表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
荒野の遺跡でサバイバル!
164/435

第163話~地下室ガチャ~

 翌日である。


「さぁ、今日も一日ガンバルゾー」

「なんか朝から疲れた顔してるっすね」

「察してやりな」


 なんだかシュメルから不憫なものを見るような視線を向けられている気がするが、気にしてはいけない。実際俺は元気なので。ほら、体力とスタミナゲージの上限も一割くらいしか減ってないじゃないか。


「ん、今日も頑張る」

「のじゃ!」

「いってらっしゃいませ!」

「旦那さん、気をつけてなぁ」

「ご武運をお祈りしていますわ」

「……」


 皆のお肌はツヤツヤしているなぁ。朝風呂に入って美味しいご飯を食べれば誰だってそうなるよね、はっはっは。


「大丈夫なの?」

「いつものことなので」


 心配そうに聞くトズメに対してザミル女史は慣れた態度で問題ないと言っている。うん、問題はない。無いよ。一時間もしないうちに上限値も回復するしね。実際安全。


「今日は昨日のダンジョンとはまた趣の違った探索になるんだよな?」

「そうだねェ。確か小さな地下空間がポツポツと点在してるはずだよォ」

「昨日の遺跡が金持ち用の大規模シェルターだったよな。ということは個人用のシェルターかね?」

「ん、その可能性はある。もしくは商店とかの地下倉庫かもしれない」

「あァ、それもありそうな話だねェ。湿気に気をつければ商品の保管に適してるし、防犯の上でも強固になるからねェ」

「なるほど」


 ピルナ達ハーピィさん達に畑の世話を任せて俺達はテクテクと荒野を歩いていく。地属性のグランドドラゴンであるグランデが既に周辺一帯の地下空間を魔法で探知しており、めぼしい地下空間のある場所に関しては既に目印が立ててあるのだ。

 目印の場所も一緒に調査をしたシュメル達が把握しているので、迷うこともない。


「こうテクテクと歩いているアレだな。全員が乗れるエアボードをさっさと作ったほうが時間の短縮になりそうだよな」

「ん、確かに。材料もコースケが十分に持っているし、今晩にでも作ったほうが良いかも」

「そうだな。基本は試作型エアボードをそのまま大きくして、重量を支えるためにレビテーションの魔道具を大型化、推進装置も同様に大型化して風属性の防壁魔法を備えれば良いんじゃないか?」


 高速移動用の魔道具の設計についてアイラと議論をしながら歩いていると目的の場所にすぐに辿り着いた。体感的には短い時間だったように思うが、日の高さを見るにそこそこ歩いたらしい。


「ついたのじゃ」

「ふむ、ここの地下か」

「うむ。ここは……この辺が少し崩れているようじゃな。土が中に入っておるぞ」

「それじゃあここらへんを掘るか。しかし便利だな、グランデの地中ソナーは」

「ふふふ、そうであろうそうであろう。もっと褒めるが良いぞ」

「偉い偉い」


 薄い胸を張って誇らしげにふんぞり返るグランデの頭をわしわしと撫でておく。実際、ここのところグランデには頼りきりな気がするな。いくら褒めても褒め足りないくらいだ。


「よし、掘るか」

「任せたっす」

「任せました」


 ベラとザミル女史の台詞を背中で聞きながらショートカットに登録してあるミスリルシャベル+9を取り出して荒野に突き立て、土の除去を始める。一振りで広範囲の土を除去できるこのシャベルにかかれば埋もれた地下室を掘り起こすことなど造作もない。


「入り口が出てきたぞ」

「早すぎるでしょう……」


 そりゃ五回くらい掘っただけで出てきたからね。

 掘り出した入り口からアイラが魔法で毒ガスなどの危険がないか調べ、安全が確認され次第シュメル達が突入していった……のだがすぐに揃って出てきた。


「ここはハズレだね」

「土が入ってしまっていたせいか大半のものが朽ち果ててしまっていますね。めぼしいものは見当たりません」

「まじかー。まぁ修復できるものがあるかもしれないしガラクタの類も全部回収しておこう」


 安全が確認された地下室に入ってみるが、確かにシュメル達の言っていた通りまともなものは何一つ残っていなかった。

 ガラクタはいくつか回収できたが……修復に期待だな。


「次行くぞー」

「わかったっす」


 こんな調子でいくつかの地下室を開けていったが、特に危険なこともなく作業は順調に進んでいった。ハズレの地下室だらけだった。

 地下室ガチャ当たりが悪すぎんよぉ? 排出率どうなってんの? などと思っていたのだが。


「おおィ! 今回は大当たりみたいだよォ」


 ハズレばかりでなんとなく全体の雰囲気がダレてきた頃、シュメル達が突入した地下室からシュメルの弾んだ声が響いてきた。遂に当たりが来たか! とアイラと一緒に地下室に入って俺とアイラは狂喜した。


「すごい数の本だな!」

「ん、これは凄い。学者か何かの家だったのかもしれない」


 そこはみっちりと本の詰まった書架の並ぶ、資料室か何かのような部屋だった。奥にテーブルのようなものも見えるので、もしかしたら地下の書斎か、研究室だったのかもしれない。

 俺は書架の本をどんどんインベントリに収めていき、その本の名前をチェックしていく。そうすると。


・アドル教経典オミット王国歴109年度版(状態保存)

・アドル教経典オミット王国歴109年度版写本(状態保存)×2


「あったよ! アドル教の経典が! それも原本と写本!」

「よかった」


 アイラ、そこは是非『でかした!』と言って欲しかった。無論、ネタが通じるわけもないのだが。


「おォ? お目当ての本があったのかい?」

「よかったっすね!」

「あんな大仰な滞在設備を作ったのに、二日で見つけちゃったわね」


 確かに。こんなに早く見つかるなら畑までは要らなかったな……いや、それでもあそこには安全な寝床と水源、そしてある程度の食料供給能力があるわけだし、後方拠点の周辺開拓に役立つだろう。無駄にはならないから気にすることはないな。


「普通なら地下室の場所を探すのにも掘り起こすのにも時間がかかるでしょう。これもコースケ殿とグランデ様の力の賜物ですね」

「うむ、妾は有能じゃからな!」


 ザミル女史に褒められたグランデが腰に手を当て、誇らしげに薄い胸を反らしている。そのポーズ、気に入ったのかな? 可愛いから良いと思うけど。


「早速拠点に持ち帰って解読してみる。これで期待するような内容じゃなかったらがっかり」

「それもそうだな」


 もし現在のアドル教主流派の主張する亜人排除の教えが意図的に改竄されたものでなく、古来よりの教えだった場合一気にアドル教懐古派の立場は厳しいものになる。

 インベントリから目的の本を取り出してみると、保存方法が良かったのか案外しっかりとした感じであった。最低でも三百年近く経っているブツの筈なのだが。この状態保存ってカッコ書きの効果だろうか。


「しっかりと状態保存の魔法がかかっている。見せて」

「ああ」


 アイラが俺の手から分厚いアドル教の経典を受け取り、パラパラと流し読みをした後、裏表紙やその内側、最後の方のページを確認する。


「オミット王国が滅びる三十年前に写本されたもの。年代的には真実の聖女が求めているものに該当している」

「あとは中身だな……しかし、見つかった本を見てみると、他の本も原本だけでなく写本が結構あるな。もしかしたら写本師の倉庫か作業場だったのかもしれん」

「なるほどっすね。あれだけ本が沢山あったのも納得っす」

「本は高いものね」

「そうなのか」


 オミット王国崩壊から三百年経った今も、この世界の印刷技術はあまり進んでいないらしい。ふむ、印刷技術か……広めるのは結構危なそうな技術だなぁ。とりあえずスルーで。


「とりあえずは目的達成か。もっと長引くかと思ったけど、呆気なかったねェ」

「早く片付いたことは良いことです」


 どんぴしゃりで写本師の地下倉庫を掘り当てたのは豪運だったな。都合が良すぎて俺をこの世界に放り込んだやつに仕組まれた疑惑すら出てくるが……まぁ、確かめる術はないし、俺達に都合が良い分には構わないか。


「目的のブツが見つかったならもうこれ以上探索する必要は無いねェ。作業は切り上げってことで良いかい?」

「そうしよう。それで良いよな?」


 俺が視線を向けると、アイラもザミル女史も頷いた。グランデ? グランデは興味なさそうにあくびしてるよ。グランデからすれば経典探索に来たと言うよりは、ただ俺についてきただけなんだろうから当然といえば当然の反応か。食べることができるわけでもない書物にグランデが興味を持つとも思えないし。


「よし、それじゃ帰ろう。すぐ帰ろう」


 そしてアイラに解読を進めてもらっている間に俺は皆で乗れる大型エアボードを作るとしよう。

 作っておけば何かしらに役立ちそうだからな。

ここ数日体調が優れねぇ……寒暖差が……_(:3」∠)_

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ