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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
異世界の森でサバイバル!
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第024話~これは基本テクニックです(真顔)~

歯医者で遅れました!!!_(:3」∠)_

 昨夜のシルフィはとても甘えてきた。まるで子猫ちゃんのようだった。想像して欲しい、普段はクールで暴力的な雰囲気すら撒き散らしている女性が、蕩けるような声音で甘えてくる様を。いやぁ、俺は今日突然爆発して死ぬかもしれないな。

 そしていつもどおりの朝である。


「シルフィ? シルフィさーん?」

「……」


 目覚めたシルフィは暫くぽけーっと呆けた後、急に顔を茹で蛸のように真赤にして固まった。そして声をかけたら両手で顔を覆ってベッドの上で丸くなってしまった。手で揺すっても声をかけても無反応である。どうやら彼女は暫く貝になりたいようなので、そっとしておくことにする。

 幸い、裏庭の水瓶にはまだ十分に水が残っていたのでそれで身体を清めてさっぱりとすることが出来た。ついでに夜の間に作っておいたアイテムや資材を回収する。クロスボウの量産は終わったから、後はボルトの量産だな。調合台の資材も生産が終わったから、後は組み上げるだけだ。

 改良型作業台と鍛冶施設を回収して家の中に戻るが、シルフィはまだ居間に出てきていなかった。まだ恥ずかしさのあまり貝になっているのだろうか? あまりちょっかいをかけると手痛い反撃を食らいそうな予感がするので、ここは大人しく朝食を作ることにする。

 うーん、何を作るか。正直言って、粉から作る料理のレパートリーはあまり多くないんだよな……ああ、そうだ。お好み焼きっぽいものでもでっち上げるか。粉とギャベジ、肉があればそれっぽいものをでっち上げることはできるだろう。出汁はきのこから取るしかないから少し味が物足りないかな? しまったな、トマトからソースを作るには時間が足りん。千切りにしたオニールも入れて、リザーフの塩漬け肉もちょっと多めに入れて誤魔化そう。

 そうやってお好み焼きもどきのタネを作っていると、ヒタヒタと足音を殺してシルフィが寝室から出てきた。いくら足音を殺しても常に寝室の入り口を視界の隅に入れるように意識していればバレバレである。


「……!!」


 目が合うと、シルフィは物凄い勢いで顔を逸らして裏庭へと歩き去ってしまった。勿論、顔は相変わらず真っ赤である。


「なんだあれ可愛い」


 夜になってイチャイチャモードになるとシルフィは日頃のストレスから解放されでもするのか、物凄く羽目を外す。それはもう、昼間のシルフィと夜のシルフィは別人ではないかと思うくらいだ。シルフィは本来、エルフとしては子供にも等しい年齢である。心体は二十歳くらいで成熟すると本人は言っていたが、やはりまだエルフとしては『幼い』のだろう。

 だが、彼女は強くあらねばならないと、そう己を律し、強者としての使命を課して今まで生きてきたわけだ。俺と出会うまでは。恐らくはその箍が緩むんだろうな、夜になると。常時気を張っていられる人間などいるわけがない。彼女は人間でなくエルフだけど。

 で、朝になると強者を演じる意識が復活してきて、ある意味で正気に戻るわけだ。そして羞恥心で悶える羽目になる。素晴らしい、いつまでもそんなシルフィでいてほしいな!


「おはよう」

「ああ、おはよう」


 そんなことを考えながらお好み焼きもどきを焼いていると、シルフィが中庭から戻ってきた。まだ顔は赤いが、自分の中で心の整理をなんとかつけてきたようである。単純に水を被って頭が冷えただけかもしれないが。


「コースケ」

「何か用かな?」

「昨晩のことについては何も言わないでくれ」

「ふむ……」


 別に恥ずかしがることじゃない、俺とシルフィの仲じゃないか、などと言ってシルフィに今後気にしないように言うのは簡単だ。家の中や二人きりの時は好きなだけ甘えれば良いじゃないか、俺は寧ろ嬉しいよ、などと言って甘えることに対する抵抗心を削ぐことも可能だろう。うん。


「わかった」


 俺はそれだけ言ってこの場をやり過ごすことにした。恥ずかしがるシルフィの姿はできるだけ長く楽しみたいじゃないか。ははは。


 ☆★☆


 朝食を終えた俺達は(ちなみにお好み焼きもどきはそこそこ食える味になっていた)さっさと家を出て、防壁へと向かった。防壁近くでは既にダナン達が集まっており、里周辺の地形図を描いた木の板をテーブルに置いて何やら話し合っているようである。

 ちなみにシルフィは既に完全復活している。家を出る前になんか『むんっ!』って感じで両手で拳を作って気合を入れていた。可愛くて禿げるかと思った。


「おはよう、諸君」

「おはようございます、姫殿下。コースケも」

「おはよう」


 簡単に挨拶を交わし、改良型クロスボウを一台テーブルの上に置く。


「これは改良型のクロスボウで――」


 と言った瞬間にはジャギラとアイラが改良型クロスボウへと手を伸ばしていた。同時に改良型クロスボウに手を触れた二人の視線が交わり、火花が散る。


「はい、まだあるから喧嘩しないように」


 仕方がないのでもう二台強化クロスボウを出し、三台中二台をジャギラとアイラに渡す。もう一台はテーブルの中央に置いた。そして改良型クロスボウの性能を大まかに説明する。より強力だが、重く、弓は堅い。体力が十分にある人員でないと、すぐにバテるだろうとも言っておく。


「なるほど。しかしより高威力というのは魅力だ」

「少数でいいから配備したいですね」

「配備といえば、普通のクロスボウの量産は完了したぞ。納品は出来るが、今三〇〇台も渡しても困るよな?」

「そうですね。訓練用に五〇台だけ貰えますか?」

「了解」


 インベントリからクロスボウをどんどん出していく。まぁ、クロスボウだけだけあっても今はボルトが足りないだろうけどね。ついでにボルトも今ある分は渡しておく。


「これで訓練はできそうですね」

「うむ、早速始めるとしよう」

「私とコースケは鉄鉱石を集めに行く」

「私もついていく」

「ジャギラとピルナも随行しろ。ピルナは上空からギズマの痕跡を探せ」

「「了解」」


 ネコ科獣人のジャギラとハーピィのピルナ――斥候の二人が俺達に同行するようだ。アイラは何か興味深いものが見られるのではないかと思ってのことだろう。


「アイラはここで指揮を取ったり準備をしたりとかそういう仕事はないのか?」

「ない。今は病人や怪我人もいないから」


 ダナンやメルティ、キュービにも視線を向けてみるがそれぞれ問題ない、といった表情や態度を返してくる。まぁ、普段のアイラの様子を見るに誰かに指示を出してたりするのに向いているとは思えないけど。大体にして研究者肌な感じだもんな、アイラは。

 人員の振り分けも決まったので、さっさと動き出すことにする。俺とシルフィ、アイラ、それとジャギラとピルナの斥候コンビは鉄の確保とギズマに対する哨戒。哨戒に関しては当然俺達だけでなく、難民の中で身軽で足の早いものを二人一組にして各方面へと放っている。キュービも哨戒に回るらしい。

 ダナンとゲルダ、ウォーグはクロスボウを用いて戦える難民達の訓練をするそうだ。一日訓練すれば、とりあえずギズマに当てるのは問題ないレベルにはなるだろうとのこと。

 メルティは防衛線に備えて物資の確保、保存食の作成などに奔走するらしい。明日はそっち方面を手伝うように念を押されてしまった。実に憂鬱である。

 それで、この前の渓流へと移動中なのだが。


「何故俺がアイラを背負うことに?」

「私が背負うわけにはいくまい。斥候の二人は周辺警戒をしなければならないしな」


 アイラは小柄だしさして重くもないので背負うのは問題ないんだが、微妙に柔らかい感触が背中やら手やらに伝わってきて俺として落ち着かない。本人は特に気にしていないようだから、俺も鋼の意志で頑張ろうと思う。


「乗り心地は悪くない……けど何かヘン」


 耳元でアイラが何かぶつぶつと言っている。うん、それは多分歩幅と移動距離が合ってないからだと思う。自分で歩くのに合わせてコマンドアクションで前進すると楽ちんなんですよ。

  あと、昨日取った俊足と強靭な心肺能力スキルのおかげなのか身体が妙に軽い気がする。歩いてても疲れにくいし。

 ジャギラとピルナが斥候として周辺警戒を担ってくれたおかげで、かなりのハイペースで移動を続けることが出来た。この前来た時の半分くらいしか時間がかかってないんじゃないだろうか?


「では、私は周辺の警戒をします」

「ああ、もし獲物が居たら狩ってきてくれ。コースケならどんな獲物でも持ち帰れるからな。我々は上流に移動しながら採掘を行うから注意しろ」

「了解、この新型の威力を試してきますよ」


 ジャギラはそう言ってニカッと快活な笑みを浮かべると、強化型クロスボウを手に森の奥へと消えていった。クロスボウの何が彼女をあそこまで駆り立てるのか……コレガワカラナイ。


「ジャギラは斥候なんですが、弓の腕がからきしで……だから弓の扱いが下手な自分でも正確に強い矢を放つことが出来るクロスボウがお気に入りなんです」


 不思議そうにジャギラを見送る俺の視線に気がついたのか、ピルナがジャギラの奇行を解説してくれた。なるほど、斥候だからって弓を使えなきゃいけないってわけじゃないだろうが、確かに斥候といえば弓ってイメージも無くはない。


「クロスボウのように革新的で、私にも使えるものって無いですか?」


 ピルナがじっと俺の顔を見つめてくる。うーん、ハーピィでも使える画期的なものか……爆弾とか、毒ガス弾とか? 火炎瓶とかでもいいのかね。


「考えつかないこともないけど、今は作れそうにないな」

「それは残念……姫殿下、私も偵察に行ってきます」

「気をつけていけ」

「はっ」


 ハーピィのピルナも空に舞い上がっていく。ぶわっと風が頬を叩いていったのだが、あの翼でここまでの風が起きるとも思えない。恐らく、魔法的な力も作用してるんだろうな。


「さて……掘るか」

「ああ、存分にやれ」


 アイラは無言で俺をぼーっと見ている。大きなお目々が半開きで、なんかジト目で見られている気分だ。眠いんだろうか?

 俺はとりあえず鋼鉄のつるはしを取り出し、手頃なサイズの岩を叩き壊しまくった。岩を壊すと石と鉄、運が良ければ何かしらの宝石が手に入るのだ。そして手頃な岩が無くなったら、次は川底の砂をスコップで浚いまくる。ついでに川底の石もストレージに入れていく。あまりやりすぎると生態系を壊してしまいそうなので、これは程々にする。水冷たいし。

 そうやって上流に川を遡っていくと、岩壁に挟まれた渓谷のような地形になってきた。


「よし、ガンガン掘るぞ」


 こういう地形を見ると整地したくなってくる。別に更地にしてしまっても構わんのだろう?


「多分大丈夫だと思うが……安全第一でやれよ。崩落して生き埋めになったら助からんぞ」

「それは確かに」


 岩が崩れてきて潰されたらいくらなんでも死ぬだろう。もしかしたら死んでもリスポーン出来たりするのかもしれないが、試す気にはならないな。

 そういうわけで、落盤に気をつけながら岩壁を掘っていく。この岩壁には鉄だけでなく、少量ながら銀や銅も含まれているようで、石、鉄、宝石の他に銅鉱石や銀鉱石も手に入る。これは良い採掘ポイント見つけた。今度から採掘に来る場合はここをメインにしよう。まぁ、銅や銀を何に利用するのかはちょっと考えないといけないけどな。うーん、何に使えば良いだろうか? 確か銅は合金にすれば青銅とか真鍮になるんだよな。弾丸の材料としても使われてた気がする。被覆としてだっけ? よく覚えてないな。真鍮は銃弾の薬莢にも使われてたよな。青銅は日常生活であまり見かけた記憶がない。銅は電線とか配線関係、あとは給湯器のパイプとか、調理器具くらいかな?

 銀は装飾品以外だと食器、銅線と同じく電子基板とかの伝導体として使われる、くらいしか想像がつかないな。魔法的な効果が期待できるなら、寧ろアイラとかエルフ達のほうが使い途があるのかもしれない。

 そしてこの採掘時間を利用して調合台のクラフトを行なっている。何が作れるのか楽しみである。


「これ、保管しておいて」

「あいよ」


 アイラは暫く俺の採掘作業を見学していたが、やがて飽きたのか採掘現場の周辺で草やら花やら根っこやらを採取しては俺のところに運んできていた。シャベルと籐製の籠を貸してやったら嬉々として採取に励んでいる。


「なぁ、さっきからアイラが摘んできてるのは何なんだ?」

「多分薬草や毒草の類だろう。アイラは錬金術も修めているからな。難民達の怪我や病気を癒やすのに欠かせない存在だ」

「なるほど」


 インベントリを確認してみると、確かにただの草じゃなくて薬草や毒草に分類されているアイテムが確認できた。後で分けてもらおうかな。

 暫く無心で採掘を続ける。渓谷の川縁に人が立って歩けるくらいの岩窟が延々と続いてるみたいな感じになってるけど、これやっぱ危ないな? 登って上から採掘したほうが良いのでは無いだろうか。


「それはそうかもしれないが、どうやって上に登るんだ?」

「私に良い考えがある」


 木材ブロックの在庫を確認する。うん、十分な量があるな。


「こうしてこう、そしてほいっほいっ」


 俺のコマンドジャンプはその場で軽く2mほど垂直にジャンプすることが可能だ。そして、建材系ブロックは最長で6から7メートルほど先にまで設置可能である。もうお分かりですね?


 ジャンプして足元に木材ブロックを設置する。

 ジャンプしてその木材ブロックの上に木材ブロックを設置する。

 ジャンプして更にその木材ブロックの上に木材ブロックを設置する。


「……」


 口を開けて絶句するシルフィ。


「不条理」


 久しぶりにアイラの不条理コールが飛び出す。そんなことを言われても困る。これはブロックが設置可能なそっち系のゲームでは基本テクニックみたいなものだし。


「上がったのは良いが、どうやって降りるんだ、それは」

「梯子を掛けるか、こうする」


 俺は斧を取り出し、足元の木材ブロックを破壊した。その下も、その更に下も破壊する。


「ね? 簡単でしょ?」

「頭がおかしくなりそうだ」

「理解するのを脳が拒否している」


 シルフィがこめかみに手をやって唸り、アイラの大きな目から光が失われる。そんなに不条理だろうか?


「それを使えば城壁など上り放題ではないか」

「まぁ、そうだな」


 ぶっちゃけ城壁みたいな防御設備に対してはもっと有効で致命的な手段があるんだが、わざわざここで言うこともない。その時が来たら度肝を抜いてやろう。


 ☆★☆


 そういうわけで、俺は木材ブロックで足場を作りながら渓谷の採掘――というか拡張作業を続けた。俺のつるはしが渓谷の岩壁を削り、どんどん渓谷が広くなっていく。


「コースケ、そろそろ十分な量が集まったのではないか?」

「ん? あぁ、そう言われれば」


 いつの間にか目的が採掘から整地に切り替わってしまっていた。うん、まぁよくあることだよネ。気がつけばインベントリの中には大量の鉄鉱石、銅鉱石、銀鉱石、石、宝石の原石、ミスリル鉱石が集まっていた。

 ん? ミスリル鉱石?


「シルフィ、なんかミスリル鉱石があるんだけど」

「……」


 シルフィは俺の申告を聞いて額に手を当て、天を仰いだ。


「見せて。見せろ。はやく」

「あっはい」


 物凄い圧力でアイラが迫ってきた。なんだか怖いのでミスリル鉱石を一個取り出して手渡す。


「……間違いなくミスリル鉱石。純度も高い」

「……コースケ、どれくらいあるんだ?」

「それを入れて十三個だな」


 鉄鉱石が一五〇〇くらい、銅鉱石が五〇〇くらい、銀鉱石が二〇〇くらい、それに対してミスリル鉱石が十三。採掘量はかなり少ないようだ。


「精錬次第だけど、これが十三個あれば少なくとも剣を二本は打てる」

「……コースケ、ミスリルの事は誰にも話すな。良いな?」

「お、おう」


 なんかエラいものだったらしい。ファンタジーではよく聞く魔法の金属だが、この世界では物凄く価値が高いのだろうか? 俺としては何をクラフトできるのかってことが気になって仕方ないんだが。


「それじゃあインベントリにしまっておくよ」


 俺が手を差し出すと、アイラはミスリル鉱石を俺の手のひらに置いた。置いたんだが。


「……?」


 アイラが手を離さない。軽く握って引っ張ってみるが、手を離さない。


「欲しいのか?」

「……」


 アイラの目がキラキラと輝く。ま、眩しい……! いや、眩しくないけど眩しい。チラリとシルフィを見ると、彼女は溜息を吐きながら頷いた。


「じゃあ、やるよそれ」

「……!!」


 アイラが声にならない歓声を上げ、ミスリル鉱石を頭上に掲げながらくるくると踊る。余程嬉しかったらしい。


「凄い喜びようだな」

「魔法使いで錬金術師のアイラにとってはいくらでも使い途のあるものだろうからな……アイラはよく働いてくれているし」


 アイラの喜びようにシルフィが苦笑いを零す。今のシルフィがアイラに給金を出せているとは思えないので、たまには良い思いをさせてやらないと、と思っているところもあるんだろう。多分。

 採掘を切り上げ、渓谷の足場を撤去し終えた辺りでジャギラとピルナが合流してきた。ピルナは手ぶらだったが、ジャギラは鹿っぽい動物を仕留めてきていた。確かヤッキとかいったかな? 結構な大物だ。


「へへっ、この新型はすごいな! 三〇步以上離れた位置から一撃で仕留められたよ」


 ヤッキの首の真横に矢傷と刀傷があった。恐らくクロスボウの一矢で頚椎を破壊し、倒れたところで駆け寄って短剣で仕留めたんだろう。凄いな。俺なら胴を撃っちゃうね。

 木材ブロックでヤッキを吊るす柱を作り、ロープで吊ってシルフィとジャギラが二人がかりでヤッキの内臓を抜く。そして川にドボン。


「内臓はここで食べてしまおう。コースケ、火の用意をしておいてくれ」

「アイアイマム」


 シルフィ達が内臓の処理を始めたのを横目に見ながら火を熾す準備をする。クラフトメニューにファイアプレイスでもないかなー、と思って見てみる。


・簡易かまど――:石×20


 お誂え向きのものがあるじゃないの。というわけで早速クラフトして簡易かまどを設置する。


「お、割と立派」

「……いつの間にそんなものを?」

「コースケのやることにいちいち驚いていたら疲れる」


 いつの間にか現れた意外と立派なかまどを見てピルナが驚き、それを見たアイラが身もふたもないことを言う。俺だって別に積極的に驚かそうと思って――ないわけでもないけどさ!


「さぁ、昼食にしよう」


 モツの下処理を終えたシルフィ達が戻ってきたので、簡易かまどに火を入れてモツを焼く。モツと言っても、すぐに焼いて食べられるようなものだけにしたので主に食べるのはハツとレバー、あとはタンだけだ。

 インベントリに入れておいた塩を振り、摩り下ろしたガリケを薬味にして頂いた。とても美味しゅうございます。それとお弁当に持ってきたお好み焼きもどきを四人で分けて食べる。

 ちなみに、ピルナとジャギラは焼き締めたパンや干し肉を持ってきていたが、アイラは何も持ってきていなかった。


「すっかり失念していた」

「気をつけろよ……ひもじいのは辛いぞ」

「コースケがなんとかしてくれるような気がした」

「お前ね、俺は何もないところから食い物を生み出せる奇跡なんて使えないんだぞ」

「そう?」


 本当は出来るんじゃないか? みたいな視線を向けられても困る。できないからな。


「コースケならやりかねないのがな……」

「よくわからないものをポンポン出すよな、お前」


 シルフィとジャギラまでそんなことを言う。ピルナは無言でコクコクと頷きながらヤッキのレバーを口に運んでいた。なんでも好物らしい。


「勘違いしないで欲しいからはっきり言うけど、無理だからな。俺の能力はそこにあるものを色々なものに作り変えるものだから。無から有を生み出す能力じゃないから」


 必死に説明するが、みんなはあーはいはいみたいに適当な返事を返してきた。解せぬ。

 その後、昼食を終えた俺達は川で冷やしたヤッキを回収し、エルフの里へと帰還することにした。

 そして帰りも俺はアイラを背負って歩くことになった。解せぬ……まぁいいけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 青銅は10円玉に使われてます。 真鍮は5円玉に使われてます。 100円玉と50円玉は白銅が使われてます。
2020/04/04 00:22 退会済み
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