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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
223/435

第222話~リスペクトが強すぎる人達~

遅れました。ゆるして_(:3」∠)_(全面降伏

「お二方に是非ともご了承頂きたきことがございます」


 来るぞ……! と身構える。一体何を突きつけて来るつもりだろうか。やはりグランデと俺との間に子供が出来たら嫁とか婿に欲しいとかそういう話か? いや、まさかグランデの身柄そのものを……? 俺の内心の緊張が伝わったのか、目を瞑っていたグランデが片目を開けてチラリと見上げてくる。


「お二方の絵姿を我がドラゴニス山岳王国に広めることをご了承いただきたいのです」

「……んん?」


 なんか思ってたのと違う。なんというかこう、呑むのが辛い要求を突きつけてくる代わりにドラゴニス山岳王国の支援をお約束しますとかそういうのじゃないの?


「いや、それは構わないけれども」

「そうですか! それは良かった! ついでにと言ってはなんですが、今しがたお話し頂いたお二方の馴れ初めに関するお話も一緒に伝えても宜しいでしょうか?」

「別にいい……よな?」

「妾は構わん」

「おお! それは僥倖! 父祖の再来たるお二方に民達はそれはもう強い興味を抱いているのです。そのお二方と友誼を結ぶことができれば王家の権威もいや増すというもの。今後とも是非よしなにしていただきたい」

「お、おう」


 立派な角のイケメンおじさんがめっちゃ目を輝かせていらっしゃる。


「それと、ちーずばーがーやほっとけーきでしたか。グランデ様が好物とされている食べ物のレシピなどもできれば教えて頂きたい。グランデ様を惹きつけるその料理を国民は強く求めるに違いありませんからな」

「まぁ、それは別に構わないな」


 チーズバーガーというかハンバーガーやケチャップ、それにホットケーキに関しては錬金術の材料として使われていた鉱石の一種が重曹として使えることがアイラによって発見され、重曹を使った焼き菓子の類などがアーリヒブルグでは日々研究されているという。

 今は俺がクラフトで作り出したベーキングパウダーの研究もアーリヒブルグで行われているが、なかなかに苦戦しているらしい。俺もベーキングパウダーの詳細なんてよく知らないからなぁ……実物はクラフトで作れても助言はできないんだよな。とりあえず重曹に色々混ぜたもの、くらいしかわからないし。

 ちなみにケチャップに関してはこちらの世界のトマト風の野菜であるトメルを使うので、色が違う。トメルは概ね緑色か黄色の果物野菜なので、こちら産のケチャップは緑ないし黄色なのだ。チーズやピクルスに相当する食品は問題なく存在したし、パテに関しても挽き肉に調味料や香辛料を加えて焼くだけなので模倣はまぁできた。

 ホットケーキに関しても重曹さえ発見できれば作るのは難しくなかった。俺もホットケーキに使われる材料くらいは覚えていたからな。ちょっとうろ覚えな部分もあったが、そこはトライ&エラーを繰り返してなんとかした。今ではハンバーガーと共にグランデ縁の品としてアーリヒブルグでは屋台も出ている。別にレシピを教えることによって誰かが損を被ることもあるまい。


「多分解放軍の調理担当にレシピを把握しているのが何人も居るはずだから、そちらから習ってくれれば良いだろう。後でシルフィ経由でレシピの伝授をするようにしておく」

「それは助かりますな。それで絵姿についてですが、今回の特使団に画家を帯同しておりますので、都合の宜しい時にでもお願いできれば」

「別にいつでも良いっちゃいつでも良いけどな。なんならこの話し合いが終わった後でも」

「素晴らしい、是非ともお願い致します」

「レザルス殿、こちらからお願いしてばかりでは礼を失するのではないかな?」


 ツヤツヤとした笑顔を浮かべるレザルス氏をリザードシャーマンが掣肘した。掣肘されたレザルス氏が慌てて表情を引き締める。


「それはそうですな。失礼、少々興奮してしまいました」


 居住まいを正したレザルス氏が一つ咳払いをしてからキリッとした表情を作る。元がイケメンだからか、急に威厳のようなものが漂ってくるのがちょっと面白い。


「お二方の寛大な対応に心よりのお礼を申し上げます。ここからはドラゴニス山岳王国としての対応の話をさせていただきます。我々としては、コースケ様とグランデ様のおわすメリナード王国に可能な限りの支援を行いたいと思っております。飛竜兵や竜騎兵とはじめとした戦力の派遣や、物資や資金、技術などの融通、それに交易や外交面における支援なども行う用意がございます」

「大盤振る舞いだなぁ。俺とグランデの絵姿に、馴れ初めの話、それに料理のレシピへの対価としてはあまりにも過分じゃないか?」


 正直、差し出したものに対するリターンが大きすぎるようにしか思えない。彼らの興国の祖と同じ立場であるからといって、ただ友誼を結んで少々のやりとりをしただけで示す対価としては過分に過ぎるだろう。


「そのようなことはございませんとも。政治的にも軍事的にも正当な取引でありますよ。メリナード王国とその王家の血筋が権勢を取り戻せば、我々ドラゴニス山岳王国に対する聖王国の軍事的圧力は大幅に低下し、我々は安寧を享受できるようになります。言い方は悪いですが、我々にとってメリナード王国の立地は聖王国に対する盾として非常に有用な位置なのですよ」

「なるほどなぁ」

「それに、新たなメリナード王国の女王陛下は黒き森のエルフとも交易ができる立場であらせられる。我々にとっても黒き森から齎される交易品は喉から手が出るほど欲しい一品なのです」

「そういえば、ドラゴニス山岳王国は飛竜を使った長距離貿易で外貨を獲得しているんだったな」


 地形を無視して目的地にひとっ飛びできる飛竜貿易はドラゴニス山岳王国の主要な外貨獲得手段だと聞いている。野盗に襲われる心配もなく、多くの荷物を抱えて長距離を飛べる飛竜貿易はドラゴニス山岳王国に多大な利益を齎していると俺も聞いた覚えがある。


「はい。黒き森のエルフから齎される交易品は二十年前にメリナード王国が滅びて以来、手に入れることができなくなっていますから。市場価格はそれはもう天井知らずと言って良いほどに跳ね上がっているのです。そういった交易品が再び扱えるようになれば、我々は更なる富を得られるわけですね」


 レザルス氏が穏やかな笑みを浮かべる。世界情勢に明るいとは言えない俺では実際のところどうなのかという判断まではつかないが、話を聞く限りではある程度筋が通っているように聞こえる。

 実際のところはシルフィやメルティに判断してもらうほか無いだろうが、まぁ悪い話ではないように思える。


「てっきりグランデと俺との間に子供が出来たらそれを嫁なり婿なりに欲しいとか、最悪グランデを寄越せとか言ってくるんじゃないかと警戒してたんだけどな」

「まさか! お二方の間を引き裂くなどというのはまさに我々の興国の伝説に泥を塗って打ち捨て、更に踏みつけて唾を吐きかけるかの如き蛮行でありましょう。我々がそのような行為に及ぶことは父祖に誓ってありえません。もしそのようなことを企てる者がいたら、我々は全力を持ってその者を打ち砕き、焼き滅すことでしょう」

「お、おう」


 ドン引きした。レザルス氏の目がマジである。本気と書いてマジである。彼は本気でそう考えているようだ。左右に座る武官のドーン氏とリザードシャーマンの爺さんも何度も深く頷いている。俺とグランデに対する彼らの畏敬の念は俺が思っているよりも遥かに強いものであるらしい。


「ご子息、ご息女については我らの国にお招きすることができれば望外の喜びですが、そのようなことを取引の条件として突きつけるなど……そのような行為はあまりにも不敬でありましょう。我々はお二方を利用したいわけではありません。ただ友誼を結んで頂きたい一心なのです」


 レザルス氏は曇りなき眼を俺とグランデに向けてそう言った。そしてグランデが一言。


「コースケ、もう良いじゃろ。この者達が我らに一欠片も悪意を持っておらぬことは明白じゃ。それよりも妾は小腹が空いてきたぞ」

「ああ、そう……まぁうん。じゃあ全面的に受け入れる方向でお願いします。実務的な話はシルフィとかメルティとして貰ったほうが良いと思うんで、こちらから会談を手配できるように話を通しておきます」

「承知いたしました。よろしくお願い致します」


 この後はグランデの好物のチーズバーガーや生クリームとジャムたっぷりのホットケーキ、それにプリンなどをレザルス氏達にも出してしばし歓談した。彼らとしてはプリンが一番気に入ったようである。プリンのレシピも提供すると約束すると小躍りせんばかりに喜んでいた。

 こうしてドラゴニス山岳王国との会談……謁見……拝謁? もうわかんねぇな。とりあえず話し合いは極めて穏やかな形で落着することとなった。実務に関してはシルフィとメルティに丸投げである。俺に国家レベルの軍事や貿易に関するやり取りをするのは無理だからね。餅は餅屋だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >>おざなりさん スクショ機能はなかったかな。 以前綺麗な景色を撮りたかったけど、ボタンが反応しないとコースケがぼやいてたはず。
[良い点] ドラゴニス山岳王国の使者の話を聞いて、アイドルの追っかけみたいな感覚なのかなと思ったり。それならばアイドルであるグランデとコースケを貶めるような言動は絶対にとらないだろうなと納得しました。…
[良い点] ツヤツヤ笑顔の有角イケメン想像してホッコリしました [一言] グランデも嫌がらなかったということは ドラゴニス山岳王国(まあ、普通に話せたかな) ですかねw
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