第153話~話せばわかる~
昨日はお休みを使ってあとがきを書いたりでいずごーんをやったりしていました。
奴らの中ではランナーが一番嫌いです_(:3」∠)_
「ズルい。妾もコースケの作った服が欲しいぞ」
「そうですズルいです。私達もコースケさんの作った服が欲しいです!」
「わ、私も欲しいですわ」
「うちも羨ましいわぁ」
「……」
「わかった! わかったから!」
ワイバーン革の鎧やワイバーン翼膜のマントをクラフトメニューに入れたところで翼ある者達が飛来して俺を取り囲んだ。そう、グランデとハーピィ達である。どうやら一緒に行動していたようで、グランデを探しに行ったシュメルとトズメよりも先に文字通り飛んで戻ってきた。そんなに衝撃的だったのか、俺が服を作ったのが。
「別に普段からでも言ってくれれば作るけどな……とは言っても君達の服はなぁ」
「む、何じゃ?」
「俺のクラフト能力を使いこなすには作りたい対象をある程度正確にイメージする必要があるんだ」
「それがどうかしたのか?」
「……?」
グランデが小首を傾げる。その横でエイジャも同じように小首を傾げる。ええい、可愛いじゃないか。
「つまりだな、俺の貧弱な想像力だといま着ている服を基にちょちょいといじったような感じの服しか作れない。それでも良いなら作るぞ」
「それでも良いぞ! 妾もコースケの作った服がほしい!」
「そ、そうか。ええと、じゃあグランデの服を作る前にシュメル達の武器が出来上がってるから出しておこう。ベラ、二人が戻ってきたら使い心地を試してくれ」
「わかったっす。おお、これがミスリル合金の輝きっすか」
ゴーレム作業台から武器三種を取り出し、ベラに預けておく。
「それじゃあ色々作ってみるか」
「可愛いのを頼むぞ、可愛いのを」
「難しいことを言うなよ……」
今着てるホルターネックのシャツとスカートをくっつけてホルターネックドレスにして、スカート部分は後ろにファスナー……いやホックで止めるようにして完全に開くようにすれば行けるか?
グランデは足もゴツイ爪が付いてるからこう、足を通して履くのが難しいんだよな。爪が鋭いから引っ掛けると服が傷ついちゃうし。
フリルとレースを多めに。色は白と真っ赤の二色を作ってみよう。
「できたぞ」
「ふおぉぉぉぉ……早速着てくるのじゃ!」
「アイラ、一人じゃ着られないと思うから手伝ってやってくれ」
「ん、わかった。ここで脱いじゃダメ」
アイラが早速ここで着替え始めようとするグランデを引っ張って家の中に入っていく。ここで服を脱ごうとする辺りは流石グランデだぜ。ドラゴン的には服なんて飾り以外の何ものでもないものな。
「で、次は……」
「「「……」」」
ハーピィさん達が爛々と輝く視線で俺を見つめていらっしゃる。君達はねー、どうしよっかなぁ! あんまりフリフリした服は飛ぶのに邪魔になるからあまり好きじゃないよね、君達。
とはいえグランデほどに着るのに邪魔になるようなパーツは少ない。膝から下は鳥みたいな足になってるけど足を閉じれば爪も隠れて人間の足首と殆ど大差ない大きさになるし。肩から先は翼そのものだから、長袖の服とかは着られないけど。
「色々作ってみようか。ハーピィは長袖さえ避ければ割となんでも着られるもんな」
ノースリーブ――つまり袖さえ無ければ良いのだ。ノースリーブならワンピースでもドレスでもなんでも着られるし、ノースリーブの上着とホットパンツやミニスカートなんかを合わせても良い。
あとは各人のサイズに合わせ、色やデザインを変えていけば良い。黙々と作り続ける。作った先からハーピィさん達やアイラが衣装を家の中に運んでいって着替えては出てくる。うん、そういえばピルナ達とアイラの体格はほぼ一緒だから実は同じ服を着れるね、君達。
そうしているうちにファッションショーを目撃した後方拠点の住人……つまり女性達のギャラリーが増え始める。この流れはマズいですよ!
「コースケ」
「はい」
「諦めも肝心」
「……はい」
獣人の皆さんにラミアさん、お子様かと思ったらドワーフの御婦人、リザードウーマン……ザミル女史。しれっと混ざらんでください。ああはい、作りますとも。ザミル女史には軍服とかが絶対キマると思うんですけどどうです? え? 白いフリフリ……?
ふむ、作ってみましょう……意外と言っちゃ失礼かもしれないけど似合うな。
☆★☆
「疲れ申した」
「お疲れ」
夕方頃になってやっと解放された俺は家の中でアイラに膝枕をしてもらっていた。俺に膝枕をしてくれているアイラは口許に微笑みを浮かべながら小さな手で俺の頭をなでなでしてくれている。とても癒やされる。
シュメル達の武器とワイバーン革の防具は調整は必要ないとのことだったので手がかからなかったのは良いのだが、押し寄せたご婦人方に服を作るのが大変だった。
「良いガス抜きになったと思う。ここは娯楽が多いとは言えないから」
「それもどうにかしないといけないよなぁ」
「そうだけど、それはここに住む彼ら自身が考えること。大丈夫、ここに住んで暫くすればそのうちに自分達で色々な催しを開いたりするようになる。今、まだ彼らは生きるのに必死なだけ」
「そんなもんかね」
「そんなもの」
コクリとアイラが頷く。アイラがそう言うならそうなのかな。でも、やっぱり何かしたいなぁ。
「そう言えば、ゴーレム通信の中継器の開発はどうなんだ?」
「もうじき完成する。どうして?」
「いや、開発が終わればラジオ放送を開始できるんじゃないかと思ってな。あれは十分娯楽になりえるものだから」
「ラジオ放送……確か、ゴーレム通信で各地の情報を伝えたり、歌や音楽を聞かせたりするやつ?」
「そうそれ。ニュースは些細なものでも良いんだよ。例えばある町でこんな祭りが開かれたとか、ある街ではこんな食べ物が美味しいとか、ある街と村の間の街道で魔物が出現していたけど、解放軍の部隊が駆除して安全になったとか、そういう感じのものでいい。知らない土地の知らない情報が流れるのを聞いているだけでも楽しいもんだ」
「なるほど。確かに楽しそう」
「そうだろ? 研究が完成したら是非実現したいな」
まぁ、ラジオ放送にはそういう娯楽的な要素だけじゃなくて軍事的な要素もあるんだけどな。プロパガンダを流したりね。この世界では識字率はそう高くないと聞いている。つまり、あまり教育が行き届いていないということだ。そんな国でプロパガンダ放送なんて流したら……うーん、危ないかなぁ。いや、上手く使えばとても有用な筈だ。危険性については実用化の目処が立ったらしっかりと説明することにしよう。
「妾にもかまえー」
「おふぅ」
ずどーん、とグランデが長椅子に横たわっている俺の腹に突撃してきた。本気で突撃されたら長椅子ごと俺は吹っ飛んで真っ二つになっているところだな。守りの腕輪とちゃんと手加減してくれるグランデに乾杯だ。
「のうコースケよ。妾もこうして人の姿を得てお主に嫁いだわけじゃ」
「おう」
「なのにお主は妾にあまり触れようとせなんだな?」
「別にそういうつもりはないけど……」
アイラの膝枕から身を起こして長椅子に座ると、グランデが俺の目の前に仁王立ちした。仁王立ちしても椅子に座っている俺と大して目線が変わらない。とってもミニマムなドラゴン娘である。
「いいや、そうじゃ。お主はシルフィともアイラともハーピィ達ともあの魔神種ともベタベタイチャイチャするのに、妾に対しては精々頭を撫でるくらいではないか」
「そう……か?」
そう言われればそのような気もする。あんまりハグしたりはしてないかもしれない。
「それに、妾以外とはその……ま、まぐ……その、もっと密接にイチャイチャしておるだろう!?」
「ええ、それは、はい、そうですね」
「妾とアイラやピルナとはそんなに大きく体格も変わらんではないか!? なんで妾だけその……そういうことをせんのじゃ!?」
「なんでと言われても……」
だってグランデだし……いや、可愛いけどね? 俺的にはグランデはペット枠というか癒やし枠なわけで。どうにもそういう気が起きないのだから仕方がないだろう。
「この前だって妾が寝ているフリをしている間に食い物と飲み物まで寝室に持ち込んでイチャイチャイチャイチャと……何故妾だけ仲間はずれにする?」
俺を見つめるグランデの目が涙目になってくる。なにか言わなければ、と思ったその時である。
「大丈夫、今回の遠征の目的はそこにある」
隣に座っているアイラさんがわけのわからないことを言い出した。ほわい?
「ここまで来たら暫く飛ぶ必要はない。ちょっと身体の調子がおかしくなっても大丈夫」
「待て待て、何の話だ」
「ドラゴンに効くかどうかはわからないけど、ちゃんと薬も用意してきた」
「何の薬」
「私達も手伝いますから!」
「手伝いますわ!」
「旦那さんの弱いとこはばっちり把握してるから心配いらんよ?」
「……」
「わぁ急に会話に入ってきた!」
少し離れたテーブルに着いて何か話をしていたハーピィさん達も参戦してくる。そしてアイラがグランデに何か説明しながらローブの裾あたりから色とりどりの液体が入った薬瓶のようなものを見せている。やだ何あれ、虹色に輝くヤバそうな薬もあるんだけど。それ服用したら月までぶっ飛ぶヤバい薬なのでは?
「まだ晩御飯も食べてないし落ち着こう。な?」
「お腹が空いたら途中でコースケが出してくれればいい。問題ない」
「さぁ、今までグランデさんを待たせに待たせたんですから覚悟を決めましょう」
「待て、落ち着け、話せばわかる」
「問答無用」
抵抗しようとする俺の手首に魔法の手枷が嵌められる。ふっ、愚かな。俺に状態異常系の魔法は効かな――あるぇ?
「魔力のないコースケに体内の魔力や魔力回路に作用させる類の魔法は効かない。でも、物理的な拘束力を持つ魔法に関してはその限りではない」
「は、謀ったなアイラ!?」
「いつまでたってもグランデに手を出さないコースケが悪い。グランデ可哀想。連れて行って」
「はーい!」
「痛くしないから安心してなぁ」
「天井のシミを数えている間に終わりますわよ」
「……」
アイラの魔法で拘束された俺をハーピィさん達が寝室へと向けて引きずり始める。お、俺は屈しないぞぉ! アイラの怪しい薬になんて、絶対に負けない!
お薬には、勝てなかったよ……_(:3」∠)_