流行語大賞
『ピンポンパンポン、ピンポンパンポン』
「いらっしゃいませ~。」
深夜のコンビニに響く掛け声。こんな時間の来店客には大きな声をかけることが防犯上非常に重要かつ有効である。こうして歓迎しつつも警戒しているということをごく自然に訴えているのである。アルバイトも大変だ。
「た、助けて下さい。き、気持ち悪いんです。」
突然店内に倒れ込む女の子。18歳位に見える。酔っ払いなのか。飲酒はいいのか?
「どうされました?大丈夫ですか。」
バイト店員の男子学生は女の子に駆け寄る。彼女は床に両手をつく。そして。
『オエオエ~!』
やり始めてしまった。ヤバい。泥酔状態なのか。これでは掃除の行き届いたフロアが『特性お好み焼き』まみれになってしまう。
「気分が悪いんです。救急車を呼んで。お願い。」
絞り出すように、声をあげる。
「わ、わかりました。すぐに手配します。」
店員はとりあえず、客を床に寝かせて、電話をかけるため、バックヤードの事務所に駆け込む。大急ぎで119番通報。こちらの所在地、現状を説明する。すぐに店舗に戻る。
「いない!いったいどこへ行ったんだあ!」
思わず叫んだ言葉が誰もいない店内中にこだまする。
(うまくいったわ。あたしの能力も大したものね。)
カウンターの下に隠れていた何者かが、何事か呟いてコンビニから姿を消した。
こんな事件が現世で横行している。マスコミはこれを『オエオエ詐欺』と表現するようになった。普通の学校でもこの真似をする生徒が増加してきた。この年の流行語大賞候補にもなっている。ただし、この話には続きがある。




