死
「「「「ぎゃあああああ!!!!!」」」」
四人は再び絶叫。さきほどよりもはるかに高音がプールの水を波立てた。
倉井がオレに飛びついたのはプールサイド。オレは目を閉じたまま、からだはクラゲのようにあてどなくふらふらしていたので、いつの間にか、そのような場所に移動していたのだ。
『ザバーン!』
長年連れ添った奥さんに離婚宣告をされた中年サラリーマンが崖から飛び降りるように、オレはひとりプールに転落した。ひとりで落ちたのは、倉井がすでにこの世界から消滅してしたからである。オレはブクブクと泡を立てながら力なく水底に沈んでいく。
((都はん!))
いちばん近くにいた絵里華がまっさきにプールに飛び込んだ。絵里華は幼い頃から水泳も習っていたので、泳ぎは達者である。すぐにオレに到達し、首のあたりを掴んで、水面に引きあげた。
((都はん、頑張って。しっかりしいや。))
絵里華は喋ることはできないが、心の中で唱えては、倒れているオレを元気づけていた。
溺れた人間はひどく重く感じるものであるが、絵里華は見た目以上にパワーがあり、ズダ袋を運ぶように、なんとかプールサイドまで都を引っ張っていった。
「よし、こっちだ。」
美緒が絵里華から都を引き継いで、カジキマグロを引き上げるように、オレを水揚げした。
「大丈夫か、都!」
「都、このセレブが手当をしてあげるんだから感謝しなさいよ。」
「都たん、都たん、都たん。」
都はぐったりしている。
「これは人工呼吸しかないな。」
((それならうちが。))
「こんな役回りはセレブしかできないわ。」
「まっほが守ってやるの。」
三人が我さきにと争いを始めた。井戸端会議のようである。
「その必要はない。」
会議中止を宣言した美緒。
「「「どうして?」」」
「都はすでに死んでいる。」




