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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
荒野の遺跡でサバイバル!
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第146話~相談~

 さて、今後の方針については冷静かつロジカルに、効率を考えて決めなければならない。


「というわけでお願いしますメルティ先生、アイラ先生」

「何が『というわけ』なのかわかりませんけど、わかりました」

「任せて」


 俺がそうできるとは正直思っていないよ。ああそうさ! 俺に任せたら最終的には『面倒だから全部吹き飛ばそうぜ!』みたいなことになるからな!

 ぶっちゃけ向こうがうだうだ言うなら吹き飛ばしても人的被害が少ないところを爆発ブロックなり魔煌石を用いた魔煌爆弾なりで盛大に吹き飛ばして『我々の要求を飲まなければ次は聖都を吹き飛ばす』みたいな質の悪いテロリストのようなことをやりかねない。

 俺って自分のことを正確に分析できてるだろ?


「それで、結局のところ何の話なのだ?」


 食事を終えるなりいきなり変なことを言い始めた俺にシルフィが首を傾げる。今、この場に居るのは俺とシルフィ、メルティにアイラ、そしてグランデだけだ。ハーピィさん達は今日は皆で公衆浴場に行って解放軍の宿舎で寝まーすと言って出ていった。ちなみにグランデは部屋の片隅に設けられたクッション空間に埋もれて寝ている。


「昼にダナンやレオナール卿、ザミル女史と話したんだけどな。今って聖王国と膠着状態に陥っているだろう? 時間をかけている間にハーピィの爆撃戦術に対応される可能性は高くなるし、地力の強い向こうが本腰を入れて増援を出してきたら厳しいことになる。だから、現状を打開するために俺にできることはないかって考えていたんだ」

「なるほど。それでどうしたら良いか相談したいというわけですね」

「うん、そういうことだ。三人は現状の膠着状態についてどう考えているんだ?」

「私はあまり好ましい状況だとは思っていませんね。コースケさんの仰ったように、そもそもの地力は向こうが上です。時間をかければかけるだけこちらが不利になります。兵力も整ってきたことですし、速やかに捲土重来を果たすべきではないかと考えています」


 メルティが真っ先にに口を開いて強硬論を展開する。


「時間をかければかけるだけ不利になるという意見には異を唱える。今、コースケの提供する新しい素材や高級素材の低コスト化によって解放軍の技術力は飛躍的に向上しているし、装備の高品質化にも目処が付いている。兵数が少ないのは確かだけれど、兵の質、装備の質、そして戦術の幅の広さという意味ではこちらは聖王国を圧倒的に凌駕している。兵数が物を言う平野での会戦ではこちらに勝ち目は薄いけど、決して会戦を行わずに防御戦や待ち伏せを仕掛け続けて敵を削りに削れば私達は聖王国を殺し切ることができる。コースケの存在が前提になるけど」


 メルティの速度を重視する強硬論にアイラが反論をする。いや反論……反論か? 積極的に攻めなくても防御戦闘で十分に敵を粉砕できるから急ぐことはないって言ってるだけだよな。聖王国に対する殺意的なものは全く変わんねーじゃねーか。


「シルフィ、二人とも血の気多くない?」

「メルティはアレだからな……アイラも基本的に敵には容赦しないタイプだし」

「なるほど」


 アレというのは魔神種だからということだろう。一見おっとり系の優しいお姉さんに見えるメルティだが、その実態はドラゴンも震え上がる突然変異体じみた戦闘能力の権化みたいな存在だからね。

 アイラはちっこくて可愛いけど、魔道士としての実力はかなり高いみたいだからなぁ。錬金術も修めているし、かつては宮廷魔道士でもあったという。こう見えて魔法のプロフェッショナルでエリートなんだよなぁ。


「できれば真っすぐ行ってぶっ飛ばす。殴ってきたらぶっ飛ばすみたいな方向じゃなくてこう、政治的なアプローチで平和的に、かつスマートに事を運ぶ方向で考えてはくれないだろうか」

「無理ですよ」

「無理」


 俺の懇願に二人は同時に首を振った。


「聖女の所属する懐古派が勢力の拡大に成功しようがしまいが、全てのメリナード王国領を取り戻すためには絶対に戦いが起こる。いくら私達がメリナード王国に駐屯していた聖王国軍を撃退して勢力を拡大したと言っても、聖王国からすれば私達はまだまだ弱小勢力。交渉で領土を返還、割譲するなんてことはしない。懐古派が勢力を拡大すれば戦う相手が多少減るかもしれない。それだけ」

「……私が言おうと思ったことを全て言われてしまいました」


 メルティが悔しげに表情を歪め、アイラがドヤ顔で鼻息を荒くする。とりあえず微妙に涙目のメルティの頭を撫でておく。


「私も」

「はいはい」


 アイラも頭を撫でられに来たので撫でておく。こうなるとシルフィも撫でておかねばなるまい。


「……なんだ」

「かもん!」

「……はぁ」


 溜息を吐きながらも素直に俺のもとまで来て頭を撫でさせてくれるシルフィは本当に良い子だと思う。なでなでなでなで。


「それでええと、そうだ。戦いは避けられないという話だよな」

「うん」

「そうですね」

「そうだな」

「ぶっちゃけて言うと俺はエレンとも早く大手を振って会えるようになりたいんです」


 俺は素直に心中を吐露することにした。こういうことは素直に言うのが一番いい。その結果多少痛い目に遭っても隠し事をするよりは健全だろう。


「ぶっちゃけた」

「私達にそれを言うとか変なところで勇気ありますね」

「……」


 シルフィが俺の脇腹を抓ってくる。痛い痛いすげー痛い。


「あとライム達にも会いたいです」

「コースケさん、趣味が悪くありません? あの三人、私よりも凶悪ですよ?」

「そんなに?」

「国民を盾に降伏を迫られていなかったらあの三人だけで王城を守りきっていたと思う」

「流石はあの三人だな」


 色々と酷い目にも遭った気がするが、あの三人にはとても助けられた。また会いたいし、あの最高の寝心地のベッドで寝たい。一度アレを味わってしまうとどんなベッドの寝心地も物足りなく感じる。欲望に素直過ぎる? それをひた隠しにして異常に肥大化させるよりはオープンにしておいて、行き過ぎたら皆に『めっ』ってしてもらう方が良いと思うんだよな。


「それで、話を戻すと俺のそんな願望を早期に実現するために俺にできることはないかな、という相談をしたかったんだよ」

「そんな気も起きなくなるくらいに搾り取るというのはどうかしら?」

「コースケはおねーちゃんにもっとたくさん甘えればいい」

「こーすけはわたしのだ。わたしのだもん」


 俺の右側に陣取っているメルティがしなだれかかってきて俺の顎をそっと撫で、左側に陣取っているアイラが俺の頬をそっと撫でててくる。シルフィは真正面に跪いて足の間に身体を入れて涙目で俺を見上げてきていた。


「OK、落ち着け三人とも。こんなことを三人に相談するとかどうなんだと俺自身も思っている。でも俺が頼れるのはやっぱりシルフィとアイラとメルティの三人なんだ。お叱りはいくらでも受けるからなんとか協力してほしい」


 順に三人の顔を見つめてそう言うと、彼女達は互いに顔を見合わせてから頷いた。


「お叱りはいくらでも受けるって言いましたね?」

「言った」

「たしかにきいた」


 メルティがニコォ……ととても良い笑顔を浮かべ、アイラが真顔で頷き、涙を溜めていた目をコシコシと擦りながらシルフィも頷く。墓穴を掘っただろうか? いや、俺のために皆に我慢を強いるんだ。これくらいのリスクはなんてことはない。


「ではコースケさんがなんでもするという件に関しては後でじっくりと解決するとして、ここはコースケさんの殊勝な態度に免じて知恵を貸すとしましょう」

「え、お叱りを受けるとは言ったけどなんでもするとは……」

「何か言いましたか? いくらでもお叱りを受けるということはつまりそういうことですよね? まさかシルフィを泣かしたのにやっぱさっきのナシとか言うんですか?」

「アッハイ」


 シルフィのことまで引き合いに出して微笑むメルティにNOと言うことなどできるだろうか? できるわけがない。


「とは言っても、現状コースケさん個人にできることは多くはありませんけれどね。正直言って、聖女がいかに上手く動けるかという話に全てがかかっていますから。彼女の行動を支援する方法は二つです。一つは、懐古派の主張を強力に後押しするためにアドル教の古い経典を見つけ出すこと。もう一つは神の使徒としてのコースケさんの存在を大々的に知らしめ、懐古派を支持すると公言することですね」

「なるほど」

「コースケの存在を世に大きく知らしめるのはリスクが高い。もしやるなら、最後のダメ押し。今すぐにやるのは危険が大きすぎる」

「そういうものか」

「そういうもの。場合によっては聖王国やアドル教から暗殺者が送られてくるかもしれない。メリネスブルグを解放して、コースケが王城に滞在できるようになってからにしたほうがいい」

「ライム達に守ってもらうってことか?」

「そう。あの三人がいれば暗殺なんて絶対に成功しないから」


 アイラが頷く。メルティとアイラのライム達に対する信頼感が凄いな。俺もあの三人の戦闘能力には疑問を差し挟む余地もないんだけども。


「じゃあ、まずはオミット大荒野で経典探しか」

「ん、そうするといい。探索には私も付き合う」

「えー? それはズルくない?」

「ズルいぞ」

「メルティもシルフィ姉も解放軍の運営に必須。私は研究開発部所属だから自由が効く。それにコースケの傍にいるのが研究開発を進めるのに最も都合が良い。そして探知魔法でコースケの発掘作業もサポートできる」


 完璧な理論武装であった。確かに、アイラが居なくてもアーリヒブルグの研究開発部は回るし、皆の健康を守り、怪我を治す錬金術師としてもアイラが必須というわけではない。アイラ以外にも錬金術師も薬師もいるのだから。


「ハーピィを何人かと、護衛にザミルかレオナール、冒険者を数名、それとグランデがいればいい」

「むむむ」

「こーすけぇ……」


 メルティが唸り、シルフィが涙目になる。


「シルフィ姉はコースケと一週間旅行した。次は私とハーピィ達の番」

「うぅっ……そうだな」


 ざくりと急所を突かれて涙目のシルフィが撃退される。


「メルティはコースケを単独で救出に行った時に十分二人きりの時間を過ごしたはず」

「うぐっ……仕方ありませんね」


 メルティもまたアイラに撃退され、アイラは勝ち誇るかのように両握り拳を天に掲げた。勝利のポーズかな?


「そういうわけで、準備を進めて近日中に探索行に出発する」

「わかった」

「でもその前にコースケになんでもしてもらう」


 ガシッ、とアイラが俺の腕を掴んだ。


「えっと……」

「観念する。いっぱい甘やかしてあげる」


 そう言って普段無表情でいることの多いアイラが妖艶に微笑む。ああ、これは今日もダメみたいですね。

 俺は少しでも体力を温存できるように身体の力を抜いた。激流に身を任せて同化するのだ……その前にどうかなりそうだけどな。HAHAHAHAHA!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] コースケもそろそろ夜のスキルMaxにならんかね?( )
[良い点] ご主人様とグランデがかわいい(´・ω・`) [一言] ここまで読んでの感想 これはご主人様とゆくではなく、ご主人様達とゆくですよね 途中まではマインクラフトちっくでいいっすねって感じで、…
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