偽善と真実
「ここが、ニュースになっていたアキバのコンビニだ。なんの変哲もないごく普通の店のようだな。」
「こんな遅い時間で、街には人の気配が少ないに、コンビニには客がいるのね。幽霊なんかが出てこなきゃいいけど。ブルブル。」
「きゃはは。由梨たん。まっほたちはジバクを探しに来たんだよ。ここに出てくれないと来た意味がなくなるよ。そんなに怖いのかな。」
「じょ、冗談よ。マイケルジョーダンはバスケの名人よ。セレブに怖いものなんてあるはずないじゃない。ははは、はっ。」
「ではこれではどうかな?」
「きゃー、ぎゃー、わー、わー!!!」
美緒が般若の面を被って、由梨に見せた。これは夜に見ると怖い。般若のお面は基本、薙刀に変わるが、こういう使い方もできるらしい。
「なんだか騒がしいわね。ちょっと、あなたたち、うるさいわよ。」
出てきたのは、頭に大きな赤いリボンをつけた少女。ジバクである。
「やっと会えたな。こうして、餌を撒いておれば、じきにやってくると思っていたぞ。ここで会えたが百年目だ。」
「もしもし。あのう、初めてお会いしたと思うけど。」
「そうとも言う。」
「なんなの、この人。いや幽霊。」
「幽霊ではない。神である。」
「ますます変な幽霊。早く消えよっと。」
「こら、待たないか。我らはお前に用があってきたんだ。」
「用って?」
ジバク少女は、由梨が抱きかかえている絵里華を見た。
「ははん。その娘のことね。」
「この絵里華をいったいどうした?この神たちは絵里華を元に戻すためにここにやってきたのだ。」
「その娘、絵里華って言うんだ。あんたたち、アタシたちの仲間よね。元々死んでるんだし、別に意識がなくても、何も変わらないんだから、別にいいじゃない。」
ジバク少女は強気の姿勢である。
「そういう問題ではない。幽霊とて人格はある。人権もだ。それを奪うとは許せん。早く元に戻すんだ。」
「いきなり、何を言ってるのよ。そんな風になったのは、その娘に問題があるからよ。アタシは何もしてないわ。」
「何もしてないだと!では聞くが、このあたりで最近起こっている人間が魂を抜かれている事件に、お前は関与していないと言うのか?」
「お前って言う呼び方、気に入らないわね。これでもちゃんと名前はあるんだからね。『為善真実』と言うわ。」




