしい。一体エアボードの何が彼女をそこまで駆り立てるのか。これがわからない。君のために作った先っぽしか隠れてないマイクロビキニや無駄にスカートが短くてピチピチで露出の多い魔法少女服が火を噴かないことを祈ろうか。


「それで、あれはなんだい?」


 シュメルの視線の先には十七人、十六人、十七人の参列に並んで行進している五十人の精鋭兵の姿があった。全員が金属製のヘルメットや金属製の胸甲などを装備した軽装備で、揃いの剣と銃剣、一丁の量産型魔銃を装備している。今は指揮官の号令に従って一糸乱れぬ行進を続けている最中だ。


「向こうで訓練して育成する予定の魔銃兵だな。王国軍の精鋭兵を再調練して精鋭の魔銃兵に促成している所だ」


 シュメル達が現れたこの場所はメリネスブルグの東に徒歩一時間半くらいの場所にあるメリナード王国軍の訓練場である。訓練場と言ってもただのだだっ広い荒野のような場所だが。


「あんなの役に立つんすか?」

「あそこに標的が立ててあるの見えるか?」


 俺は遥か200m先に沢山立ててある標的代わりの大量の木の板を指差してみせた。軽く百枚以上の木の板が立ててあるので、見ればすぐに分かるだろう。


「見えるけど、あれがどうしたの?」

「今始まる。見てろ」


 指揮官の号令で精鋭兵達が三列の横隊を維持したまま標的から200mの距離で静止する。


「構え!」


 最前列の十七名が一斉に量産型魔銃を構える。


「撃てぇッ!」


 ズドドドドドーン、と十七丁の魔銃が一斉に火を噴き、200m先の木の板の的が大穴を空けながら吹き飛んでいく。


「構え、撃てぇ!」


 発砲した第一列が後ろに下がって第二列の十六名が射撃し、更に木の板の標的が吹き飛ぶ。


「構え、撃てぇ!」


 今度は第二列が後ろに下がって第三列の十七名が発砲する。この間に最初に発砲した第一列のリロードは完了していた。地球の戦列歩兵が使っていた前装式のマスケット銃とは違い、この世界で作り出された魔銃は火薬を込める必要がない。銃口から鉛の弾丸を込めて槊杖かるかで一番奥まで押し込めばそれでリロードが完了するので、地球のマスケット銃よりもリロードが早いのだ。


「構え、撃てぇ!」


 その後も射撃が続き、射撃が三巡する前に百枚の標的は全て大穴を空けて吹き飛び、後ろに倒れてしまった。中には複数の弾丸が同時に着弾して粉々に砕けてしまった的もある。

 200m先にあった百枚以上の的は五十人の精鋭魔銃兵の射撃によって、凡そ三十秒弱でその全てが破壊されてしまった。


「どう思う?」

「とんでもないっすね」

「ちなみに実際の有効射程は今の倍くらいある」

「冗談でしょ?」

「それが冗談じゃないんだなぁ」


 この世界における弓の射程距離は一般的には長くとも100m程度。魔法の場合は聖王国の虎の子、魔道士部隊が用いる合唱魔法でも最大で150mくらいとされている。この世界では魔法の影響なのか弓などの投射兵器の発達が遅れ気味で、200mもの距離を飛ばしてくる投射兵器はまず存在しない。今回は200mで撃ったが、量産型魔銃の有効射程は凡そ500m前後である。量産型魔銃は試作型や先行量産型に比べて弾丸を飛ばす爆発魔法の魔力効率が向上し、魔力を補給しなくても連続で五十発までの射撃が可能になった。反動も少しマイルドにり、銃剣を取り付ける着剣装置装も装備され、射撃精度も試作型魔銃に比べて若干向上している。

 つまり、試作型や先行量産型よりも全体的にスペックアップしている。こういう軍用兵器に関して試作型とか先行量産型のほうが量産型よりも性能が高いという誤解をしている人が多いが、実際には量産型のほうが性能が良いものが殆どだ。何故なら、量産型というのは試作型や先行量産型の運用で洗い出された問題点を解決し、機能性を洗練した決定版と言える製品だからである。

 そりゃ一世代前の兵器と比べれば試作兵器が強いという可能性はあると思うけどね。うん。


「この武器を装備した魔銃兵を三百から五百人くらい育てる予定なんだ」

「ははァ……そんなことあたし達に話して良いのかい?」

「俺の護衛をするなら絶対に知ることになるしな。まぁ、おおっぴらに言いふらさないようにしてくれりゃ良いよ」


 射程400mの強力な投射兵器で武装した少数精鋭の軍なんて言っても殆どの人が具体的にどういうものなのか想像もできないだろう。発砲音を爆発魔法か何かの射撃演習だと考えてとんでもない数の魔道士団に違いない、とか思われるのが関の山だ。


「出発は一週間後。荷物は俺が例の方法で運ぶから、多くても構わないぞ。向こうでの宿はー……まぁ、どっかの街で取るか俺が作るかだな。どっちにしろ寒空の下で野宿ってことにはしないから安心してくれ」

「それは信頼してるから大丈夫っす」

「そうね。コースケさんと一緒ならどこに行っても快適に過ごせそうだわ」

「メシにも期待してるよォ?」

「はいはい、善処するよ」


 軍事拠点の設計をどんな感じにするか考えておかないとなぁ。物資の補充に関しては俺がいるから問題無いが、軍事拠点というのは軍人だけ――この場合で言うと兵士だけ居れば回るというものではない。軍というのは単体で完結した組織でないといけないのだ。つまり、飯を作る人や洗濯をする人、掃除をする人や物資やお金の管理をする人、その他諸々様々な人手が必要なのである。

 物資やお金の管理をする人員についてはメルティがちゃんと用意してくれているとは思うが……用意してくれているよな? まさかそんな人員まで向こうで俺が雇えとか言わないよな?

 不安になってきた。後で絶対に確認しておこう。本当に五十人の精鋭兵とグランデ、シュメル達だけ連れて後は任せたとか言われたら死ぬ。俺が心労で死ぬ。


「なんか急に顔が青くなったっすね」

「どうしたのかしら?」

「さァ?」


 鬼娘三人の暢気な会話を聞きながら俺は悪寒に身を震わせるのであった。

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― 新着の感想 ―
Problem: Tozume was first introduced as blue skinned. Now she has normal skin
[気になる点] 反動も少しマイルドにり
[良い点] 主人公がドMすぎるけど、それを差し引いても面白い。 [一言] 魔銃が敵に模倣されたら普通にハーピィ部隊が撃ち落されるんじゃ。
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