ひとつのネック
まっほはほぼ生まれた時から孤児院にいたから、主みたいになってたんだよ。あとから入ってくる子の面倒みたり、けんかしてる子たちを止めたりとか。学級委員ってとこかな。でもそれはあとからのこと。孤児院に来る子供は大抵身寄りはないんだけど、コインロッカーで生まれた子?は珍しい。
最初は『ろっは』と呼ばれてた、つまりロッカーのことね、子供だからロッカーが『ろっは』になっちゃったのね。これでずいぶんイジメられたね。ホントに小さかったからなぜイジメられるのかわからなかったけど、悔しかった。そんな時、ひとりの男子がろっはのことを助けてくれたのね。ハヤトっていう名前だったかな。
その男子、ろっはがみんなにイジメられていると、『外にポケモ○人形が来たぞ』とか、『院長先生が怒ってるぞ』とか言ってみんなをろっはから引き離してくれたのね。それとか、みんなで遊ぶときに、さりげなくろっはを仲間にいれてくれたり。うれしくてお礼を言おうとすると、プイとどこかへ消えてしまう。今で言うツンデレね。
そんなことが続く中で、だんだんみんなと仲良くできるようになっていったの。それでろっはは自立してきて、イジメもなくなり、リーダー的な存在になっていったのね。
院長先生はそんなまっほのことを信頼してくれて、孤児院の子供たちへのお小言なんかは、まっほに話して、まっほからみんなに伝えるというのをよくやってたね。院長先生が直接言っちゃうと歯止めがなくなったりすることあるし、みんなに優しいというイメージを植え付けるのには、いい手なのかもしれないね。いつもガミガミじゃあ嫌われるからね。まっほをフィルターにしてたわけだね。
でもまっほは利用されてるというよりは、それだけ任されているという自負があったね。こんな経験がアイドルという社会に接するのに役立ったように思える。院長先生はまっほには友達のようだった。いろんなことを教えてくれたし、なんでも相談に乗ってくれた。よく母親は自分の娘を友達としてみるっていうけど、そんな感じ以上のレベルだったように思っていた。
他の人のケースがよくわからないけど、まっほには親友的な存在だったね。でも他の子の前ではまったく平等な扱いで、誕生日といっても月単位で行われる合同モノだけ。そのバランス感覚も好きだったな。
誕生日といえば、ケーキ。1カ月で一番楽しみな日。普通の日のおやつは、クッキー、チョコレート、キャンディー中心。たまにプチケーキくらいはあったけど。大きなケーキ、といっても普通のショートケーキだけど、それが食べられるのはこの合同誕生日だけ。だからすごく楽しみだった。そんなケーキへの執着?がその後のスイーツ好きに大きく影響してるように思えるのね。ただし、ひとつネックがあったけど。それはそのうち話すね。




