商品ではない
「何のためにトランプをやってるんだ?ただのエンタメではあるまい。」
「いちいちうるさいわね。椅子に座ってじっとしててよ。アタシのカードを見るという超絶光栄に浴させてあげるんだから感謝しなさい。」
由梨の迫力に圧倒されたのか、ごく自然に机についた。宿題でもやるかな。いちおう、由梨の仰せの通り、後ろについた。ていうか、由梨の指定した場所=椅子が由梨の真後ろなのだ。
これって何かの意図?由梨のツインテールがこっちを見ているような気がした。
全員が沈黙して、カードを順番に抜きあっている。揃ったカードを捨てているところを見ると、ババ抜きをやっているようだ。あまりの静けさに耐えかねた人物が口火を切った。
「いったい誰がジョーカーを持ってるの?正直に言いなさいよね。」
やっぱり由梨だった。ガマンというのがいちばん苦手と言っても過言ではあるまい。
「みんな黙ってババ抜きをやって面白いのか?こういうのはキャーキャー言いながらやるのが楽しいんじゃないのか。」
不用意な発言をしてしまった。
「何をほざいているのよ。賞品は黙ってなさい。」
「賞品って何だ?」
「い、いちいちうるさいわね。賞品は賞品よ。商品ではないわ。」
「わけがわからん。」




