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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
荒野の遺跡でサバイバル!
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第158話~駄鬼~

「なんすかこれ!? なんすかこれ!?」

「俺とアイラが作った新しい乗り物の試作品だ。試作型エアバイク……いや、エアボード? ホバリングしてるわけじゃないからホバーボードは違うし……レビテーションボードは長いな。エアボードでいいや」


 試作型エアバイク改め試作型エアボードを前に大興奮するベラと、それをなんとも言えない表情で見ているシュメルとトズメ。ザミル女史も興味深そうに試作型エアボードを見ているな。


「これ、乗り物なんですか?」

「確かに座席みたいなものはついてますわね」

「これがどうやったら動くんやろねぇ?」

「……?」

「乗り物……妾のお株が奪われる……」


 ハーピィさん達は少し遠巻きにして試作型エアボードを見ているようだ。わかってるね、君達は。俺が試作品というものは本当に試しに作ったもので、安全性はあまり考慮されていないということがよくわかっている。

 そしてグランデ、そんなに絶望した表情をしなくていいから。別にそういうつもりじゃないっていうか、自分の価値を乗り物的な方面に見出さなくていいから。

 どうしてこんな騒ぎになっているのかというと、新しい魔法について考え込み始めたアイラが動かなくなってしまったので、俺は俺でゴーグルなどの開発を進めていたのだ。そうしたら遺跡やその周辺を調査していた皆が戻ってきて、試作型エアボードを発見。今に至る、と。


「どれ、実際に動かしてみせようか」


 そう言って俺はゴーグルとマスクを装備し、試作型エアボードを起動してゆっくりと周りを走り始めた。


「おおおお! なんかすごいっす! ふわっと浮いてススーッと動いてるっす!」


 実に直感的な説明をありがとう。接地していない分地面との摩擦が無いからなのか、ある程度速度が出ると慣性でかなり移動できるなぁ。空気抵抗を軽減できる風の障壁魔法を組み込んだらかなり燃費良く長距離を移動できるんじゃないだろうか?

 というか、レビテーションはホバーのような方法で浮いているわけじゃないみたいなんだけど、どうやって浮いてるんだ、これ。質量を誤魔化しているのか? それとも反重力的な方法なのか? 物体に浮力を与えているのか……?

 謎だ。魔法だから細かいことは考えないほうが良いんだろうか? 考えるな、感じろ的な? なんかアイラが俺の能力に対して『不条理』と言う気持ちがわかってきた気がする。魔法って不条理だな。アイラにこんな事を言ったら全力で腹パンされそうだが。

 皆のところに戻ってきて逆噴射も使いながら速度を落とし、接地してブレーキをかける。やっぱブレーキが問題だなぁ。


「こんな感じでな。不整地での高速移動ができるようにと作ったんだ。見ての通り叩き台は出来上がったから、後は細々としたところを詰めていくってところだな!」

「あたいも乗ってみたいっす!」


 大興奮といった様子でベラが手を挙げる。えぇ……これ試作品だから安全性とか微妙だし、壊されたら困るから遠慮して欲しいんだけど。


「……」


 物凄くキラキラとした目で見られている。こう、キラキラした期待の眼差しを向けられるとなぁ。


「……ぶつけるなよ」

「大丈夫っす!」

「絶対にぶつけるなよ。試作品なんだからな」

「大丈夫っす!」


 意気揚々と試作型エアボードに乗り込んだベラに操作方法を教えてやる。ふんふんと聞いているが、ちゃんと理解しているのだろうか? とても不安だ……いや、レバー二本だけだし、前に倒すか後ろに倒すか両方外に倒すか内側に倒すかしかないんだから大丈夫だよな。


「もう一度言うぞ、絶対にぶつけるなよ。フリじゃないからな? 絶対にぶつけるなよ!? 安全運転で行けよ!?」

「大丈夫っす! じゃあ早速行くっす!」

「あ、バカ!? いきなり両舷全力にするやつがあるか! もっと高度を上げろ!」


 試作型エアボードの左右に設置された推進装置から勢いよく風が噴き出し、物凄い勢いで加速してベラの乗った試作型エアボードが発進していった。そして……。


「ウワーーーーーッ!?」

「ああぁあぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ものの見事に岩に接触してクラッシュした。発進からクラッシュまでその間十秒弱のことであった。


 ☆★☆


「うぅ……許して欲しいっす」

「は?」

「うぅ……」


 首から『私は貴重な試作品を壊しました』と書かれた木札を提げ、ミニスカメイド服を着せられた駄鬼が地面に直接正座をしたままベソをかいていた。俺はその横で大破した試作型エアボードを修復中である。

 普段滅多に怒ったりはしない俺であるが、今回の件ばかりは流石におこである。激おこである。再三注意を促したというのにこのザマである。許されない。ミニスカメイド服を着せて地面に直で正座をさせるくらいでは罰が軽すぎるのではないだろうか? 下に砂利でも敷いて膝に重石でも載せようかな?


「コースケさんがここまで怒っているのは初めて見るかもしれませんね」

「そりゃァ、怒るだろォ……」


 少し離れたところでシュメルとピルナがこちらの様子を窺っている。

 試作型エアボードの大破状況は……まぁボード本体の破損はなんてことはない。所詮木の板だ。ただ、左側の推進機と推進機に魔力を伝達する回路がぶっ壊れたのが面倒だった。

 まぁ修復自体はね、鍛冶施設の修理機能で修理できるみたいだから良かったんだけどね。時間はかかるけど。


「あのな、ぶっ壊したことそのものにも俺は怒っているが、それ以上に危なかったから怒ってるんだよ、俺は。当たったのが岩だったから良かったが、その先に居たのがアイラやハーピィさん達だったら即死してた可能性だってあったんだぞ。それに、乗ってたお前も危ないんだよ。投げ出された先に岩があったら大怪我してたところだ。打ちどころが悪かったら死んでたかもな」

「面目ないっす……」


 小柄で華奢なアイラやハーピィさん達だと冗談でも何でも無く即死してた可能性も本当にある。あれだけ注意したのにまったくこの駄鬼ときたら。

 やはり高速移動できる乗り物を作るのはやめたほうが良いだろうか? あちこちで重大な交通事故が発生する未来が見えるな。馬車と同じように扱ってくれれば良いんだが、馬車よりお手軽にスピードが出るからな……もし量産して解放軍に配備するなら、教習所と免許制度が必要かもしれん。


「まぁ、修理はなんとかなりそうだから良いや……お前はしばらくそこで正座な。で、探索の方はどうだったんだ?」

「空から探索して見た限りでは、地下への入り口のようなものは見当たりませんでしたわ」

「やっぱ掘らなきゃダメみたいやねぇ」

「なるほど。地上探索班はどうだった?」

「遺構を確認しましたが、かなり大きな施設だったようです。後方拠点がかつての王城であったことは間違いない筈なので、そこから徒歩で約一日半から二日の距離と考えると衛星都市か、宿場町か何かの跡かもしれませんね」

「王都内の施設ってことは……まぁ考えづらいか」

「流石に距離がありますから。防衛施設かとも思いましたが、防衛施設だったら当時のエルフが徹底的に破壊していると思いますので、遺構が残っているということは違うかな、と。同じ理由で領主館などの政治的な施設でもないと思います」

「なるほど」


 ザミル女史の報告に納得して頷く。確かにあの長老達は防衛施設とか領主館なら容赦なく破壊しそうだ。流石に手心を加えそうなのは……孤児院とか病院、教育施設とかだろうか? それならもしかしたらお目当てのものが見つかるかもしれないな。


「少し地下を探ってみたが、人工的な空間と思われるものがいくつかあったぞ。グランドドラゴンである妾ならそういうのを見つけるのはお手の物じゃ」


 ザミル女史の言葉に続けてそう言い、グランデが胸を張った。


「とはいえ、やはり古いせいか脆そうなものも多くての。妾はあまり繊細な作業には向かぬから、掘り返したりはしなかった。でも、目印は立てておいたぞ」

「おお、それは凄いな。でかした! 流石はグランデだな!」

「むふふ、そうじゃろうそうじゃろう。頼れる妾にもっと褒めても良いのだぞ?」


 トテトテと近づいてきたので角の生えた頭をぐりぐりと撫でてやる。どうやら嬉しいらしい。尻尾がビッタンビッタンと地面を叩いている。グランデはわかりやすくて可愛いな。


「今日の晩飯はチーズバーガーだな。デザートにクリームとジャムたっぷりのパンケーキもつけてやろう」

「本当か!?」

「ああ、本当だ」

「やったー!」


 グランデがその場でくるくると回って喜びを顕にした。そして俺は回転する尻尾にぶん殴られて吹っ飛ばされた。とても痛い。


「ごめんなさい……」

「は、はは……なんのこれくらい。次から気をつけような」


 なんか肋骨からやばい音がなった気がするが気の所為だろう。呼吸しても痛くないし。この世界に来てレベルが上ってからというものの、俺の身体も大概人外じみてきているから、高速で治癒している可能性が否めないんだよな。生存者スキルで回復速度も上がってるし。

 念の為あとでライフポーションを飲んでおこう。


「こっちも拠点の整備は一通り終わった。見ての通り、結構大規模な高床式の拠点だな。各柱に梯子があるから、それで登ってくれ」


 ギズマは梯子を登れないからな。人間相手だと全部の柱に梯子があるのは良くないんだが、ここに攻めてくる人間も居ないだろうし利便性重視だ。

 皆を案内して上に上がる。放置は可哀想なので駄鬼も上がらせてやる。一番最初に。


「ははァ、随分可愛らしいのを履かされたねェ」

「ねこですかね?」

「うぅ……屈辱っす」

「別に見たいものでも無いんだけど……」


 全員に可愛らしいネコのバックプリント付き下着を鑑賞された駄鬼が食堂の隅っこでいじけていた。罰はこれくらいで良いだろう。流石に飯抜きとかそういう類の鬼畜な所業をするつもりはない。今日一杯はミニスカメイド服で過ごしてもらうがな!

 後は軽く施設を案内して今日の作業は終了である。皆には装備を外してもらって楽な格好で休んでもらう。荒野のど真ん中だと何が起こるかわからないということで、皆武器だけは手放さないみたいだけれども。

 アイラはどうしたかって? よくわからないけどアイラはずっとブツブツ言いながら新しい魔法を考えていたよ。なにか画期的な魔法を考えつきそうって言ってたけど、どんな魔法ができるのかね。

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