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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
ドラゴンと黒き森でサバイバル!
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第128話~エルフの里への帰還~

 黒き森が見えてきたところで俺達は議論を開始した。議題はどこに降りるかだ。


「普通に里に降りれば良いのではないか?」

「今までの砦と違ってエルフの里にはグランデと俺が仲良くなったという情報が伝わっていない可能性が高い。つまり、それをやると……」

「エルフの精霊弓士から攻撃を受ける可能性があるな。最悪、精霊石の崩壊事象攻撃が飛ぶかもしれん」

「やだこわいんじゃけどそれ」


 シルフィの推測にグランデがドン引きする。精霊石を使わなくても長老衆の精霊魔法は天変地異レベルだからな……あれを食らったらいくら頑丈なグランデでも相当なダメージを被ることになるだろう。そして巻き込まれた俺は死ぬ。いや、死なないかもしれないけどとても危ない。シルフィはなんとかしそうだけど。


「案その一、森の外に降りる」

「無難だな。少し歩くことになるが、一番危険が少ない。グランデは私達を降ろしたら里帰りすれば良い」


 俺の出した案にシルフィが頷く。黒き森の奥にグランデの故郷があるのは既に俺もシルフィもグランデから聞いている。


「案その二、エルフの里の前に拓いたスペースに降りる」

「ああ、そう言えばギズマ対策で結構大きく切り拓いていたな。エルフの里が人手を出して修復している可能性もあるが……まぁ見ればわかるだろう。里に距離を置いて降りることができるし、グランデを紹介することもできる。それが良いかもしれんな」

「ちなみに案その三はエルフの里に比較的近い森の中に降りるという案でした」

「一と二の折衷案だな。だが今回は第二案を採用しよう。広場が修復されていたらその三で行くぞ」

「わかった。グランデ、まずはエルフの里が見えるところまで飛んでくれ。壁の外に広いスペースがあるはずだから、そこに降りて欲しい。もし、スペースが無くなっていたらエルフの里の近くの森の中に降りてくれ」

「うむ、わかった。だが、攻撃されたら妾はすぐに飛んで逃げるぞ。痛いの嫌だし」

「ああ、それでいい」


 黒き森が見えてきたらエルフの里までは何分もかからなかった。里から森の境まで歩いたら二時間はかかってたと思うんだが、あれは森を歩いていたからだったのか。上空から見ると大した距離じゃないんだな。


「コースケ、エルフの里の壁の前に場所が空いているようじゃ」

「じゃあ、そこに降りてくれ。シルフィ、場所は空いてるって」

「そうか。では、降りたらすぐに私達が一緒だということを伝えられるようにしておかねばな」


 シルフィが身体を固定しているベルトを緩め始める。いや、危ないよ? ああ、ベルトがなくても普通にしがみつけるのね。流石というかなんというか……もうグランデの背中に慣れたんだな、シルフィ。


「いくぞー!」

「うおおおおおぉぉっ!」

「ふふふ……」


 未だにグランデの急降下に慣れない俺に対して、シルフィは薄く笑みすら浮かべる余裕があるようだ。マジで適応速いっすね。

 お腹がゾワゾワするように落下感も束の間、今度はグランデの身体に押し付けられるような感覚を覚える。どうやら翼を動かして落下スピードを急激に緩めたらしい。


「先に行ってるぞ」

「おう――ってえぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 シルフィが身体を固定していたベルトを外し、宙に身を躍らせる。おいおいまだ結構高いぞ!?

 しかし、シルフィにとっては何ほどでもない高さだったらしい。いや、もしかしたら風の精霊魔法を使ったのかも知れない。グランデが着地した時にはシルフィは既にかなり前方まで進んでエルフの里の守備兵に向かって手を挙げて声をかけていた。


 ☆★☆


「ほう……これは確かにグランドドラゴンじゃな」

「小さいのう? まだ子供ではないか?」

「確かに少し小さめじゃが、一応成竜の範囲じゃろ。子竜はもっと棘が少ないからの」

「それにしてもドラゴンを手懐けるとはのう。流石は婿殿じゃな」

「ちゃんと種は仕込んでおるのか? シルフィちゃんのお腹が膨らんでいないようじゃが」

「孫の顔が早く見たいのうー。のぅー?」


 事情を説明したらエルフの里の人々が総出でグランデを見物しに来た。大半のエルフたちは少し離れたところでグランデを見物しているのだが、長老衆だけ距離感がおかしい。グランデの足元まで行って鱗をペシペシしてる人もいれば、グランデの背中の鞍に乗ってる人までいる。長老衆のこのパワフルさはなんなんだ一体。

 ちなみに、グランデはエルフの里から贈られた蜜酒や果物を食べながら長老衆にされるがままになっている。ちょっと鬱陶しそうだが、蜜酒と果物があるから良いらしい。こいつ食べ物で釣られすぎでは?


「そういうのは授かりものじゃからのぅ」

「なに、見ればわかるが相当『仲良く』してるようじゃし三年はかからんじゃろ」

「儂らエルフは孕みにくいからのぅ。婿殿も気張って種をつけるんじゃぞ」

「アッハイ」

「しかし婿殿……お主シルフィちゃん以外にもやっとるな?」

「これは多いのう……意外と性豪なのか?」

「おい、そのくらいにしておけ」


 額に青筋を浮かべたシルフィが俺を取り囲んでやいのやいのしていた長老衆を威圧する。


「シルフィちゃんが怒ったぞ!」

「こりゃいかん、割とマジじゃ」

「退散退散!」


 長老衆達が見た目からは想像出来ないほどの機敏な動きで退散していく。うん、見た目はどう見てもロリな長老はともかく、よぼよぼの爺さん婆さんにしか見えない長老がスプリンターも真っ青な速度で走り去っていくのはなんか凄いな。どうなってんだあの人達。


「まったく……グランデはこの後森の奥に行くのか?」

「聞いてみるよ。グランデ」


 俺が声を掛けると、グランデはぐいーんと大きく首を曲げて俺の目の前まで顔を伸ばしてきた。微妙に酒臭い。


「この後グランデは森の奥の故郷に帰るのか?」

「うむ、そうする。ここに居座るとエルフ達の迷惑じゃろうしの」

「明日の朝飯はどうする?」

「久々に故郷で過ごすからの、別に良い。ただ、昼か夕方には一度ここに来るからはんばーがーを食わせてくれ」

「わかった。里のお土産に酒でも持っていくか?」

「おお、良いのか? 遠慮なく貰うぞ!」


 グランデが嬉しそうにグルグルと喉を鳴らす。エルフ達はその様子を見て何かざわめいているようだ。


「じゃあ蜜酒の大樽を二つな。二つならなんとか抱えて飛べるだろ?」

「うむ、それで良い」

「ご両親によろしく伝えてくれ。あと、もし可能ならグランデの故郷も見てみたいから、行っても大丈夫かどうか聞いておいてくれ」

「わかった。では、また明日な」


 最後に残っていた蜜酒をぐいっと呷り、丁寧に供物台に置いてからグランデは飛び去っていった。蜜酒入りの大樽を二つ抱えて。


「どうなったんだ? 帰ったのはわかったが」

「今日は帰って明日の昼か夕方に顔を出すとさ。あとは聞いての通り、グランデの故郷に顔を出せるか聞いてもらった」

「なるほど、こちらにいる間も退屈しそうにないな?」

「外に出る用事がなかったら一日中家にこもってシルフィとイチャイチャしちゃいそうだからな。外に出る用事を適度に作っていかないと」

「そ、それは……確かに。歯止めは必要だな」


 シルフィが顔を赤くして何度も頷く。二人きりだと歯止めが効かなくなりそうだものな。気がついたら休暇の一週間をぶっちぎって一ヶ月くらいひたすらイチャイチャしてしまいかねない。


「よし、とりあえず家に行くか。軽く掃除をしたら長老衆のところに行くとしよう。気は進まんが」

「そうだな、そうしよう。用事はとっとと済ませるに限るよな」


 何かしらの案件を抱えたままだと休暇を心から楽しめないしな。


 ☆★☆


 こちらの世界に来てから俺が作り上げたレンガ造りの外壁を抜けてエルフの村の敷地に入る。立体駐車場めいた魔法の畑はその規模を縮小したようで、俺達がエルフの里を去った時よりもその数を減らしていた。

 あの頃はエルフの村に避難していたメリナード王国の難民およそ三百名を養っていたのだし、彼らが居なくなったのであれば同じ大きさの魔法畑を運用し続けても無駄に食料が余るだけになる。恐らく、魔法畑に割いていた人員を今は他の仕事に回しているのだろう。


「この壁も懐かしいな」

「この壁のおかげで俺の能力を証明できたんだよな。そう考えると感慨深いものがあるな」


 壁の上には弓矢を携えたエルフの戦士が詰めているようだ。黒き森にはそれなりに魔物も多いと聞くし、いざという時の襲撃に備えて見張りは欠かせないんだろうな。

 壁の上で警備していたエルフの戦士のうちの一人が俺に一瞬鋭い視線を向けてきたが、すぐに目を逸らしてしまった。あいつは確か俺を殺気立っている難民の前に連れ出したり、シルフィにちょっかいを掛けてぶっ飛ばされていた……ええと、なんだっけ。とにかくあいつだな。


「コースケ?」

「ああ、今行く」


 わざわざシルフィに言うことでもないし、向こうも何か手出しをしてきたりはすまい。俺は彼のことを頭から追い出し、先を歩き始めたシルフィの後を追った。


「おかえり、シルフィエル」

「よく無事で帰ったね」

「ああ、ありがとう」


 村の中を歩くとエルフ達に声をかけられる。


「久しぶりだな! ブツはまたあるのか?」

「ミスリルとかでも良いんだぞ……?」

「OKOK、落ち着けブラザー。明日にでも納品するから楽しみにしていてくれ」


 俺は職人の皆さんにギラついた視線を送られた。ちょうこわい。魔煌石はちょっと機密性が高いから、出してもミスリルまでだな。宝石の原石はたくさんあるし、そっちをメインにしておこう。

 そんな感じでエルフの皆さんとも軽く交流し、俺達はついに辿り着いた。


「ただいま、だな」

「ああ、そうだな。久しぶりだ」


 シルフィの家の前に着いた俺達は玄関の前でシルフィの家を見上げる。大樹がそのまま家になったようなエルフらしい住居だ。何ヶ月も放置されていたはずなのに、荒れた様子は一切見当たらない。もしかしたら家そのものが生きているんだろうか。


「さぁ、家に入ろう。まずは掃除だな」

「ああ、頑張ろう」


 こうして俺達は数ヶ月ぶりの我が家へと帰り着いたのだった。

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― 新着の感想 ―
他作品のイキリくんは主人公陣営に相手してもらってるだけ幸せなのだと分かった。 当作品になるとこの扱いよwww
ええと、なんだっけ。とにかくあいつだな。 確かふにゃちん野郎。
[気になる点] >「エルフの精霊弓士から攻撃を受ける可能性があるな。最悪、精霊石の崩壊事象攻撃が飛ぶかもしれん」 >「やだこわいんじゃけどそれ」 >シルフィの推測にグランデがドン引きする。 コース…
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