コスプレ好きのドジっ子
「次はこれだよお。」
忍者、いわゆるくノ一。ピンクの頬かむりした装束。鎖帷子付きの本格派。手には手裏剣。直径2メートル。真ん中にくノ一キャラのイラスト。Vサインしている。
「いっくぞお。それ~。」
「あぶねえ!」
手裏剣はオレの頬をかすめもせず、からだを動かすこともなく、余裕で回避できた。
「きゃああああ。」
ピンクくノ一は胸を押さえている。自分の胸を手裏剣が切り裂いたらしい。布が床に散る。豊満そうな盛り上がりが存在感十分。負けたかも。
「まだまだ負けないぞお。えいっ!」
別に勝負に来ているわけじゃないぞ。保健室に来てるんだが。またも変身した。
「チャイニーズバトラーだよお。」
頭には団子ふたつ。てるてる坊主のように、フリル付きの白い布で覆われている。スリットが太股まで入ったセクシーチャイナドレス。赤い繊維のテカリが眩しい。
胸からお腹のあたりにかけて、虎が描かれている。いや虎ではなく、猫。それもシンプルな線で描かれたもの。目は点で、鼻、口はなく、髭だけが数本書かれているだけ。
どちらかと言えば少女向けのようだ。ヌンチャクを手にしている。これも長さが1メートルはあり、どうみてもアンバランス。振り回せるような代物ではなさげ。
「アチャー!」
レッドチャイナドレスはヌンチャクを振り回すが、とてもリズミカルとは言えない。
「ヌンチャクは回ってないし、風も吹かないぞ。」
「あれっ?」
ヌンチャクが手から離れて、床に落ちていた布を押してカーリングのように移動した。布は濡れた床を移動していく。この女子は戦闘にまるで向いていないように思えた。コスプレ好きのドジっ娘という表現が適正か。




