セレブと死
「たこ焼きを知らないの?これだからセレブでない庶民、いや元庶民はダメね。アタシと絵里華は月とスッポンね。アタシの実家は『商店街一のカレー屋さん』だったのよ。絵里華、アタシを圧倒的に羨望しなさいよ。」
((う、うちは庶民・・・。そうだったんどすか。ガクっ。))
絵里華は肩を落とした。たこ焼きを知らないのが庶民なのか?なんだかそれは違うような気がするがオレは中立姿勢を保った。
それに商店街のカレー屋さんって、そもそもセレブ?
「かわいそうな娘。たこ焼きというのはね、『たこ焼き売りの少女』という悲劇童話があるの。それはこんな話。」
『昔々あるところに、貧しいたこ焼き売りの少女がおりました。少女はスーパーセレブを目指して都会にひとりでやってきたのでした。
とある財閥のお屋敷に住み込みメイドとして働くことになり、その財閥ではたこ焼きという高級料理を売って、利益を上げているのでした。メイドの仕事は街でたこ焼きを売ること。
一日1000個売らないとお屋敷に入れてもらえなくて、外で寝泊まりしないといけないのです。
他にもたくさんのメイドがいて、それぞれの持ち場でたこ焼きを売るのがこのビジネスモデル。売上の数パーセントはメイドたちの収入になるのです。
一部のメイドからは「会社にボラれている」との批判がありましたが、経営者側はスルー。労働組合もないので、メイドたちに労働争議を起こす権利は認められていなかったのです。
のちには『女中哀史』という本が残されました。少女は街で一生懸命たこ焼きを売りました。『このたこ焼き、全然売りたくないわ。どうしても買いたいって言うなら売らないこともないけど。』という売り文句で売るのですが、誰も買ってくれません。
少女は草木を寝床とする日々が続きました。そんな少女の姿を見て、慈愛の神様が、「ここでたこ焼きを売りなさい。そうすれば必ず売れます。」と言って、一枚の紙をくださったのです。
少女は神様の言葉を信じて、紙に書いてある場所に行きました。そこにはこんな看板がありました。『ツンデレ喫茶』。少女は一生懸命セールストークを繰り返しました。
「べ、別に買わなくてもいいんだからねっ!」。「「「「「うひょー!買う、買う、買う!」」」」」。
たこ焼きは飛ぶように売れました。一日千個なんて楽勝でした。少女はみるみる成績を上げて、トップになりました。
少ない取り分でも、数多く売れば自分の収入になる。いつしか、セレブになりました。・・・ある日、少女はは遺体で発見されました。たこ焼きは売れていたのではなく、自分で食べていて、食べ過ぎで、お腹を壊して、死に至ったのでした。』




