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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
戦争に向けてサバイバル!
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第178話~即落ちチョロドラゴン~

 ライム達と一緒に甘いものというか、ちょっと早めの昼食を取りながらライム達と別れた後の話をしたり、向こうに戻ってからの話をしたりして会談の時間まで過ごすこと暫し。


「こーすけはー、ふところがふかいー」

「そうじゃな。節操がないとも言えるが」

「魅力的ってことにしときなさいよ……殆ど押し倒されてるでしょ」

「チョロ……優しい人なのです」

「おい今なんて?」


 ポイゾが毒を吐きかけた。このどくどくスライムめ。キュアポインズンポーションをぶちこんでやろうか? いや、効かなさそうだけれどもさ。ポイゾは毒系スライムというよりも薬系スライムだからな……毒も薬も殆ど自由自在に精製できるらしいし。消化能力も三人の中で一番高いらしい。


「だが妾に至っては魔物じゃし、ベス達も本質的にはそうじゃろ? シルフィ達のような亜人はともかく、妾達のような魔物も殆ど抵抗もなく受け容れるというのは節操なしと言うのではないか?」

「何で微妙に自虐的なのよ……あんた、自分に自信がないの?」

「むぐっ……そんなことないし? 妾可愛いし? ちょうぷりちーじゃし?」


 ベスの指摘に図星を突かれたかのようにグランデがごっつい手から生えている爪先同士をちょんちょんしながら狼狽えている。え? お前そんなコンプレックスめいた感情があったのか?


「コースケ的にはどうなのです?」

「え、普通にめっちゃ可愛いと思うが」


 そう言って角の生えている頭をなでなでする。


「この立派な角も、変化しきってないごっつい手足も、かっこいい翼も、太くて力強い尻尾も可愛いと思うぞ。というか、人型になる前からグランデは可愛いかったと思うが」


 反応が可愛いというか、心根が可愛いというか……まぁ流石にこうやって人型になるまえのドラゴン形態なグランデに欲情するのは不可能だったけどね。世の中にはドラゴン形態のグランデにも欲情できるようなツワモノもいるに違いないぞ。俺は無理だけど。大事なことだから二回言うけど。


「ホンモノなのです」

「ふところがふかいー」

「あんたはあまりこう、容姿に拘らないのね」

「そんなことないと思うぞ……?」


 ライム達やグランデだけでなく、シルフィ達も含めて全員目が飛び出るほどの美女、美少女揃いだと思うんだけど。しかもスライムだったりドラゴン娘だったりエルフだったり単眼娘だったりハーピィだったりよくわからない強くてやべー悪魔めいた種族だったりする。最高じゃないか。

 エレン? エレンは正直言って近づきがたいレベルの美人だよな。正直に言うと畏れ多いぞ。そういう意味で畏れ多いと言えば全員そうなんだけどさ。


「うぅー……」


 考え事をしながらグランデの頭を撫でていたら、グランデが真っ赤になって目を回していた。尻尾が激しく石の床を叩いている。割れて飛び散った石の破片がライムの身体に埋まり、ベスの表面でぼよんと跳ね返り、ポイゾの身体にビシビシと突き刺さっていた。相変わらずパワフルな尻尾だなぁ。


「……き」

「うん?」

「しゅき!」

「ウワーッ!?」


 尻尾をぶるんぶるんと振っているグランデが飛びかかってきた! 馬鹿! やめろ! 何をするんだ! ワイバーンの革鎧が紙切れのように!? 痛い痛い! 角が胸に擦れて痛い! ゴリゴリしてる!


「んふー……すんすん……んふふー……」


 グランデが素肌が顕になった俺の胸元に顔(と角)を擦りつけながら鼻を鳴らしてトリップしておられる。俺からはグランデの頭と角しか見えないが、目を見たらハートマークにでもなっているんじゃないだろうか。あと角! 角が痛い!


「「「めろめろー?」」」

「即落ちチョロドラゴンなのです」

「私達が居てもおかまいなしねぇ……」


 ライムが分裂(!)して色々な角度から俺達を観察し、ポイゾがニヨニヨとしながら俺達を眺める。ベスは少し呆れた様子だったが、グランデを止めてくれるつもりはないようだ。

 結果として、五分ほどで状況に気づいたグランデが正気に戻って大事には至らなかった。俺の胸板はグランデの角で擦られまくってちょっと痛かったが、血が出たわけでも無いので良いとしよう。


「……」


 正気に戻ったグランデは部屋の隅で角に向かって体育座りをしている。翼で身体を覆って壁を作っている辺り、相当気にしているようだ。


「グランデー?」

「……」


 呼びかけてみるが、尻尾がピクリとしただけで完全にスルーである。


「恥ずかしがってるのー?」

「恥ずかしがることないのにー」

「こーすけはアレくらいで怒らないー?」


 分裂したライムがそんなグランデに寄り添ってグランデを慰めていた。グランデは俺の着ていたワイバーンの革鎧や服を破ったことに対してそれはそれはものすごく反省しているのだ。鍛冶施設で修理をすれば、さして時間もかけずに修理できるからそんなに気にすることはないんだけどな。

 グランデは俺の革鎧と服を破って襲いかかった罪悪感と自分のしたことの気恥ずかしさから相当精神的ダメージを受けてしまっているようだ。別に良いんだけどな。怪我をしたわけでもなし。


「魔物は本能や衝動が強いから仕方ないのです」

「特にグランデは人間と接してまだ期間が短いみたいだしね。まぁそのうち慣れるわよ、お互いに……あ、そろそろ時間ね」


 ベスがそう言い、大型ゴーレム通信機に向かい始めた。今日はベスが中継役をやるらしい。ライムも本体はゴーレム通信機の方にきた。分体は変わらずグランデを慰め続けているようだ。


「エレンはもう会合場所に来ているのか?」

「来てるわね。何か伝えておく?」

「俺がもうこっちに来てるってことと、近々会いたいってことを手短に伝えてくれるか? 今日はその件について解放軍から話があるってことも伝えてくれると嬉しい」

「わかったわ……伝えたらいつ来るんですか? って言ってるけど」

「そっちの準備が整い次第だな。いつ、どこに行けば良いのか教えてくれれば良い。明日か明後日の朝辺りに今日と同じ方法でベス達の誰か経由で伝えてくれれば良いんじゃないか? あ、でも今はベス達が護衛してるんだったっけ?」

「ええ、護衛してるわ。一人でいる時に私達に声をかけてくれれば良いんじゃない?」

「そうだな、そう伝えてくれ」

「わかったわ……聖女もわかったって」

「了解。ありがとうな」

「どういたしまして」


 俺が礼を言うと、ベスはそう言って微笑んだ。

 それから程なくして会合が始まったが、今日の会合はごく短い時間で終わるかと思われた。俺が既にこちらに来ていること、そしてそれがエレンに伝わっていることがすぐに確認されるだろうからだ。昨日の今日で新しい情報があるわけもなかろうと思ったのだが。


『コースケに是非会って欲しい人がいるのですが』

『コースケに? どういうことだ?』

『今朝方報せが来たのですが、五日ほどで懐古派の幹部……つまり私の上司がメリネスブルグに到着します。コースケには是非彼女と会っていただきたいのです』

『彼女……女か』

『確かに女性ですが、もう五十歳近いお方ですよ。コースケならもしかしたらもしかしますが』

「流石にそれはないと思う」


 思わず突っ込んでしまった。いや、いくら俺でも母親くらいの歳の女性にどうこうってことは流石に……年齢だけで言えばシルフィやアイラ、メルティやグランデもそうだな? いやいや、違う。そうじゃない。年齢の問題ではない。外見の問題……外見が大丈夫なら年齢には左右されないと証明してしまっているな? いや、人間の五十歳近い女性なら向こうが引くだろう。ないない。


「……真面目に話をしなさい。はい、再開」

『微妙に間があった気がするが、まぁ良い。それで、そちらの上司とコースケを会わせたいという話だが、どういう意図でだ? 場合によっては賛同しかねるぞ』

『コースケに光輝の冠を被せて見せて、使徒がこちらについているということを証明しようかと』

『光輝の冠というと、確か神の祝福とやらを可視化する祭器だったな? そんなことをして何になるのだ? まさかアドル教内の勢力争いにコースケの存在を担ぎ出すつもりか?』

『場合によってはそうなりますね。アドル教において光輝の強い者というのはそれはもう強い権威を持ちます。正直、弱小派閥である懐古派が主流派と真正面からやりあって潰されずにいるのは私という聖女を抱えているからです。私に匹敵する光輝を放つコースケが懐古派を支持し、懐古派にとって都合がよく、主流派にとって都合の悪い改竄前のアドル経典をもたらしたとなれば懐古派は一気に勢力を盛り返すことも可能でしょう』

『そのためにコースケの身を危険に晒そうというのか? 話にならないな。そのような危険な真似はさせられん』


 シルフィはエレンの提案を即答で突っぱねた。まぁ、シルフィならそう言うだろうな。

 だが、エレンもそれで引き下がるようなタマではない。


『遅かれ早かれコースケの存在はアドル教と聖王国に知られます。そうなった場合、コースケが神の使徒であると広く認知されていたほうがコースケの危険は減りますよ。神の使徒と認知されれば、聖王国もアドル教も軽々とコースケを暗殺することなどできなくなりますから』

『コースケの存在を公にする方が遥かに危険だと思うが?』

『既に解放軍の中でコースケが貴女の情夫であるという話は有名なのでしょう? とっくに聖王国はそれを把握していると思いますよ。聖王国は貴方達が思っているほど無能ではありませんから。現に、そういった流れで私とコースケは出会うことになった。違いますか?』

『それは……だが、キュービの所属についてはそちらも知らないという話ではなかったか?』

『ええ、件の狐獣人については少なくとも我々懐古派の手の者ではないですね。かと言って主流派の手の者なのかという話になると、それも考えにくいのですが。彼らが亜人のスパイを用いるとは思えませんし』


 俺を攫ったキュービの話になる。懐古派の手の者ではなく、主流派の手の者とも考えにくいとかあいつは一体何者なんだよ。どちらでもない第三勢力なんだろうけど、一体それがどこのどんな勢力なのかはエレンにもわからないらしい。


「どちらでもないとなると、聖王国と戦争してる帝国の手の者だったりしてな」

『その可能性は絶対に無いとは言えないな』

『そうですね。主流派の手の者という話よりは現実的です』


 冗談のつもりで言ったんだが、シルフィとエレンは二人揃って俺の言葉に肯定的な返事をした。そうだとしたら帝国はメリナード王国でダナン達が反乱を起こす前、少なくとも三年以上も前からキュービをメリナード王国に潜ませていたということになる。もしかしたら、そのもっと前から。

 だけど、嘘か真か地球のスパイも何年、場合によっては何十年もかけて対象の国に潜伏するっていうしな……例えば忍者なんかも本来は黒装束で忍刀持って手裏剣投げてみたいなあんな派手な感じでなく、本来は地味に諜報対象となる土地に溶け込んでいたとかいう話だしな。そう考えると、キュービがそうであった可能性も無くはないのか。


『まぁ、私以外に私と同等以上の光輝を放つ存在が懐古派に属していると分かれば良いのです。一般に広く知らしめる時には名前も顔も隠して問題ないですから。いずれは顔出しも必要になるでしょうけど、その辺りは気を遣います。流石に上司には顔見せをしてもらいたいですが』

『ふむ……それは何故だ?』

『いくら光輝だけ見せつけても、それだけでは信頼は得られませんから。大衆に見せるのとはわけが違いますので』

『ふむ……まぁ、良いだろう』


 シルフィはなにか引っかかるところがありそうな様子だったが、追求はしないことにしたようだ。俺としてはそういうこともあるか、と思ったのだが。実際に目の前であの眩しい冠を被るとしても、マスクか何かで顔を隠したままの相手に自分の命運を託そうとはなかなか思えないだろう。

 民衆視点で『手に届かない場所にいるなんか高貴な偉い人』ってことならあまり気にならないかもしれないが。


『とりあえず、解放軍としては懐古派との連携を強化するという意味でその上司とやらにコースケを会わせるのは許容することにする。実際に会うかどうかの判断はコースケに任せよう。ただ、我々の目的がメリナード王国領の奪還だということは忘れるな。懐古派が聖王国で主導権を握り、残った領土を返還するというのなら協力は惜しまないが、それができないとなればアーリヒブルグ以南と同じように戦って奪い返すという方法を取らざるを得なくなる。和平を結んだわけでもない現時点での我々の関係は敵の敵同士というだけで、本質的には相容れぬ存在だ。コースケが私達とお前達を繋ぐ架け橋になってくれているに過ぎない。くれぐれもコースケに妙な真似をするなよ……その時はどんな手を使ってでもお前を縊り殺してやる』

『承知しています。私としてもこれ以上の死者は出てほしくありません。主張は違えど、主流派の人々も同じアドル教徒で、同胞なのですから。同時に、コースケの大事な人でもある解放軍の皆さんとも争いたくはないと考えています。血を流さずに円満に解決できるよう尽力するつもりです』

『その言葉、忘れるなよ。では、何かあればライム達を経由して連絡してくれ。次の定期連絡はどうする?』

『何事もなければ五日後に、私の上司も交えて話し合いましょう』

『了解した。ではな……コースケ、油断するなよ』

「了解。そっちで何かあったらすぐに連絡をくれ」

『ああ、勿論だ。それではな』


 シルフィの声が途切れる。通信を終了させたようだ。


『あの人も、貴方には優しげな声で話すのですね』

「まぁ、そうだな」

『私も貴方には優しく接したほうが良いですか?』

「今更じゃないか? そういうのも悪くないけど、気安く話せる今の関係も俺は好きだな」

『そうですね、私もそう思います。そういうのは二人きりの時だけにしましょう』

「お、おう」

『経典の引き渡しについては予定を確認しますので、少し時間をください。決まり次第スライムさんの誰かに伝えます』

「わかった。無理するなよ」

『はい。それでは』

「……聖女も会合場所から立ち去ったわ」

「そうか……ふぅ」


 ベスの言葉になんとなくため息が出る。なんというか、シルフィとエレンがバチバチと話し合っているのを聞くのは思ったよりも疲れるな。修羅場ってわけじゃないけど、なんとなく心に疲労が溜まる気がする。なんというか、シルフィがアイラやメルティ、ハーピィさん達と話している時とは雰囲気がぜんぜん違うな。壁があるとでも言えば良いのか。直接顔を合わせたこともないんだから当たり前かもしれないが。


「ぎすぎすー?」

「そこまではいかないと思うのです。なんというか、探り合いをしている感じなのです」

「声しか知らない相手じゃね。私は嫌いじゃないけどね、あの子。結構面白いし」

「らいむもー。けっこうやさしい」

「好奇心の強い子なのです。割と平気で私達に手を触れてくるのですよ?」

「そうなのか」


 まぁ、エレンならそれくらい普通にやるかもしれない。なんというか、わが道を行くって感じだよな、エレンは。


「きょうのよていはこれでおわりー?」

「そうだなぁ……鎧の修繕も放置するだけだし、別に今すぐ作らなきゃならないものがあるわけでもな――はっ!?」


 気付いた時には遅かった。俺は間違えた。

 間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えt――。


「ゆるして」

「やさしくするー?」

「私達にお任せなのです」

「か、観念しなさい」


 ベスの両腕が文字通り俺に絡みつき、拘束してくる。ああ、部屋の隅からライムの分身体達の手によってグランデが運ばれてきた。グランデ、お前も道連れだな。ははは。


「とりあえずポイゾはマジで自重しよう? な?」

「考えておくのです」


 ポイゾがニヤニヤする。だめだ、自重する気ゼロだ。ポイゾの薬品精製能力はマジでやばいんだよ。具体的にはアイラの作る薬の三倍くらいヤバい。語彙力が低下するどころか蒸発するくらいヤバい。マジヤバい。

 こうなったらグランデが最後の希望だ。グランデのドラゴンとしての能力が俺を救うと信じよう。

アイラの場合→前後不覚になりかけるが一応意識も記憶も保っている。

ポイゾの場合→完全にキマって理性も意識も記憶も吹っ飛ぶ。


とてもヤバい_(:3」∠)_

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― 新着の感想 ―
[一言] >『確かに女性ですが、もう五十歳近いお方ですよ。コースケならもしかしたらもしかしますが』 50近いって、40代って事じゃろ? 全然イケるじゃまいか。
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