長い睫毛
「確かに俺は外側は女だ。でも内側は男だ。」
「なるほど。つまり、性同一性障害の女子ということだね。」
「そういう表現は好きではないな。人間の本性はあくまで中身だ。それが男であれば男性とすべきだろう。」
「そうなんだ。生き方に関する考え方は人それぞれ。いいんじゃない。」
「ずいぶんとものわかりがいいじゃないか。こんな発想は現世ではすべて否定されていたぞ。」
「そうかもしれない。でもまっほには理解できるよ。」
((それはうちも同じ思いどす。))
『外見由梨』絵里華がツインテールを揺らしながら、割って入ってきた。由梨の姿での京都弁はなかなかかわいい。
「なんだ、どいつもこいつも女、女じみてやがる。」
((倉井はんの話を聞かせておくれやす。))
「面倒くさいな。でも俺の気持ちを聞きたいというのは珍しい。そこまで言うならきちんと話そう。」
「俺は子供の頃は親から女の子としてちやほやされていた。近所の人たちもそんな扱いで、地元では有名な美少女だった。」
倉井はおもむろに黒い学生帽を取った。はらりと短い髪が落ちる。細い目尻にブルーの丸い瞳。ムーンライトを浴びて艶やかに光っている。帽子のつばに隠れていた目はやや吊り気味で鋭いが、長い睫毛がやわらげている。




