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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
ドラゴンと黒き森でサバイバル!
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第139話~ドラゴン娘は手加減が苦手~

 竜達とのどんちゃん騒ぎを終えた俺達は竜の巣穴から這い出して陽の光の下に戻ってきた。腹もいっぱいになって酒も飲んだということで、ドラゴン達は満足して眠るということらしい。


「多分数日は寝たままじゃろうな」

「寝過ぎじゃないか?」

「ドラゴンなんてそんなもんじゃぞ。人族と違ってあくせく働く必要なんてないからの。基本食っちゃ寝する生き物じゃて。竜族の縄張りをわざわざ侵す間抜けもそうそういないからの」

「そうだろうな……流石にあの数の竜に寄って集って襲われたらどうしようもないだろう」

「そういうことじゃな。コースケならなんとかしそうじゃが」

「いやー、あの数が一斉に襲いかかってきたらどうしようもないだろう。グランドドラゴンって地面に潜れるし」


 つまり、地下に逃げても地面を掘って追いかけてくるだろう、ということである。俺は真正面から戦うのはNGな人なので、ドラゴンとガチで喧嘩をするような状況はなんとしても遠慮したい。


「なりふり構わず全滅させるならできるのではないか?」

「そんな恐ろしいことはいたしません。グランデの家族だぞ」

「それもそうか」

「そうだよ基本的に平和を好むいきものだぞ」

「そ、そうじゃな……?」


 おうなんだ文句でもあるのかグランデちゃんよ。そういう事を言うやつはこうだ。


「ぬああぁぁぁぁ」


 くすんだ金髪をわしゃわしゃとしてやると、グランデは目を瞑って震えた。どうやら髪の毛や頭皮といった新たな感触に困惑しているらしい。


「グランデは早いところその身体に慣れないとな」

「う、うむ、そうじゃな。なんというか身体のあちこちの違和感が拭えん」

「少し運動してみたらどうだ? 私も付き合うぞ」

「うん、実際に飛んだり跳ねたりして新しい身体の調子を確かめるのは良い手だと思うぞ」

「ふーむ、そうじゃな。やってみるか」


 そういうわけで、三人で軽く運動をしてみることにした。まずは軽くランニング。


「問題ないのう。二本の足で走る、というのはなんとも奇妙な感じがするが」

「今まで四足歩行が普通だったもんな」

「むしろ、今まで四足歩行だったのにちゃんと二本の足で走れるというのはすごいのではないのか?」

「確かに」


 次は全力で走ってみることにした。


「のじゃあぁぁぁぁぁ……!?」

「ぶっ飛んでいったな」

「これはひどい」


 グランデは一歩目で足元の地面を踏み砕き、数十メートル先にぶっ飛んでいった。


「全力を出すと吹っ飛ぶのか……」

「竜人形態になって体積と体重が減ったけど筋力とかはそれほど減ってないとかかね?」

「ふーむ……コースケ、レンガブロックを設置してみてくれ」

「おう」


 俺はシルフィに言われるがままにレンガブロックを設置した。流石にみっちりとレンガを組んで間にセメントを入れて固定してあるブロックなだけに耐久力はかなり高い。


「大変な目に遭ったのじゃ……」

「グランデ、この煉瓦の壁を殴ってみてくれ。全力で」

「ふむ? わかったのじゃ。ていっ」


 グランデの放った拳が一辺1mのレンガブロックを一撃で粉砕した。穴が空いたとかではなく、跡形もなく粉々になって吹き飛んだのだ。恐らくブロックの耐久値がゼロになって消し飛んだのだろう。


「これはたまげたなぁ……」

「ふむ……コースケ、もう一つ追加だ」

「おう」

「グランデ、もう一度煉瓦の壁を殴ってみてくれ。全力でな。ただし、今回は魔力の使用は無しだ」

「魔力強化をしないのか? ううむ、やってみよう」


 グランデは拳を構え、少しの間を置いた後に再び拳を繰り出した。バコン、という音を立ててグランデの拳がレンガブロックに埋まる。


「のあぁ!? い、痛い!?」


 グランデはびっくりして涙目になりながら拳を引き、左手で右手を摩り始めた。特に血が出ていたりするわけではないようだが、痛がっているのは可哀想なのでライフポーションを飲ませてやる。


「ふむ……なるほど。恐らくだが、グランデは竜人化することによって身体そのものは大きさ相応の性能になっているようだが、魔力はそのままか、もしかしたら強くなっているのかもしれんな」

「ええと、つまり?」

「つまり、身体は人族基準の大きさや重さになったのにも関わらず、魔力の出力や魔力量はそのままドラゴン並みか、それ以上になっているというわけだ。だから、ドラゴンの身体のままのつもりで魔力強化をすると身体が小さくなっている分物凄い力を発揮してしまうわけだな。いや、その出力だと人族の肉体では多分耐えられないだろうから、肉体の頑丈さそのものはやはり竜のものか……?」


 シルフィが目を瞑って考え込む。うーん、つまりジャンボジェット機が小型セスナに変身したけどエンジン出力はジャンボジェット機のままだからエンジン出力全開にするとぶっ飛んでいくみたいなことだろうか?

 普通はそんなことしたら機体が出力に耐えられずにバラバラになるけど、そうならないってことは小さくなっても総合的な耐久力はジャンボジェット機のままとか? もうこれよくわかんねぇな。


「つまり何が問題なのかというと、魔力の出力が高すぎて咄嗟に全力を出してしまうと大惨事が起こる?」

「うん、そういうことだ。無意識レベルで魔力で身体を強化するあたりは流石はドラゴンといったところだが、これは人に混ざって日常生活をするのは危険だな」

「き、危険なのか……?」

「ああ、危険だ。例えばグランデが寝ぼけてその尻尾を振り回したとしよう。寝ている間にも無意識に身体強化が働いていた場合、振り回された先に誰かがいると挽肉になりかねん」

「それは怖い」

「コースケはもっと危ないぞ。その、アレをしているときに感極まってグランデが全力で抱きついたりしたら……」

「Oh……」


 全身の骨がばっきばきに折れるか、最悪そのままぐしゃりと……怖すぎる。尻尾も危ないかもしれん。何をどうすればとは言わんけど。

 シルフィの言葉を聞いたグランデは顔を赤くしたり青くしたり涙目になったりと百面相をしている。確かに今のままだと色々と問題があるな。


「せ、折角コースケに貴重な魔煌石をもらってまで人族のような身体になったのにぃ……」


 グランデが涙をぽろぽろと零す。おお、泣くな泣くな。


「シルフィ、何か良い案は無いか?」

「そうだな……魔力による身体強化を無意識ではなく意識的にコントロールできるように訓練をするという方法が一つ」

「なるほど、グランドドラゴンの長老が言ってた修練次第でってやつだな。他にもあるのか?」

「ああ、奴隷の首輪を使う」

「なぬ?」


 グランデに奴隷の首輪を嵌めるということか? ああ待てよ? そう言えば奴隷の首輪は体内の魔力云々とかそんな話をしてた気がするな。


「奴隷の首輪は装着者の魔力を使って魔力回路を形成し、装着者の行動を制限したりする魔道具だ。その仕組みを使えばグランデの身体強化を制限する道具が作れるかもしれん」

「なるほど。グランデ専用のリミッターってことか。過剰な身体強化を防ぐだけなら自分で外せなくなる機能とか、首輪をつけた人の命令を聞かなきゃならないようにするとかって機能はつけなくていいよな。いざって時に自分で外せないと危ないし」


 俺の言葉にシルフィは頷いた。


「勿論そうだな。エルフの里には魔道具作りに精通している職人もいる。なんとかなると思うぞ」

「なるほどな。グランデ、なんとかなりそうだぞ」

「……うん。ありがとう、しるふぃ」

「ふふ、意外と泣き虫なのだな、グランデは」


 そう言って笑いながらシルフィはどこからか取り出したハンカチでグランデの顔を拭いてやっていた。うんうん、仲が良いことは良いことだ。俺もタイミングを見計らってグランデの頭を撫でてやる。


「エルフの職人が作れなかったら俺の能力でそれっぽいものをでっち上げるさ。なんとかするから心配するな」

「うん」


 機嫌を直したグランデが目を赤くしたまま微笑みを浮かべる。うん、可愛いじゃないか。というか今思ったんだが。


「グランデに服を着せるべきでは?」

「……そう言えばそうだな」

「服か……そういえば、人族はそういう物を着るのじゃったな」


 本人もまったく気にせず堂々としていたから俺もシルフィも思わずスルーしてしまっていた。


「しかし、服を着せるにしてもこれはなかなか難しいな……普通の服だと足も手も通らんだろこれ」


 手足はごっつい爪やらドラゴンっぽい足やらがあるので、シャツの類もパンツの類も着られそうにない。背中には翼もあるしな。


「とりあえずこれで……」


 前にシルフィやアイラ、メルティやその他亜人の女性達とファッションショーめいたことをした時にネタ枠で作ったビキニアーマーがあったので、それをつけさせることにする。いや、ほんとマジで手持ちの服でグランデが着られそうな服がこれくらいしか無いんだよ。

 アーリヒブルグとか後方拠点に戻れば翼人用の上着とかは着られるかもしれないけど、流石に俺の手持ちには無いな。いや、糸車と作業台でグランデが着れる服をアイテムクリエイションすればいいのか? 良いや、とりあえず今はビキニアーマーを着せておこう。


「それは……」

「ネタ枠で作ってそのままインベントリの肥やしになってたんだよ」

「ふむ……身軽そうで良いのう。どうやって着るのじゃ?」

「シルフィ、頼む」


 俺からビキニアーマーを受け取ったシルフィがグランデにビキニアーマーを着せる。ちなみにビキニアーマーの色は赤だ。ビキニアーマーと言えばこの色だよなぁ。


「相変わらず合理性の欠片もない鎧だな。だがそれがいい」

「肝心なところが殆ど隠れていないからな」

「妾は嫌いじゃないのじゃが」


 まだ他の服を着せていないのでわからないが、もしかしたらグランデは服を着ること事態を億劫に感じる感性を持っているのかもしれんな。まぁ、今までドラゴンとして生きてきて、その間はずっと全裸だったんだから服なんて煩わしいと思うのも当然といえば当然なのかも知れない。


「普通の服も色々着てみてくれよ。きっと可愛いぞ。シルフィももっと色々な服を着ても良いと思うな、俺は」


 シルフィは黒革の戦闘服姿でいることが多いからな。もっとこう、可愛い格好とかしてほしい。ニット生地のセーターとかどうですか? 今なら伊達メガネとかもおつけしますよ。


「ふむ、そうか……コースケがそう言うなら色々と着てみるのも良いじゃろうな、うん」

「はは、耳が痛いな。それなら私も今後はお洒落というものに気を遣ってみようか」

「そうしてくれ。服ならいくらでも作るから。いや、経済活性のためには色々買ってもらった方が良いな」


 全部が全部俺が作ってしまっては服屋さんが泣いてしまうか。どうしても見つからないものとか存在しないものじゃない限りは市場からちゃんと買ったほうが健全だろうな。


「よし、じゃあエルフの里に戻るか」

「そうだな……どうやって戻る?」

「え? それはグランデの背中に乗って……」


 ビキニアーマーを身に着けたグランデに視線を向ける。視線を向けられたグランデは気まずそうな表情をした。


「ええと、元の姿には……?」

「まだ戻り方がわからんのじゃ……」

「そのまま飛ぶことは……?」

「一応できるが……安全に飛べるかどうか……」


 暫くグランデには頑張ってもらったが元の姿に戻ることは出来ず、とりあえず飛ぶ練習を進めてもらうことにした。安全に飛んでくれさえすれば後は俺がなんとかすればいいのだ。


「私にいい考えがある」

「なんだか不安なんだが……?」


 シルフィが酷いことを言う。大丈夫大丈夫、俺に任せておけば万事オーケーですよ。信じて!

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