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ワゴンで料理

「『せれぶ』って何どす。」



「簡単に言えばお金持ち言うことや。今の貧しい生活とはオサラバせんとな。」



「ママがそう言わはるならうちは努力して、頑張って、きっと立派なせれぶになるどす。そしてママを楽にしてあげるどす。」



「絵里華。なんていい娘なんや。ううう。」



 母親は娘を両手でしっかり抱きしめて、再び涙した。



 なんともわびしい生活のようである。暗い部屋とふたりの生活がシンクロしているようである。

『トントン』。誰かが部屋をノックしてきた。



「は~い。ここにおるでえ。この時間やと食事やな。」



「そうです。早く移動してください。」



「また苦痛の時間や。労働に勤しむかな。ほな絵里華、一緒に行くで。敵は戦場にありや。」



「そうどすか。うちはこの時間好きどすけど。」



「絵里華は働いたことないから、わからへんねん。おかあちゃんはこの食事の時間がいちばん大変やねん。」



「ママがそういうなら、うちもそう思うようにするどす。」



「そや。ええ娘や。その意気やで。よし、行こか。」



 ふたりは部屋を出た。長い廊下を歩いている。普通の学校のそれよりもはるかに距離がありそうだ。途中何度か折れて、階段もいくつか降りてようやく目的地に到着。



「待ちかねたぞ。早くそこに座れ。」



 鼻髭をハの字型に伸ばした燕尾服の紳士。家の中なのに、蝶ネクタイがしっかりと首を引き締めている。髪は長いが、整えられている。



 長いテーブルの端に着座している。テーブルクロスは雪のように純白な輝きを放っている。周りにはメイドが数人ついている。眼鏡をかけた30歳位の紺のメイド服の女性がやってきたふたりを席に案内する。



「奥さま、お嬢様はこちらです。」



 椅子を音も立てずに引くメイド。そこにゆっくりと腰掛けるふたり。すぐにワゴンで料理が運ばれてくる。前菜、スープとやってくる。


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