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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
荒野の遺跡でサバイバル!
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第175話~ドラゴン信仰~

「お、コースケどうしたのじゃ?」


 領主館のリビングや寝室にはいなかったので、アーリヒブルグの城壁の外にあるグランデの寝床まで探しに来た。来たのだが……。


「これは何事だ?」

「?」


 俺の質問の意味がわからないのか、グランデが首を傾げる。いや、これはどう見ても異常事態だろう?


「どうしたのですか? 乗り手様」

「何か問題がありましたでしょうか?」

「いや、君達がね?」


 状況を一言で説明すると……グランデがリザードマン系の人々に滅茶苦茶お世話されていた。何を言っているかわからないと思うが、俺も理解が追いついていない。甲斐甲斐しくお世話をされるその様は、まるで王侯貴族か信仰対象か何かのようである。


「私達に問題が……!?」

「それはいけません! 一体どのように改善すればよいのでしょうか!?」

「まってまってまって、理解が追いつかないから! そもそも何で君達はグランデをお世話しているんだ! 俺に一から説明してくれ!」


 詰め寄ってくる信仰者(?)達を押し留めて事情の説明を求めると、彼らはそれはもう熱心に自分達がどういう立場の者であるか、そして一体何をしているのかということを語ってくれた。


「つまり、ドラゴン信仰者ってことか?」

「はい! 我々のような一般的にリザードマンと呼ばれる者達の殆どはドラゴン様を信仰の対象としているのです! ドラゴン様に敬意を払わぬ者などおりませんとも!」


 力説するリザードマン……女性だからリザードウーマン? いやもうリザードマンの女性でいいや。彼女の言葉にグランデの世話をしていたリザードマン達が口々に同意の言葉を口にする。


「そして、ドラゴン様が乗り手と認めたお方も同様に敬意を払う対象となります」

「誇り高きドラゴン様がその背に乗せることを認めたお方となれば当然のことです。グランデ様の話では、シルフィエル姫殿下にも背をお許しになったとか」

「流石はシルフィエル姫殿下です……乗り手を伴侶とし、自らもドラゴン様に背に乗ることを許されるとは。我々の指導者に相応しいお方です」


 リザードマン達がそう言って満足そうに頷いたり、目をキラキラさせたりしている。

 そう言えば、今思えばザミル女史もグランデの名前を呼ぶ時に『様』をつけていた気がするし、グランデに対する態度もシルフィに接するのと同じくらいに丁寧だったように思えるな。いつも礼儀正しいザミル女史だからあまり気にしていなかったのだが、そういうことだったのか。


「で、グランデは悠々自適のドラゴン様生活を満喫していると」

「お世話されるのは嫌いじゃないのじゃ」


 ドラゴン信仰者に向いてもらった果物を口に運びながらグランデがニコニコしている。これを信仰対象に、ねぇ。メルティにボコられて涙目になって俺達に同行しただけなんだけどな、元を正せば。


「とりあえず、事情はわかった。ちょっとグランデと二人きりで話をさせてくれないか? 俺達だけで話し合いたいことがあるんだ」

「承知いたしました。私どもはあちらの小屋に控えておりますので、お話が終わりましたら是非お声がけください。乗り手様は私どもの信仰についてあまりご存知では無い様子なので、軽く、もう少しだけ事情を説明させていただきたいと思いますので」

「お、おう」


 正直あまり聞きたくない。面倒そうだから。でも、俺も既に彼らの信仰に組み込まれている気配がするから、聞いておかないと後で大変なことになりそうな気がする。仕方がないから後でちゃんと話を聞くことにしよう。

 リザードマン達が去っていくのを見送ってからグランデに顔を向ける。


「本当に心の底から申し訳ないんだが、また頼みたい」

「む? また飛ぶのか? 妾は構わんぞ。他ならぬコースケの頼みならなんでも聞いてやろう」

「心苦しい……代わりと言っちゃなんだが、俺も今度グランデの頼みを聞いてやるからな」

「うむ、良かろう。妾はコースケの頼みを聞く、コースケは妾の頼みを聞く、対等な取引じゃな」


 グランデがリザードマン達に用意された物らしき妙に豪華な長椅子に寝そべったまま、にんまりと嬉しそうな笑みを浮かべる。


「とはいえ、妾とコースケは番でもあるじゃろう? そこまで堅苦しく考える必要は無いのではないかと妾は思うがの。妻が夫に力を貸すのにいちいち対価を要求するのは少し違うと妾は思うぞ?」

「それはそうかもしれないが、感謝の気持ちとかそういうのを忘れてやってもらって当然と思うのはまた違うだろう? そういう関係だからこそ、互いを尊重しあわないとな」


 俺がそう言うと、グランデは嬉しそうに頷いた。


「うむうむ、コースケは良い伴侶じゃな。それで、頼みとはなんじゃ?」

「ソレル山地の向こうにあるメリネスブルグまで俺を送って欲しいんだ。俺は数日向こうに滞在して色々と用事を済ませる予定だな」

「うむ? それは構わんが、あちらはコースケにとって敵地なのではなかったか?」


 グランデがこてんと首を傾げる。うん可愛い。って、そうではないな。俺はグランデに軽く事情を説明した。


「つまり、あちらに内通者というか協力者が居て、その協力者に共通の敵を追い詰めるための品を届けに行くと」

「そういうことだ。で、向こうは基本的に亜人がホイホイ出歩いていると目立つ場所だから、人間が行かなきゃならない。そして俺は向こうの協力者と直接面識があるし、目的のものを渡せる確実性から考えても、何かあった時の対応力を考えても俺が行くのがベストってことだな」

「なるほどのう……あいわかった。ソレル山地の向こうにコースケを連れて行く事自体は妾に任せるが良いぞ。その人族の大きな街も山の上から目にしたことがある。二刻もあれば着くじゃろう」

「二刻ね。それじゃあ昼過ぎに出ても日が落ちる頃には向こうに着けそうだな」

「そうじゃな。もう少し早く出たほうが良いと思うが?」

「そうだな……別に向こうに通達してから出発する必要もないか。昼前、もしかしたら朝からとんでもらうかもしれん」

「ふむ。まぁ今晩にでも館で話し合えばよいじゃろう」

「そうだな。それじゃあ世話になるよ、グランデ」

「うむ、任せるが良い。コースケを背に乗せて飛ぶのは嫌いじゃないしの」


 ニマニマと笑みを浮かべるグランデの頭をグリグリと撫でておく。気持ちよさそうに目を細める様はまるで猫か何かのようである。やはりグランデはペット枠。

 暫く愛でているとグランデは気持ちよさそうに眠ったので、俺は彼女をその場に置いたままドラゴン信仰者達の小屋へと向かった。


「ようこそいらっしゃいました」


 小屋は意外と立派な作りであった。なかなかに広々としており、奥にはグランデの落とし物と思われる鱗やその欠片が祀られた祭壇がある。それ以外は部屋の隅に簡素なかまどがあるくらいで、ちょっとした集会所みたいな感じだな。間違っても礼拝堂とかって感じではない。


「お待ちしておりました。どうぞこちらにお掛けください」


 ロザードマン達が俺に恭しく頭を下げ、一際良い椅子を勧めてくる。俺は勧められるままに椅子に座った。


「申し訳ないが、手短に頼む。俺もやらなきゃならないことが多くてな」

「勿論です。竜の乗り手にして伴侶でもあるコースケ様が多忙であることは私どもも承知しておりますから」


 彼らのリーダーであるらしいシャーマンめいた格好をしているリザードマンが俺の言葉に素直に頷いた。なんというかジャラジャラと首飾りや羽飾りをつけていていかにもって雰囲気だな。


「我々リザードマンには古くからドラゴンに対する信仰が根付いております。元を正せば強き者への畏怖と畏敬の念が信仰へと変じたものですな。ドラゴンは強く、賢く、時にと場合によっては我々に牙を向き、逆に力を貸してくれたりします。そして、極稀に人を背に乗せ、番になることもあるという話です。伝説やお伽噺レベルの話ですが」

「伝説やお伽噺ね……確かにグランドドラゴンの長老もうろ覚えみたいな感じだったな」

「グランドドラゴンの長老……ですと!? もしや貴方様はドラゴンの聖地に……?」

「聖地かどうかは知らんけど、黒き森の奥地にあるグランドドラゴンの巣には行ってきたな。グランデの両親とか親戚に挨拶とかしてきたぞ」

「おお……なんということでしょう。やはり貴方様は伝説の再来……」


 眼の前のリザードシャーマンを始めとしたドラゴン信仰者達が俺に手を合わせて拝み始める。やめないか。


「実は、私は西方のドラゴニス山岳王国の者なのです。メリナード王国に人と共に生きるドラゴンが現れたという噂を聞き、その調査のためにドラゴニス教団より派遣されて参りました」

「ドラゴニス山岳王国……」

「はい。ドラゴンを信仰し、ドラゴンと共に生きる者達が住む王国です。王族には正真正銘のドラゴンの血が流れております」

「もしかして長老の言っていた人間の娘に恋したドラゴンの子孫か……?」

「そう伝承にはあります。グランドドラゴンの長老も知っているということは、やはり事実なのでしょうな」


 リザードシャーマンが顎を撫でながらウンウンと頷く。聞くところによると、王族にはドラゴンの角や翼、牙に爪などの特徴が現れる事が多いらしい。それこそ人化している今のグランデのように。


「我がドラゴニス山岳王国は飛竜兵や竜騎兵を多く擁し、国土は小さいながらもその戦力は大国にも匹敵すると言われております。人間至上主義を掲げる聖王国も我々を軽々とは扱えず、一目置いているほどです」

「そうなのか」

「はい。そして、ドラゴン様とその乗り手……いえ、伴侶が所属するこの解放軍に我が国はきっと支援を惜しまないでしょう」

「そうなのか?」

「我々にしてみれば人化し、ヒトと共に在るドラゴンは信仰対象そのもの。そしてその伴侶にして聖地にまで足を踏み入れて戻ってきた貴方様は聖人です。そのような方々が所属する解放軍を支持しないのは信仰に反します」


 それに、人間至上主義を掲げる聖王国は我らにとっても好ましい相手ではありませんしな、とリザードシャーマンは首を振った。


「既に本国には急使を送っております。そう遠くないうちに我が国から正式な接触があることでしょう」

「お、おう」


 こんなことで他国の後ろ盾が手に入って良いものなのか……? いや、宗教絡みだからなぁ……このリザードシャーマンも熱心な信者のようだし、こんな感じの人ばかりなのだとしたら有り得る話だろうか?


「この話について俺から解放軍の上層部に話を通しておく。解放軍からの接触も近いうちにあると思うから、そのつもりで居てくれ」

「承知いたしました。どうでしょうか? 宜しければ我々の教義などをもう少し聞いていかれませんか?」

「すまん、詳しくは話せないが本当に忙しいんだ。落ち着いたら必ず話を聞きに来るから、今日のところは御暇させてもらうよ」

「そうですか、残念ですがそれでは仕方がありませんな。是非、いつでもお越しください」

「ああ、約束する」


 ことは俺とグランデだけでなく解放軍全体にも関わりかねない話だ。彼らには口先だけでなく、ある程度真面目に接したほうが良いだろう。


「それじゃあ、また今度な」

「はい。再び見えましょう」


 リザードシャーマンが指で複雑な印を結んで頭を下げ、信仰者達もそれに倣って頭を下げる。ううむ、ここに来てグランデ経由で第三国が絡んでくるのか……今後に一体どういった影響を与えるものやら。

そう言えば2巻にあとがきがなかった……! 単眼族の生態についてどこかで書かないとですね_(:3」∠)_

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― 新着の感想 ―
信仰は分かってたけど国まであったとは。
[気になる点] うーん、グランデゴンドラ輸送で数人纏めて、真っ暗な夜の内にメリナード王城に入れるんじゃないこれ。 寒さと風対策して高度維持してれば安全確実だと思うんだが。
[一言] ロザードマンとはステキな…
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