挑発の言葉
「そうだ。どうして、絵里華は眠ったんだ。他の人間からどうやって魂を抜いたんだ。」
「教える必要なんてないわ。」
「そうくると思ったぞ。ならば、力づくに頼るしかないな。『言わぬなら言わせてみようホトトギス』だ。」
美緒はお面を取り、薙刀に変換する。刃の先が月光にキラリ。切れ味は今日もよさそうだ。
「なにそれ。アタシを斬ろうっていうの?ずいぶん野蛮だわね。」
真美がそう言った瞬間に、すでに美緒は間合いに入っており、袈裟がけに斬った。
「うあああああ~!」
真美の悲鳴が耳を劈く。真っ二つにされた胴体が転がる。一巻の終わりか。
「なんてね。アタシは嘘をつくのが得意。これくらいは簡単ね。」
転がっているのはただのオヤジ風のジバクだった。ジバクとしての価値がないようにしか見えないので、問題なし。
「武力で威嚇してもダメだよ。そんなことしたって、答えるつもりはないわ。でも出血大サービスするわ。アタシに心の底から『好きだ。』と言ってくれたら成仏してやるわ。天獄でも地獄でも逝ってやるわ。とてもできるとは思えないけど。あなたにはねえ。女の子だもんね。ははは。」
「女の子ではない。神だ。正確には女神だが。」
「言っとくけど、アタシは百合ではないんだからね。『オオカミ少女』とは違うわよ。なんならアタシに嘘をいってごらんなさい。」
真美の言葉に乗った美緒。
「そうか。ならば、こうしよう。ここに由梨という女子がいる。」
「美緒なによ。いきなりあたしを指差して。セレブに向かって失礼だわ。」
「まあ、そう言うな。それで、この由梨のカップはDだ!」
『が~ん!』
真美は目を白黒させている。ちなみに、今の感嘆詞は由梨のものである。
「た、確かに、それは大いなる嘘だわね。」
『ビューン』
美緒のからだが、絵里華の方に吸い寄せられるように、近づいていく。そして何か白いものがからだから抜け出ていく。
「ハッ!」
美緒は瞬時に糸電話の糸を使って、自分から抜けだしそうになっていた魂を引き戻した。
「さすがねえ。神を名乗るだけのことはあるわ。反射神経は並みじゃないわね。でもあのままだったら、美緒も魂を吸い取られていたわよ。どう、アタシの能力、わかったくれたかしら。今度会う時が楽しみねえ。あなたたちには何もできないと思うけど。アハハハ。」
真美は挑発の言葉を残して、スーッと闇に消えた。
「う~ん。これは困ったな。さっきは予め攻撃を予想していたから、糸電話の準備もしていたので、なんとか逃れられたが。やっかいな相手であることは間違いない。ひとまず、生徒会室へ戻って作戦を練り直そう。」
美緒が先導し、全員が学校へ帰ることになった。




