伝えたいが伝えられない想い
僕は目の前の子が気になって仕方がない。
電車の座席に座っているため目の前で立っている子がどうしても目に入ってしまう。特にぽっちゃりとしたお腹が印象的でそれが可愛さを感じさせる。顔を見る勇気はないが丸々としていて可愛いのだろう。やはり僕は気になってちらちらと見てしまう。視線をそらすためにやっているゲームが全く集中できない。すぐに負けてしまい落ち込む。しかし僕が今感じている気になるという衝動には負けないと誓う。その衝動と戦うこと数分。目的の駅1つ前に着いた。パラパラと乗客が乗りますます距離が近づく。
「お、ポンタ! 」
唐突なその呼び方に吹きそうになったがなんとか堪えた。そう呼んだ青年は僕が気になっている子の隣に立った。
「お、ポンタ、チャック開いてるぞ」
こいつ言いやがったああああああああああ
このぎゅうぎゅうの車内で言いやがったぞおおおお
心の中でぼくは叫んだ。ぼくがどうしても言いたかったことをこいつは平然と言ってしまった。僕は笑いを隠すため俯く。
「ドアが閉まります」
あ……僕は乗り過ごしてしまった。
学校がこの駅にあるため多くの人が降りて行ったのにもかかわらず。