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男性恐怖症

再びアキバのコンビニに到着した面々。もちろん、絵里華も一緒である。すぐに真美は現われた。美緒は恵比寿の魚籠をすでに用意している。



「あなたたち、性懲りもなくやってきたわね。」

 真美がそう言った瞬間。それまで大人しくしていたオレはカッと目を見開いて、両腕を脱力したようにだらりと垂らしたままで、彼女の方に歩きだす。どうやら洗脳は成功したようだ。



「や、やめて~!」

 思わず叫んだのは由梨。しかし、



「好きだ。」

 ついにその言葉を発してしまった。

 今度は絵里華が突然動き出した。目を瞑ったまま、オレの方に近づいてくる。



「やったわ。成功、成功。」

 真美は天獄にも地獄にも行く風情はない。



「もしや神たちを騙したのか?」



「アタシは嘘をつくのが好きなんだからしょうがないでしょ。アタシが消えるはずないわ。アハハハ。」

 絵里華の動きが電池の切れた時計のようにパタリと停止した。すると、霞のようなものが出てきて、絵里華を覆った。そして、それはだんだんと形を成してきて、パックのように、絵里華の顔に張り付いたかと思うと、彫の深い表情に変貌した。目は切れ長で涼しげ、鼻筋はアルプスのように切り立ったイケメン。



「やっと、出てきてくれたのね、隼人。アタシに本気で好きだと誰かが言ったら出てくることになってたんだもんね。真実の愛の告白がキーポイント。」

 真美は嬉しそうに、絵里華、いや隼人の腕を抱いた。



「そいつは、真美の恋人なのか?」



「べ、別にそういうのじゃないわ。ジバク友達よ。ねえ、隼人。」



「・・・・・。」

 隼人は何も言わない。絵里華と同じく眠っているようだ。



「隼人ったら、人見知りしてるのね。言いたいことがあればはっきりと言えばいいのよ。」

 やはり、隼人は沈黙したままである。



「そいつも眠ったままのようだな。そいつを起こせば、絵里華は元に戻るのか。」



「ご名答だわ。でもどうしたらいいのかしらねえ。フフフ。」

 不敵な笑みを見せる真美。



「揺すったり、叩いたりという物理的な衝撃を与えてもダメだろうな。」

 美緒は自信なさげに呟いた。



「その通り。頭いいわね。じゃあ、ヒントあげるわね。眠れる森の美女よ。」



「うっ。そ、それは・・・。」

 美緒の顔色が変わった。代わりに万?が答えた。



「つまり、眠っている絵里華たん、いや隼人たんにキスをすればいいということ?」

 いつも明るい万?も緊張した面持ちである。



「そんなの簡単じゃない。お茶の子さいさいさいさいマサイ族は一夫多妻制~。」

 由梨はすっかり動揺している。



「よおし。由梨は当てにならない。この神がやってやろう。」

 美緒は腕まくりをした。そんなに気合いを入れるようなものではないように思われるが。

 美緒は般若面を取り隼人ににじり寄った。スリスリスリ。泥棒ではない。スリ足である。ほんの少しずつ、移動している。ミリ単位である。よくこれだけ微妙に動けるものである。さすが美緒。



「美緒たん。だんだん距離が離れてるよ。」

 万?が指摘するように、美緒は絵里華との距離を詰めるのではなく、逆に離れていった。すでに面を着用している。額には『怖』。相手がイケメンでも男性恐怖症発症。ジ・エンド。


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