真意
「ただいまあ~。」
元気よくドアを開ける少女のオレ。
暗く静かな顔から一変、明るい笑顔になる、無理やりに。
「お帰り。都。今日も学校楽しかったかな。抱きッ。」
母親が喜色満面で迎えては、いきなりオレをハグした。
「お母さん。きついよ、苦しいよ。」
「そうよ。それだけ、この母が都を愛してる証拠なのよ。」
「わ、わかってるけど、毎日毎日これじゃあ、身が持たないよ。」
「何言ってるのよ。愛情はこうやって毎日注ぐから意味があるのよ。これをやめたら母親失格よ。抱き抱き抱きッ。」
さらに力を込める母。こうしてくれるのは、オレが女装を始めてからなのだ。
それ以前も冷たいわけではなかったが、溺愛対象は桃羅限定だった。
母は女の子の姿をしているオレがたまらなく好きだったのだ。
だからオレも母親の愛に応えるため頑張っていたのである。
それに女子の格好の方がかわいいと思うのは同じだった。
心は男だが、美的感覚としての女装。それがこの頃の真意であった。
クラスメイトにはこの思いは理解されなかった。
でも人は人、オレはオレ。自分のポリシーはすでにオレの中で確立されていたのだ。




