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ご主人様とゆく異世界サバイバル!  作者: リュート
ドラゴンと黒き森でサバイバル!
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第113話~雨降ってなんとやら~

余裕で間に合いました(間に合ってない)


違うんですよ言い訳させてください!

ちょっと気分転換にシャワーを浴びようとしたら水を落としていなかったせいで風呂場の混合水栓が凍結してぶっ壊れてたんですよ!

それでホームセンターに走って混合水栓買ってきて交換作業とかしてたら遅くなったんです!


冬場はちゃんと水を落として元栓閉めようね……_(:3」∠)_

 気がつくと、見慣れた天井だった。


「起きた」


 大きな瞳が俺の顔をじっと覗き込んでいた。目が少し赤いのはもしかして泣いていたのだろうか? まだ上手く回らない頭でそんなことを考えながら、目の前の愛しい存在を抱き寄せる。


「ただいま」

「ん、おかえり」


 アイラが俺の胸に顔を埋めてグリグリと擦りつけてくる。俺はなすがままにグリグリされながらアイラの頭と背中を撫で続ける。んー、帰ってきたって感じがするな。


「コースケさん!」

「旦那さん!」


 俺とアイラの様子に気付いたのか、ハーピィさん達がどやどやと駆けつけてくる。皆口々に俺の無事を喜び、翼で俺の頭を擦ったり感極まって涙を零したり、キスの雨を降らしてきたりした。おいこら、今誰かキスじゃなくてペロって舐めなかったか? ちょ、服を脱がせるのはNGですよ!


「と、ところでシルフィは?」

「あそこ」


 ハーピィさん達の猛攻撃をしのいだ俺が問いかけると、俺の胸の上ポジションを守り抜いたアイラが部屋の隅に向かって指を指した。身体を起こしてアイラの指が指す方向に視線を向けると、そこにはどんよりオーラを纏ったシルフィの姿が……体育座りして膝に顔を埋めたまま震えていらっしゃった。


「シルフィ、そんなところにいないでこっちに来てくれよ」

「いいんだ……わたしはもどってきたこーすけをしめおとすだめなおんななんだ……ほうっておいてくれ」


 どよーんどろどろどろというオーラがすごい。アレは闇の精霊的な何かが作用しているんじゃなかろうか。


「気にするなよ、シルフィ。ちょっと感極まっただけだろう?」


 あと俺が殊の外ひ弱――いやアレは無理だろう。でもそんなことはおくびにも出してはいけない。ここは包容力、包容力を発揮するんだコースケ。

 胸の上を占拠するアイラをそっとどかしてベッドから抜け出し、部屋の隅でどんよりしているシルフィの下に移動する。


「シルフィ。なぁ、顔を見せてくれよシルフィ」

「う゛ぅ……」


 顔を上げたシルフィの顔はそれはもう酷いことになっていた。泣いたせいで目は赤くなっていて、まぶたも腫れぼったくなっており、鼻水まで……美人が台無しじゃないか。

 インベントリから布切れを取り出し、涙を拭いた後に鼻も拭いてやる。


「俺は怒ったりしてないから、な?」


 シルフィの額にキスをしてそっと抱きしめてやる。また涙が溢れ出してきたのか、シルフィが顔を押し付けてきた右肩の辺りがじわりと温かくなる。よしよし。

 シルフィが泣くのを宥めていたらいつの間にかアイラ達は部屋から出ていっていた。どうやら俺とシルフィに気を遣ってくれたらしい。


「ほら、立ってあっちで座ろう。な?」

「う゛ん゛……」


 俺の肩から顔を離したシルフィからでろーんと糸が伸びた気がするが見なかったことにしておく。明日にでもまとめて洗ってしまえば良い。今はとにかくテンションがどん底のシルフィを元気づけてやるのが先決だ。


「シルフィとまた会えて俺は嬉しいよ。でも、そんなに泣いてばかりだと俺も悲しくなっちゃうぞ。俺は全く気にしてないから。な?」


 シルフィは暫くグズっていたが、やがて落ち着いたのか鼻をすする音も消えた。そして何事が呟いたかと思うと、いきなり光った。


「うおっ!? 何の光ィ!?」


 光が収まると、シルフィのまぶたの腫れは引いて、目の充血も治り、ついでに俺の肩も綺麗になっていた。シルフィが精霊魔法で色々とやったらしい。


「ごめんなさい、コースケ」

「だから怒ってないって。それだけ心配してくれたってことだろ? 寧ろ嬉しいよ、俺は」

「うぅ……」


 シルフィがまた泣きそうな声を出しながら抱きついてくる。そのうちに泣き疲れたのか、シルフィはそのままスヤスヤと寝てしまった。

 そんなシルフィをベッドに寝かせて俺は台所に立つ。俺もお腹が空いたし、シルフィにもなにか食べさせてやりたいからな。

 うーん、何を作るか。そうだ、俺が初めてシルフィに作って食べさせたケバブというかブリトーもどきでも作るとしよう。調理作業台のある今ならもっと美味しくて完璧なブリトーを作れるはずだ。

 それだけじゃ寂しいからスープも作るか。これは普通のコンソメ風味な具だくさんスープで良いだろう。クラフト能力を使わずに自分の手で作ったほうが良いだろうか? と思いつつもやっぱり美味しいほうがより良いと思うし、何より俺が作ったことには変わりないので問題ないだろうと結論付ける。

 そう言えば、グランデの世話もしないといけないよな……日の傾き加減とかを見る限り、何時間も気絶していたってわけじゃないだろうし。ドラゴンも爬虫類系の生き物には違いないだろうし食事の間隔はそんなに短くはないだろう。

 少し文句を言われるだろうが、最悪明日になっても問題あるまい。その分サービスしてやればいいだろうし。

 そうしているうちにシルフィが目を覚まし、ベッドの上で不安げに辺りを見回し始めた。すぐに俺を見つけてパッと顔を輝かせる。


「飯、作ったぞ。一緒に食べよう」

「うん!」


 なんかシルフィが幼児退行している気がする。まぁ、可愛いから良いけれども。


「俺達が出会って最初に作ったのと同じ感じのものを作ってみたぞ」

「懐かしいな」


 皿の上に載ったブリトーに目を向けてシルフィが目を細める。スープも配膳し、食事の準備が整った。


「じゃあ、食べようか。いただきます」

「いただきます」


 二人でブリトーにかぶりつく。まず感じるのは刻んだ野菜のシャキシャキ感。そして次に来るのが甘辛いタレで味付けされた肉の味と、マヨネーズベースの少し酸味のあるソースの味。あの時に食べたものよりも確実に洗練されている味だ。美味い。


「ふふ、あの時のやつより美味しいな」

「腕が上がったんだ」


 グッと力こぶを作る真似をしてみせるとシルフィがクスクスと楽しそうに笑った。良かった、どん底まで落ち込んでいた気分はかなり晴れたようだ。


「スープも美味しいな」

「この複雑な味をイチから作ろうとしたら物凄い手間らしいぞ」


 コンソメスープのレシピなんかは俺もよくは知らないが、普通に作ろうとすると物凄い手間暇と材料費がかかるらしいとは何かで見たか聞いたかして知っている。ビーフシチューやカレーなんかも市販のルーを使わないでイチから作ろうとすると手間だって聞くな。ホワイトシチューはまだマシらしいけど。


「ようやっと帰ってこられてホッとしたよ、本当に。何よりシルフィの顔をまた見られて本当に良かった」

「私もだ。感極まってコースケを絞め落としてしまったのは痛恨の失態だった……」

「感情が爆発したらそういうこともあるだろ。次に気をつければ良いじゃないか」

「うん」


 少し普段の口調に戻っていたのが、また少し幼い感じに戻った気がする。シルフィもなんだか不安定みたいだな。それもそうか、俺だって今になって心がざわざわすると言うか、落ち着かないと言うか、今にも踊りだしそうな気分なんだから。

 俺がキュービに攫われた後の話をお互いに話し合いながら食事を進める。食事が終わったら蜜酒を出して晩酌をしながら更に話を続ける。いくら話しても話し足りない。お互いにそんな気分だった。


「そうか、ライム達は今も城の地下で母様達を守ってくれているんだな……」


 ライム達の存在と、シルフィの家族達の話を聞いたシルフィは再び涙を零した。しかし、彼女にとってはそれは吉報でもあったようだった。


「父様がその身を犠牲にして守った母様達や姉様達を必ずやこの手で解放してみせる。絶対にだ」


 決意を新たにしたシルフィが拳を握りしめ、意思の光を瞳に漲らせる。


「その件なんだがな……」


 そうなるとアドル教の懐古派とエレンの話をしない訳にはいかない。

 俺は一切の偽りなしにエレンとのことをシルフィに打ち明けた。シルフィに対して中途半端にはぐらかすのはあまりにも不誠実だからな。

 アドル教の聖女と接触を持ったことはゴーレム通信機で報告していたが、エレンとの……その、関係については流石に詳しくは話していなかったからな。皆に言うことじゃないし。

 エレンの話を話すうちにシルフィの目が細く、冷たくなっていく。コワイ!


「そうか」

「そうなんだ」

「メルティとそうなるのは予想していたが、まさかよりにもよってアドル教の聖女とな……ふーん」


 じっとりとした視線にじっとり冷や汗が浮かんでくる。


「聖女は美人だったのか?」

「そうだな、正直に言えばシルフィ並みの美人だったな」

「ふーん……でも、コースケは私が一番だって言ったんだな?」

「勿論だ。そのうち本人に会うこともあるだろうから、その時には確認してもらってもいい。エレンには一番にしてくれますか? って聞かれたけど一番はもう決まってるから無理って言ったんだ。俺の一番はシルフィだからな」


 真正面からシルフィの視線を受け止め、しっかりと伝えるべきことを伝える。こういう時は正攻法に限る。下手な小細工は良くない。


「そ、そうか……」


 俺の方針が功を奏したのかシルフィが顔を赤くして視線を逸らす。よかった、伝わった。俺は内心ほっと胸を撫で下ろした。


「じゃあ、その……証明、してくれるか?」


 シルフィがそう言ってチラリとベッドに視線を向ける。


「勿論だ」

「や、優しくだぞ……?」

「お任せあれ」


 俺とシルフィの長い夜が始まった。


 ☆★☆


 翌日。


「次は私の番」


 俺は頑張った。


 ☆★☆


 更に翌日。


「「「次は私達の番です!」」」


 俺はとても頑張った。


 ☆★☆


 更に更に翌日。


「ふふ、次は私の番で良いですよね?」

「許して!」

「魔神種からは逃げられません♪」

「ああぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺は頑張らされた。


 ☆★☆


 一方その頃。


「おなかすいた……はんばーがーまだ……?」


 だだっ広い空き地で放置されたグランデが泣いていた。

新作だヨ!_(:3」∠)_


『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい。』

https://ncode.syosetu.com/n3581fh/


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― 新着の感想 ―
頑張っている間中、ハンバーガー抜きで空き地に放置されたわけはないと信じたい。
[一言] えーと、欄外の筆者のコメントが楽しみです(勿論、作品の方も楽しく読ませていただいています) 欄外の凍結の話しですが、どんだけ寒いんですか?
[一言] 毎日という約束だったのに、これだから人間は信用できない!
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