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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
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第219話~地道な活動~

 やることが多い。やることが多いのだが、基本的にはどれも繰り返しタスクである。各種部品の製造はクラフト予約を入れて放置するだけだし、農地の拡張に関しては既に飽きるほどやった仕事だ。

 区画整理に関しては違法建築めいた過密建築を一旦バラして整然と規格の整った集合住宅を作っていくお仕事が殆どである。具体的にどういうものかというと。


「区画整理の時間だオラァ! 野郎ども、やっちまえ!」

「「「いえっさー!」」」

「う、うわぁぁぁぁ! クカクセーリだ! クカクセーリが来たぞぉぉぉ!」


 クカクセーリとは汚部屋だろうが『コト』の真っ最中だろうが留守なんだろうが踏み込み、人海戦術で『中身』を強制的に掻き出し、住居を跡形もなく破壊してまっ更な新しい住居を建設していく傍迷惑な集団である。

 住民曰く。


『おっかない亜人の兵士で構成されているので、下手に文句を言えない。でも、家も綺麗で上等なものになったから良かったのかなと思っている』

『休日だから恋人と仲睦まじく過ごしていたら急に踏み込んできて裸のまま外に放り出された。何をするんだと思わず怒ったが、何故か上等な大きなベッドをプレゼントしていってくれた』

『宝物が根こそぎ奪われた。極悪集団だ。ガラクタ? みんなはガラクタって言うけど、俺は宝物って呼んでる』

『汚部屋だった隣人の部屋を片付けてくれたので感謝しかない。晴れた日には嫌な匂いがしたりして大変だったんだ。どうせなら隣人も片付けてくれれば良かったんだが』


 などと住民の皆様からは大変好評である。いや好評か? 好評ということにしておこう。何にせよ、無秩序に増改築された過密住宅というのは火事や地震などの災害が起きた時に非常に危険だ。美観も損ねるし、良いことが何もない。こういった場所は犯罪の温床にもなりかねないので、俺自らが出張っているわけだ。

 無論、俺がこうやって矢面に立って力を大いに振るうのには他に理由もある。


「恐れることは何もありません。あの方は稀人、神の使徒です。また、彼に従う亜人の兵士達もまた、我々の頼もしき隣人です」

「あちらの広場で清潔な布や焼きたてのパンの施しがあります」


 暴虐の限り(?)を尽くす俺達の後ろにアドル教の聖職者達がついて回って人々に俺が神の使徒であると触れ回り、更に施しを与えることによって懐柔していく。

 俺の存在と特異性をこんなに大々的に宣伝して大丈夫なのかって? それを言ったらキュービに逃げられた時点で伝わっちゃマズいところには伝わってしまっているだろうし、今後はエレンと共に新たなアドル教の象徴的存在となるつもりなのだから、隠れているのは不可能だ。どうせ隠せないのであれば、存在を派手に演出して利用したほうが得だろう、というのが新生メリナード王国と新生アドル教の共通見解なのである。

 それと、俺の生活サイクルの中にメリネスブルグの大聖堂で奇跡を執り行う、というタスクが新しく加えられることになった。

 別に、内容的にはどうということもない。煌びやかな聖職者の衣に身を包み、骨折などの外傷のために重篤な障害の残っている信徒を何もないところから取り出した『聖なる布と添え木』で癒やしたり、重病や重傷の信徒を何もない場所から取り出した『神の秘薬』で癒やしたり、何もない場所から大量のパンや清潔な布を出現させて施しを与えたりしているだけである。

 言うまでもないが、全てインベントリとスプリント、それに各種ポーションの仕業である。なんだか巷では癒やしを与える神の使徒という名声とともに、手品師の兄ちゃんとか家壊しの兄ちゃんとか言われているようだが、細かいことは気にしないでおく。

 こういった地道な活動を続けるための原動力となっているのが城の中庭に作った薬草園と籠城用の農地だ。そこから取れる薬草や作物から聖職者活動(?)に使用する薬や食べ物、それに布などが作られている。


 他には近隣の農地の開墾を手伝ったり、エアボードの運転講習を行ったりとそれなりに忙しく過ごしていたのだが。


「ドラゴニス山岳王国からの特使?」

「ああ。竜の伴侶たるコースケと竜であるグランデへの拝謁と、新生メリナード王国との外交関係を結ぶために来訪したとのことだ。アーリヒブルグに到着して、コースケとグランデ、それに私がアーリヒブルグではなくメリネスブルグにいると聞いたらメリネスブルグへとすぐに発ったらしい」

「ほーん……じゃあ着くのは何週間か後か? その頃にはもう俺はメリネスブルグを発ってるんじゃないかな」


 今、ダナンが解放軍とアドル教の聖職者を連れてメリナード王国領内の聖王国軍を掃討している最中である。掃討というか、ほぼ降伏勧告をして回っているだけの状態だが。

 先日捕らえた討伐軍が全滅して撤退した旨をアドル教の聖職者と共に伝えて回り、おとなしく降伏するのであれば家族ともども本国への撤退の面倒を見るという条件で降伏を促しているのである。

 聖王国軍の兵士と言っても全員が全員根っからの主流派だらけということもなく、メリナード王国領内で徴兵され、編成された兵士の中にはこっそりと亜人と付き合いのある者などもいたらしい。

 というか、場所によっては聖王国の支配を受けているのは上辺だけで、亜人に対する弾圧が緩い地域などもあるようだ。それはどういう場所かと言うと、かつて黒き森に向かう亜人達と袂を分かち、メリナード王国領内に隠れ潜んだ人間のメリナード王国軍兵士が潜伏していた土地である。

 そういった土地ではメリネスブルグを落とし、聖王国軍を退けた俺達解放軍――つまり新生メリナード王国へと加わる動きが加速しているのだそうだ。最近はそういった土地からの使者も城に訪れているようで、シルフィやメルティ、相手によっては旧メリナード王国時代に社交の場に既に出ていたドリアーダさんや、前王妃であるセラフィータさんも応対に当たっているとか。


 おっと、話が逸れたな。


 エアボードならともかく、馬車で移動をしているのであればドラゴニス山岳王国の特使がメリネスブルグに到着するのは、ダナンが露払いした土地をエレンと一緒に均して回っている最中である可能性が高い。もしかしたらグランデはメリネスブルグに居るかも知れないが、俺は多分居ないだろうな。


「いや、彼らはワイバーンに乗ってアーリヒブルグまで来たらしい。早ければ明日にでもこちらに着くそうだ」

「ワイバーンか。ワイバーンって乗れるんだな」

「実際に目にしたことはないが、卵の状態から育てると人にも懐くそうだ」

「ほー。刷り込みみたいなもんかね」


 鳥なんかは孵化してすぐに目に入ったものを親だと認識するって言うよな。全部の鳥がそうなのかどうなのかは知らんけど。卵生と思われるワイバーンにも似たような習性があるのかもしれない。


「しかし拝謁って言われても、何をすれば良いのかわからんのだが」

「ふむ……母上に聞いてみるのが良いだろうな」

「母上って、セラフィータさんか……」


 俺の言葉から何かを察したのか、シルフィが表情を曇らせる。


「コースケには母上とも仲良くしてもらいたいのだが……」

「い、いや、仲良くするのは多分大丈夫だと思うんだが」


 俺が心配しているのは仲良くなりすぎるんじゃないかという点だ。こちらの世界に来てからなんだか妙にモテているような気がしてならなかったが、その原因ではないかというものに先日気づいてしまったんだよな。

 俺が何かしようと思ってしているわけではないし、あの後アチーブメントの項目をオフにしたりできないかと四苦八苦したのだが、どうにもそういう事はできないらしく、効果はなかった。

 特にセラフィータさんにはアチーブメントの効果がピンポイントに作用するっぽいので、できれば接触を控えたいんだよな。いくら美人でもシルフィのお母さんだし、夫を亡くしたばかりの未亡人だし……物凄い美人だとは思うけどさ。


「そうなのか? それなら良かった」


 俺の言葉に安堵したようにシルフィが微笑む。やめてくれ、その純粋な嬉しさから来ていますという笑顔は俺に効く。別に俺が悪いわけじゃないと思うが、すごく後ろめたい気持ちになる。

 誰が悪いって言ったら、間違いなく俺をこの世界に連れてきて面白半分でアチーブメントを付与している愉快犯の野郎だと思うんだが。文句を言う手段もないしな。


「ま、まぁセラフィータさんに聞いておくよ。ウン」

「そうしてくれ。私は母上に聞きに行く暇も無いんだ」


 そう言ってシルフィは溜め息を吐いた。今は昼食休憩ということで俺と一緒に食堂で食事を取っているが、食事が終わったら今日一日は執務室に缶詰になるらしい。なんでも次期女王としてやらねばならないことが山積みであるらしい。手伝ってやりたいが、書類仕事に関してはシルフィと一緒に仕事を進めているメルティの方が俺の10倍は戦力になるので、俺が行っても邪魔になるだけである。


「飯を食い終わったらセラフィータさんの所に行って聞いてみるよ」

「そうだな。先触れを出しておこう」


 そう言ってシルフィが給仕をしてくれていた侍女の一人を呼び、昼食後に俺が尋ねるということをセラフィータさんに伝えるように言う。無自覚に俺の退路を断っていくこのムーブである。はっはっは、シルフィは可愛いなぁ!

 何もないことを祈ろう。うん。

三巻を買って読んでくれた方から出版社様経由でファンレターが届きました。

初めての体験に震えています……こ、これがでんせつのふぁんれたー……!(´゜ω゜`)

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― 新着の感想 ―
ふぁんれたぁ ステキですね 作品を一気読み中、思わずコメントしてしまいます
この能力、オートメーション化には対応してないんだろうか…
[一言] 何気にスカイリムの雑貨屋のネタが入ってる~
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