表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
224/435

第223話~悪魔と魔女に挟まれて~

「コースケさんとグランデのおかげでドラゴニス山岳王国との交渉は上手くまとまりそうです。ただ、もう少し詳しく話を聞きたい部分もあるという話でしたので、お願いしますね」


 いつもの籐製の長椅子で俺の横に座ったメルティがにこにこしながら俺にそう言う。俺としてはそんなに機嫌の良さそうな笑顔でメルティに頼まれてしまうと、どうにも断れない。


「事前に予定を組んでもらえれば構わない。ただ、グランデは気が向いたらってことで頼むぞ。あんまり強要はしたくないんだ」

「はい、承知しました」


 ドラゴニス山岳王国御一行との拝謁というか会談を終えたその夜、食後ののんびりタイムにおいてメルティはとても機嫌が良さそうであった。俺とグランデの行動がメルティの機嫌が良くなる一助となったのなら幸いである。


「それにしても思わぬところで思わぬ縁が結ばれたものだな。ドラゴニス山岳王国は我々を全面的に支援するそうだ。その動きに呼応する諸外国もあるだろう。ドラゴニス山岳王国の動き次第では聖王国の西側に反聖王国の諸国連合が結成されることになるかもしれん。ことによっては思ったよりも簡単に聖王国との講和を達成することができるかもしれないな」


 俺を挟んでメルティと反対側に座ったシルフィも実に上機嫌である。近いうちに聖王国との会談に臨む予定であったシルフィとしては、ドラゴニス山岳王国という聖王国や帝国も一目置く国の助力を得られたというのはまさに心強い味方を得たような気分なのだろう。


「門外漢の俺が言うのもアレだが、足元を掬われないようにな。いくら向こうが俺達に、というか俺とグランデに友好的でも、相手は古い歴史を持つ王国だ。自分達だけが損を被るような真似はしないだろうし、必要とあらばメリナード王国を見捨てることだってあるだろう。あっちにしてみれば俺とグランデの安全さえ確保できれば良いんだろうし」


 国家と国家の間で真の友情というものは育まれることはないとかなんとか、そんな感じの言葉を聞いた覚えがある。真の友情じゃなくて真の味方だっけか? まぁ、ニュアンスは理解できる。

 どんなに友好的に見えても、国家である以上はその行動は国家の利益を中心として動いているということだ。つまり、国家としての利害が対立すれば昨日の友は今日の敵に変わりかねない。

 そういう意味では、メリナード王国とドラゴニス山岳王国との間で争いの火種になりかねないのは俺とグランデの存在に他ならないだろうな。俺達は両国を繋ぐ架け橋であると同時に、両国が争う原因となる火種でもあるのだ。

 今は俺とグランデが――というか俺が解放軍に肩入れしているのもあって、ドラゴニス山岳王国は解放軍と新たなメリナード王国に対する全面的な支援を表明することとなった。これは俺と俺に寄り添おうとするグランデの意思を尊重してのことだろう。

 しかし、彼らが方針を翻して力づくにでも俺をグランデをその手中に収める、という選択肢を取った場合、俺達と彼らは即座に戦争状態に突入することになる。まぁ、戦いになったところで負けるとは到底思っていないが。もし彼らの飛竜兵や竜騎兵が襲いかかってきたら12.7mm口径の重機関銃が盛大に火を噴くことになるだろう。

 鉄や鋼、それに皮革の資源については先日の聖王国軍から接収した武具によって大変潤沢な状態になったので、俺は来たるべき時に備えて密かに武器弾薬を量産中なのである……と言っても、現状では7.62mm口径の軽機関銃でもオーバーキル気味なので、12.7mm口径の重機関銃を量産したところでどの程度出番があるかは甚だ疑問だったりするのだが。


「その辺りは私達も弁えているさ。何にせよべったりと頼り切りになるのも国家として健全な形とは言えないし、頼るにしても節度を持ってだな」

「コースケさんのおかげで食料と資金、資材には事欠きませんからね。主に外交的な助力を請う形になるでしょう。いずれはコースケさんに依存している部分も是正していかなければなりませんけど」

「うん、それはそうなんだろうな」


 俺の力によって齎される恩恵が無ければ今のメリナード王国が立ち行かなくなるのは火を見るよりも明らかである。国家を運営するための食料と資金、そして資材がたった一人の人間の手によって賄われている状態というのは、それもまた国家として不健全な有様だ。そのような状態は一刻も早く是正されるべきなのだろう。


「つってもね。そうなると俺のやることが無くなっちゃって退屈になりそうだけど」

「そうですか? 退屈になっている暇なんて無いと思いますけど……」

「そうだな」


 右からメルティがニヤニヤとした視線を、左からはシルフィがじっとりとした視線を俺に向けてくる。おおう……これはもしや地雷を踏んでしまったのではないだろうか?


「ドリアーダ姫殿下からお話があったんですよね……コースケさんはどうしたいんですか?」

「最近母上と大層仲が良いそうだな? 母上はいつもコースケの話をして、コースケがどうしているのか知りたがっているという話だぞ?」

「あ、あー……うん。その件ね」


 二人の視線を頬に感じながら天井に視線を向ける。どうしたいのかと聞かれても割と困る。俺としてはこれ以上お相手を増やすのはちょっと……と言いたいのだが、この世界の結婚観的にはなぁ。


「多分俺の意思が重要なんだよな?」

「はい。とはいえ、はっきりとコースケさんとお付き合いをしたいと言ってきているのはドリアーダ姫殿下だけですが」

「そっかー……二人としてはどうなんだ? って聞くのもなぁ」


 結局のところ、二人に意見を聞いたところで最終的に判断するのは俺だ。こうして二人に聞くのも結局は二人にそう言われたから、という自分への言い訳に使いたいだけなのだろう。それはあまりにも卑怯なのではなかろうか?


「うーーーーーーん……」

「コースケさんは本当に女性関係には消極的ですよねぇ」

「幼い頃から培った倫理観というか結婚観というのものはなかなか覆せるものではないだろうからな」


 天井を見上げて悩む俺の横で二人が何やら話し合っているが、悩んでいる俺の耳を素通りしていってあまり頭に入ってこない。

 まぁ、なんだ。ズルズルとシルフィだけでなくアイラ、ハーピィさん達、エレン、メルティ、グランデと手を出してきたのだから、今更二人増えたところで……ああいや、アマーリエさんとベルタさんもだったか。そうなると四人か。ハーピィさん達だけで二十人近くもいるのだから、今更四人増えたところでって気はしないでもない。でもそういう問題じゃないよなぁ。


「とりあえず、お付き合いからで。何にせよ、あちらからの好意はともかくとして俺からの感情が追いついてない。まずはじっくりと話したり、一緒に過ごしたりしてお互いに関係を深めていきたいと思うんだ」

「それも道理ですね。ドリアーダ姫殿下もセラフィータ様も時間はいくらでもあるのですし」

「母上もまぁ、そうだな」

「というかどうなの? 俺がセラフィータさんとそういう関係になるのは」

「長命種だと無くはない話だな。まさか私がそういう体験をする羽目になるとは思わなかったが」


 シルフィがとても複雑そうな顔をしている。


「母娘で好みも似るんですかねぇ」

「そういうのじゃないんじゃないかな……というか、俺の能力が関係している疑惑があるんだが」

「能力?」

「ああ、実はな……」


 俺はアチーブメントと異性に対する攻撃力の項目について説明した。その話を聞いた二人が同じように首を傾げてみせる。


「関係無いのではないか? その異性に対する攻撃力というのが本当に魅了の魔法のように働くかどうかを検証したわけではないのだろう?」

「え、まぁそりゃそうだけど。検証のしようもないし」


 アチーブメントはオフにする方法がないので、確かめる術が無いのだ。いつの間にか増えているし、何か数値として好感度的なものが見えるわけでもないしな。


「別に気にすることはないのではないか。よしんばコースケの能力がそのように働くとしても、それはつまりコースケがより魅力に見えるようになるということなのだろう。その能力も含めてコースケなのだから、構わないのではないか?」

「それをナシとか言ったら夜魔族とかお日様の下を歩けなくなっちゃいますよね」

「ヤマ族?」


 ヤマ……閻魔?


「夜の魔と書いて夜魔族です。夢魔族とも呼ばれますね。淫魔族と呼ぶのは差別になりますのでそう呼んじゃダメですよ。彼女達も女性しかいない種族ですけど、何もしないでも魔力が魅了の魔法として放たれてしまうなかなかに難儀な種族なんです」

「そりゃ本当に難儀だな……でも、多分会ったことは無いんじゃないかな」


 多分サキュバス的な種族なんだろう。有翼族の中に蝙蝠みたいな翼を持つ人が居たけど、特に妙な気分になったりはしなかったから、きっと別ものだろうな。


「いや、会ったことがあるはずだぞ。コースケは素顔を見せても目をじっと見ても大胆に肌を見せても何の反応もしないから、面白くないとか逆に安心するとか言っていたな」

「そうなのか……俺には魔法の類は殆ど効かないからな」


 どうやら別ものでは無かったらしい。そう言えばやたらと俺の目をじっと見たり、薄着になる人がいた気がする。目のやり場に困ってドギマギしてしまったが、特に向こうからは何も言ってこなかったからスルーしたんだよな。

 自動的に発散される魅了の魔法に慣れすぎているせいで逆にコミュ障だったりするのだろうか。


「話が逸れたが、つまり私が言いたいことは夜魔族と同様にそれも含めてコースケの魅力なのだから、別にそれを気にする必要はないのではないか、ということだ」

「なるほど……?」

「自分の力がどうこうとかそういう事を考えないで、真正面から受け止めて答えを出してください。アドル教の件とは違ってこちらはシルフィも応援できる内容ですから」

「種馬として差し出すのとはまったく別の話だからな」


 そう言ってシルフィは今にも舌打ちをしそうな表情をする。


「寿命の差を持ち出されると仕方がありませんけどね……最終的にはコースケさんにまるっと全部押し付ける形になってしまっているのが心苦しいのですけど」


 心苦しいと言いつつその俺の胸板を撫でる手は何かね? いつの間にか間合いが詰まってるというか密着状態ですよ? シルフィさん? メルティだけでなくシルフィもか?


「ああ、本当に心苦しいし、それ以上に口惜しいな」

「きっと一年と経たないうちに先を越されるんでしょうね」

「人族は短命だが、子を成しやすいからな」

「落ち着け、落ち着くんだ二人とも」


 既に俺の両腕はシルフィとメルティに左右からガッチリと抱きつかれてホールド状態である。この二人を振り払うことなど出来るはずもない。心理的にも勿論のことだが、そもそも物理的に不可能である。


「OKOK、落ち着け二人とも。まずは話し合おうじゃないか。大丈夫だ出来る出来る俺達は話し合える諦めるな諦めるなy――ウワーッ!」


 助けてグランデ!

「いやそれはいくら妾でも無理じゃろ(真顔)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
コースケが夜の生活で助けてー!みたいなのがくどすぎてさすがにしんどい。 本気ならコミュ障だし、ネタならデリカシー無いし別にさほど面白くもない。
グランデさんはむしろ一緒に襲いかかってくる立場でしょ 不思議な力で現地語に翻訳されてるんだから異世界の日本語や漢字はスルー推奨よ 読めない独自言語で書いてほしい、翻訳したい。とかいうなら自分で書け…
[気になる点] 夜の魔と書いて夜魔族です これって漢字だよね、現地語は漢字?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ