胸やオシリに攻撃?
五人は現地の高校に到着した。
「どうして、また夜なのよ?今回は授業中に出たようなので、昼の活動かとてっきり思ってたのに。」
由梨はさかんに美緒に抗議する。
『ガタガタガタガタ』
「由梨、夜は怖いのかな?」
美緒が薄ら笑いを浮かべながら由梨に視線をやる。
「ち、違うわよ。まだ夜は寒いじゃない。だいたい水泳授業にはまだ早い時期なのよ。」
「でも水温はそれほどでもないよ。ほら。」
万?はいきなりプールに飛び込んだ。『キャッキャッ』言いながら、バシャバシャと水をかいている。
「アイドル時代を思い出すなあ。」
すっかりプールを堪能しているようだ。ちなみに、スクール水着に身を包んでいる。他のメンバーもそれは同じ。ということは、都も同じである。メンバーのスク水には名前など貼っていないが、由梨だけは『6-2 たいなか』とマジックで書いてある。お約束である。
プールサイドに都を残して、四人は水の中にいる。
「きゃっ。やめてよ、万?。いくらあたしのボディがナイスだからといって、触ったらダメだよ。オシリがムズイよ。ぽっ。」
照れながら由梨が万?に向けて軽く注意をした。なごやかではある。
「まっほは何もしてないよ。」
確かに、ふたりの距離は3メートルは離れているので、あり得ない。
「じゃあ、いったいだれが?」
由梨がそういう間もなく、プールの水面はそれまでとまったく違う様相を呈している。あちこちで波が季節外れのサンタクロース帽子を並べたように立っている。波はマスゲームのようにきちんと整列している。不規則な並び方が普通であるだけに、これはこれで奇妙である。しかしそんな要警戒の雰囲気がMAXな中で。
「カメラ持ってる男子は集まってね。」
万?はカメラ小僧を呼んでいた。相手はもちろんジバク。万?に緊張感なし。
((腐女子はこの指とまれどす。))
絵里華はオタ女子を探していた。相手は当然ジバク。絵里華も緩んでいる。
オレはプールサイドでぼんやりしている。目に力がまったく入っていない。
「みんな気をつけろ。様子がおかしいぞ。」
美緒はすでに剣を構えている。その目つきはハンターのように、獲物を見つけたようだ。
プールに立っている波と思われたものにだんだんと色がついてきた。青白い肌色。人の手だ。それも無数。水面で地獄へ誘うように蠢いている。見ていると三途の川に呼ばれているかのような錯覚に陥る。いやそれが現実か?さらにひそひそ話声らしきものが聞こえる。
「き、気持ちわるい。怖いわ。」
由梨は不気味な手の軍団に取り囲まれてしまった。だらしなく緩やかに曲がった指先が由梨のからだに触れてきた。背中、首、お腹を襲っている。そして、胸やオシリにも攻撃の手が回り始めた。




