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切腹
入り口に近いところの囲みを解くと、さっさと教室を出ていく少女。
「あ~あ帰っちゃった。」
「なんだ、あいつ。全然反省してないな。」
「これだけ言っても気にもしないなんて不思議。」
「カッコウも変だけど、頭もおかしいんだよ。」
クラスメイトは口々にひどいことを言っている。
いやひどいこととは限らないな。人数から考えると。
少女=ひとり<クラスメイト=多数
これがグローバルスタンダードだな。誰が見ても多勢に無勢。
民主主義は数。これが現実社会。厳しいのではない。人数が多いことが正しいのだ。
・・・こんなシーンを忘れるはずがない。
この主人公はオレ以外の何者でもない。
夢でも見てるのか。でもオレの意識は確実に覚醒している。
オレの姿は彼らには見えないようだ。
かつての自分を客観的に見ているオレだが、気持ちは当時に戻っている。
というのも、心の痛みがぶり返しているからだ。
傷は癒えたかと思っていたが、厳然と残っているものであることを痛感している。
切腹ってこんな感じなのだろうか。
思い出らしきシーンはまだ続く。




