表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/137

百代目閻魔大王候補ですよ。

【プロローグ】

昼なのか夜なのかわからない紫紺の暗さ。見ているだけで魂が引き込まれそうな気がする奥行き。広さは1000人以上収容できるホテルのパーティールーム以上で、真っ赤なペルシャ絨毯が敷き詰められている。ビリヤード、ビンゴ、スロットマシン、ダーツ、トランプ、麻雀、花札などができるスペースがある。ここはカジノのように見える。広間のいちばん奥にはひときわ巨大なルーレットが鎮座している。直径で20メートルは優にあるだろう。ナンバーの大きさだけでも1メートルはありそうだ。


話声は聞こえない。こういう場所で静かなのは違和感がある。この部屋で存在が確認できるのはわずか3人のみ。

うりざね型の顔をした執事が恭しく頭を下げて、声を発する。漆黒の髪を真ん中やや右から丁寧に分けて綺麗に流し、三日月の目が鋭利な刃物のように空気を斬っている。


「さあ、女王様。ルーレットを御回しください。次が控えておりますゆえ。」

 虎柄のソファーにどっかりと腰掛けて、シースルーに近い紫のドレスを着た妙齢の女性が答える。


「そうだね、李茶土りちゃーど。今回も軽い魂だよね。をねゐさんが適当に入れるだけで良いかな?」


「御意にございます。」

 執事・李茶土は黒服に白い手袋。背は高く痩せて見えるが、いわゆる『痩せマッチョ』と思われるような肉付きの良さと骨太が見て取れる。

ルーレットナンバーには『天』『地』だけしかない。いや、『?』というのがひとつだけある。しかし『?』に当たる可能性は非常に低そうだ。


「よし、スタートアップしてよ。」


「畏まりました。」

 黒服の執事が白い手袋をはめた腕を回すと、ルーレットが自然に起動し始める。ゆっくりと回転を開始したかと思うと徐々にスピードを上げてきて、バイクの車輪のようになってきた。しかし、音を発することなく、静寂は守られている。いつの間にか野球ボールくらいの玉が盤の上を回転に抗うように走っている。

『カラカラカラカラ、カラン』

 停止したところは『天』。


「天獄かあ。幸運と言えるのかな。」


「さあ、どうかな。さして変わるものとも思えないけどねえ。女王の思い過ごしじゃないの。」

 女王の右隣に立っている紺色の服を着たメイドが右腕をグルグル廻しながら答えた。執事に比べてずいぶん不遜な態度であるが、女王は特に気にかけた様子もない。

 女王は軽く立ち上がって、辺りを睥睨した。


「をねゐさんの後継者をそろそろ探さないとね。どうやらチカラが落ちてきてるようだし。このままではこのバベルの塔が減っていくもんね。いやすでにひとつ消えてしまったようだよ。」


「ご心配には及びません。これから候補者、いや『候補者見習い』を見つけております。その場所へすぐにご案内申し上げます。」

 執事が、心持ち頭を下げて、女王にそう回答した。


「そうなの。見習いなんだ。先は長そうだね。でも早く見たいものだね。」

 女王は柔らかい表情のまま、右手で軽く口を撫でた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ