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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
荒野の遺跡でサバイバル!
149/435

第148話~遺跡探索に出発~

 目的地はオミット大荒野。目的は教えが改竄される前のアドル教の教典。同行者は俺とアイラとザミル女史と冒険者数名、それとグランドドラゴンのグランデに、ハーピィのピルナ、イーグレット、エイジャ、そしてカプリ。

 グランデとピルナ達は空を飛べるから良いとして、当然ながら俺やアイラ、ザミル女史に冒険者達は空を飛べない。なので、俺達を運ぶためのゴンドラを作る必要がある。


「珍妙な形になったの」

「空気抵抗を考えるとどうしてもな」


 俺とグランデの目の前にあるもの。それはなんというか、一言で言えば太いミサイルのような形をした代物だった。全体的に流線型のボディで、ところどころに外を見るための丸いガラス窓がついている。一応、安定翼も四枚つけておいた。効果の程はわからないが。

 いや、正直に白状しよう。こいつはまるでおもちゃの宇宙船とかロケットみたいだ。もっとも、材質は木材をメインにしてできるだけ軽量化しているんだけど。

 後部に扉がついていて、そこから中に乗り込めるようにしてある。中の座席は全部で八席。乗り物酔い防止のために座席事態に板バネのサスペンションを組み込んであるが、どこまで効果があるかはわからない。グランデにはできるだけ揺らさないように頑張ってもらうしか無いな。


「これを抱えて飛ぶのか……」

「無理か?」

「いや、とにかくやってみるのじゃ」

「わかった。人数分の重りを入れるぞ」


 一個あたり50kgの重りを八人分、合計400kg分の重りをシートベルドで座席に固定する。重さに関してはできるだけ削ったが、空中分解なんぞをした日には全員お陀仏だ。耐久性も考えるとスカスカにすることもできなかったので、ゴンドラ自体も結構重い。


「むっ、なかなかの重量じゃな。だが……」


 グランデが守りの腕輪を外し、スカートのポケットに収納する。今日のグランデはホルターネックシャツにミニスカートという出で立ちだ。先日、俺とダナンとレオナール卿が領主館で話し合っている時にアーリヒブルグの仕立て屋で作ってもらったものであるらしい。

 あの日、朝起きたら誰も居なかったのは、俺がお土産に持ってきた反物で早速服の注文に行っていたからだったようだ。特に、グランデは彼女に合った服が無くてビキニアーマーなんぞを着ていたものだから、既成品を手直ししてすぐにこのシャツとスカートを作って貰ったのだとか。

 グランデは手足にごっつい爪がついているから袖のある衣服を着れないし、翼があるから背中の開いた服でないと着られない。パンツ類も履けないので、自然とスカートしか履けないというわけだ。下着も紐パンしか履けないし、紐を結べないので自分で履くこともできない。今日も誰かに履かせて貰ってきたのだろう。


「むんっ」


 グランデがロケット型ゴンドラの取っ手を掴み、翼を大きく広げてふわりと浮かび上がる。


「うむ、大丈夫そうじゃな。ちょっとこのまま飛んでくるぞ」

「ああ、気をつけてな」


 グランデが重りを乗せたロケット型ゴンドラを抱えたまま飛んでいく。見ている限り、ふらつく様子もなく飛べているようだ。ちなみに今日のグランデのおぱんつは白でした。スカートが短いからよく見えるな。見えたからどうってことはないが。色気が皆無だし。


「ゴンドラはこれで良いとして……」


 後は物資と冒険者か。長期滞在になりそうなら向こうで畑を作っても良いな。作物の種や苗も用意してもらうとするか。暫く上空を旋回したり、ちょっと遠くまで飛んだりして戻ってくるグランデを眺めてから着陸してきたグランデと共に解放軍の物資倉庫へと向かうことにした。


「どうだ? 長距離飛べそうか?」

「あまり長時間だと腕が疲れそうじゃの」

「休み休みで行こう。そこまでグランデに無理はさせたくないし、何より手が滑って落ちたとかなったら俺も含めて全員お陀仏だから」


 いざというときのために落下速度を抑えるパラシュートは備えてあるけどな。内部からも外部からも展開させられるやつ。これも後で実際にテストもしないといけないな。いざ使った時に「パラシュートが開かないだって!? なんてことだ、もう助からないゾ☆」とかなったら困る。

 町の外に作られているグランデの寝床から街門を通ってアーリヒブルグの中へと入り、物資備蓄倉庫へと移動する。そこには丁度メルティがいた。


「メルティ」


 頭に巻角を生やしたメルティが俺の声に振り向き、柔らかい笑みを浮かべる。ああしてみると優しい羊系お姉さんに見えるだろ? でもあの角、羊じゃなくてあくまのつのなんだぜ。


「コースケさんですか。テストの方は完了したんです?」

「とりあえず飛行テストはな。落下テストはまだだ。あんまり連続でやるとグランデも疲れるだろうし、ちょっと休憩がてら発注をな」

「発注ですか?」

「もしかしたら向こうで長期滞在になるかもしれないから、作物の種とか苗も用意しておいてほしいんだよ。それだけで補給の心配がなくなるし」

「ああ、なるほど。わかりました、用意しておきますね」


 メルティが懐からメモを取り出してボールペンでカリカリとやり始める。勿論、あのボールペンは俺がクラフトで作ったものだ。ある日、羽ペンが使いにくくてたまらないと愚痴を漏らしていたメルティにプレゼントしたものである。

 それはもう熱烈に喜ばれ、ついでに一〇〇〇本発注された。それ以来、定期的に数百本単位で作らされていたりする。この世界で普及している一部の紙では書きにくかったりすることもあるが、概ね便利な品として受け容れられている。問題は俺以外に作れそうにないという点だろうか。

 正確に言えば、作れろうと思えば作れるが、量産性やコストパフォーマンスを考えるととてもではないが作るのは無理、ということらしい。ちなみに材料は鉄と木、それとスライム系の素材である。スライム系の素材がどうもプラスチックの代わりやインクの材料になるらしい。すげぇなスライム。


「そういえば、冒険者の手配ってどうなってるんだ?」

「ああ、そちらの手配は済みましたよ。物資の用意に合わせて、三日後からという形でクエストを出してます」

「冒険者のう。どのような者なのじゃ?」

「信頼できる人達ですよ。私もコースケさんもアイラも知っている人達です」

「……それってもしかしてシュメル達か?」

「そうですけど……?」

「Oh……ゴンドラ作り直さないと」


 シュメルは赤鬼族、パーティメンバーがもう二人いて、その二人も赤鬼族とサイクロプス族だ。全員女性だが、鬼族なので身長も大きいし肉付きも良い。決して太ってはいないというか一部ムキムキなくらいだが、単純に質量が大きいんだよな。


「グランデも、もっと重くても大丈夫か?」

「む? 重量には余裕があると思うが何故じゃ?」

「同伴者が鬼族三人らしい」

「ふむ……?」

「身長が俺の一.五倍くらいあって、筋肉質な女性が三人ってことだ」

「それは重そうじゃの」

「うん。もしかしたらゴンドラも大きくしなきゃならないかもしれない」

「これはいっそ妾がなんとか竜化したほうが良いのではないか?」

「三日でできるか?」

「気合いを入れれば……?」


 こてん、とグランデが小首を傾げる。うん可愛い。でもそうじゃない。


「俺はゴンドラを作り直すから、グランデは竜化を頑張ってくれ」

「うむ」

「あの……すみません、コースケさん。ちょっと考えが足りませんでした」


 メルティが申し訳無さそうな顔で謝ってきたが、俺はその謝罪に首を振って答えた。


「いや、力量と信頼性を考えれば他の選択肢はほぼ無いと思うから、仕方ないと思う。むしろ、先に聞いておかなかった上に予測もできなかった俺が甘かった。ゴンドラ自体は無駄にはならないから大丈夫だ。改造だけでなんとかなるかもしれないし」


 普通の背丈の人を最大八人運べるゴンドラとしては申し分ない性能に仕上がっているはずだし、問題はない。今回作った八人乗りのゴンドラを鬼族三名、人族三名の六名乗りに改造すれば良いだけだしなんとかなる。きっとなる。ちょっと窮屈になるかもしれないけど!


 ☆★☆


 結論から言うとゴンドラに関しては改造でなんとかなった。ちょっと窮屈になると思うが、なんとかギリギリ、といったところだろうか。物資の調達は何の問題もなし。グランデの竜化?


「無理だったのじゃ」

「無理だったか」

「もう少しな気がするのじゃ」

「そうか」

「うむ」


 そう言ってまふまふまふまふと幸せそうにホットケーキを頬張るグランデを一体どこの誰が非難できようか? きっとここで非難したらこの幸せそうな顔が一転、悲しそうな顔になるに違いない。少なくとも俺には無理だ。


「別に空がダメなら馬車と徒歩で移動したって良い。時間はかかるようになるけど拘る必要はない」

「そうですね、旅路は別にゆっくりでも良いと思いますよ」

「そうですわよ急ぐ必要はありませんわ」

「その分ゆっくりイチャイチャできるしなぁ?」

「……」


 同じく朝食のホットケーキをまふまふまふと食べているアイラとハーピィ組のピルナ、イーグレット、カプリ、そして無言でコクコクと頷くエイジャ。


「……早ければ早いほど助かるんだが?」

「そうですよぉ、早ければ早いほど事態が動くのも早くなるんですから、できる限り急いで下さいねぇ?」

「考えてみれば、私達はすぐにそっちに行けるんですしあまり長期化するようなら交代するのもありですよね?」

「そーだね!」


 安全第一、時間がかかっても良いと主張する遠征組に対してジト目を送るシルフィやメルティその他から文句が飛ぶ。やめて! 俺のために争わないで!


「ゆっくりは冗談としても安全第一は絶対。少しでも無理そうと思ったら地上での移動も考慮に入れる」

「そうですね。私達やグランデさんはともかく、コースケさんやアイラさんは墜落したら終わりですし」

「念の為パラシュートはつけてあるけどな」


 食後のお茶を飲みながら呟く。一応あの後パラシュート投下実験も行って安全性は確保した。問題はないはずだ。


「まぁその、敢えて自由落下したいもんでもないからヤバそうだったら素直に地面に降りてくれよ」

「うむ、任せておけ」


 口の周りをクリームでベタベタにしたグランデがふんすと鼻息を荒くする。ああもう、こんなにして。ベタベタの口元をナプキンで拭いてやる。


「グランデと接する時のコースケはなんというか……私達と接する時と雰囲気が違うな」

「違う。見ているとなんだか胸の奥が温かくなる」

「グランデちゃんに接する時は女性に対してと言うよりも子供に対してとか、娘に対して接するような感じよねぇ……」

「父性を感じますね」

「単に、グランデくらいしか俺が世話を焼かなきゃならない女の子がいないだけだぞ。君達はしっかりしてて俺がこうやって世話を焼く余地が無いだろ」


 俺の言葉にシルフィ達は互いに顔を見合わせた。うん、急にぽろぽろ食べ物を零したり飲み物を飲む時に口の端から垂らしてもダメだからね。あからさま過ぎる。


「そういうのはそのうちな、そのうち」

「ぐぬぬ」

「くっ、負けた気分です」

「私達はこれからがチャンスタイム」

「ですね」

「そこまで必死になるものでは……はしたないですわよ」

「うちは旦那さんを甘やかすほうが好きやからねぇ……」

「……?」


 シルフィとメルティが悔しそうに顔を歪め、アイラ達が不穏な会話をしている。うん、キリッとしたクール系美人さんだけど、エイジャだけはなんとなくグランデと同様に世話を焼いてあげたいオーラがあるな。是非今回の遠征中に構ってみるとしよう。


 ☆★☆


「よォ旦那、久しぶりだねェ」

「お久しぶりっす」

「久しぶり。今回はよろしくね」


 待ち合わせ場所であるアーリヒブルグの南門でシュメル達が待っていた。一番前にいるのが解放軍の一員として一緒に戦ったこともある赤鬼族のシュメルで、その後ろにいるのがシュメルのパーティーメンバーである赤鬼族さんとサイクロプスさんだ。そう言えば名前を聞いてないな。


「久しぶり。調子はどうだ?」

「悪くないよ。旦那に作ってもらったこいつも良い感じだしねェ」


 そう言ってシュメルはニヤリと笑い、自分が持っていた大きな金砕棒を指先で弾いてキィン、と良い音を鳴らした。


「そっちの二人も久しぶり。そう言えば、この前は名前を聞いてなかったな」

「んお? そうだったっすか?」

「そう言えばそうかもね。私達は貴方のことを知っていたから、とっくに名乗っていたつもりだったわ。私の名前はトズメよ。よろしくね」

「あたいはベラっす」


 大木槌を担いだサイクロプスさんと大斧を担いだ赤鬼族さんがそれぞれ自己紹介をしてくれる。クール系サイクロプスのトズメさんに下っ端系赤鬼族のベラさんね。覚えたぞ。


「ところで、馬車はどこに用意してあるんだい? まさか歩いていくわけじゃないだろォ?」


 金砕棒の先端を地面に突き立ててその上に手を置いたシュメルが辺りを見回す。うん、いくら探しても馬車はないんだ。


「馬車は使わないんだ。歩きもしないけど」

「ふん?」

「とりあえず門の外に出ようか」


 全員出連れ立って南門を出て、すぐに街道を逸れて街道脇の草むらへと移動する。


「コースケ殿、馬車も使わず歩きもしないとは……?」


 刀身の長い十文字槍を肩に担いだリザードウーマンのザミル女史が首を傾げながら聞いてくる。


「これに乗っていくんだ」


 ザミル女史の質問に俺は六人乗りのゴンドラを出すことで答えた。見た目は完全におもちゃのロケット的なアレである。


「これは……?」

「まぁ、乗り物みたいなものかな。安全性はテスト済みだから大丈夫大丈夫。実際安全」


 乗り込み口であるロケットの噴射口に当たる部分を開き、内部を見せる。覗き込めば、内部には6つの座席が見えることだろう。ザミル女史の分は尻尾があるから一人だけスツールみたいな感じになっているけど、許して欲しい。


「……ええと?」

「まぁまぁまぁまぁ……とりあえず乗り込んでくれ。あ、重量バランスの関係で三人はこことこことここのどこかに座ってくれな。あと、見ての通りあまり広くないから武器は俺が預かるよ」

「わかったっす」


 ザミル女史は少し嫌がったが、鬼娘達は素直に俺に武器を渡してくれた。ザミル女史も最終的には折れてくれたけど。


「全員シートベルトは締めたな? ザミル女史以外は」

「ん、締めた」

「お、おゥ……締めたけど」

「締めたっす」

「ねぇ、これ何の乗り物なの?」

「……」


 ザミル女史は何か感づいたのか、落ち着きがなくなってきた。ははは、流石だな。勘の良いことだ。だがもう遅い。


「グランデ、扉を閉めてくれ」

「うむ」

「閉めたら頼むぞ」

「任せるが良い」


 後部の扉――というかハッチが閉じられ、グランデが天井に上がる音がトン、トトンッと聞こえてくる。


「お、おィ、ま、まさか」

「よし、離陸だグランデ!」

「のじゃあああぁぁぁぁっ!」


 ギギ、と少しだけ木材が軋むような音が聞こえた。それもつかの間、なんとも言えないふわりとした感触が俺の内臓をくすぐる。無事に離陸したようだ。


「グランデ、重量は大丈夫か?」

「うむ、問題ないぞ。ハーピィ達よ、遅れるなよ!」

「任せてください!」

「いくら相手がドラゴンでもそう簡単に遅れは取りませんわ」

「……」

「お手柔らかになぁ」


 外から聞こえてくる声は実にほのぼのとしたものだ。俺の隣りに座っているシュメルは赤い顔から血の気を引かせて震えてるけど。


「だ、旦那ァ……ま、まさかこれ」

「うん、飛んでるぞ。空中散歩を楽しんでくれ」


 ニッコリと微笑んでやる。俺の返答を聞いたシュメルがヒッ、と短く息を吸った。


「いやああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「はっはっは、元気だなぁ」


 シュメルの叫び声を響かせながらドラゴン特急が空をゆく。うん、残念ながらもう降りられる高度じゃないんだ。だから観念して欲しい。

週に二日位休みを設けるべきかなと思い始めてきました(´゜ω゜`)(毎日更新はつまり週休ゼロの超ブラック労働

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― 新着の感想 ―
馬車の時にも思ったのだけれど サスペンションは、単独では直接の衝撃吸収には 有効だけれど(馬車なら路面の凸凹等) サス単体だけだと恐らく乗り物酔いは酷く※なりますよ ※人間の三半規管というか乗り物酔…
[一言] シュメルまさかの高所恐怖症?
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