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神降る森  作者: 芦田香織
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第一章

「エドナ!!こっちへ来いよ!」


「あぁ!今行くから少し待ってくれ!」


北東にひっそりと存在する町、クリスティナ。

364日間雪が降り続けると言われる町。

そして今日は、唯一、雪がやむ日、神変祭の日。


神変祭とは?

クリスティナのすぐ近くには小さな森がある。そこには神が住んでいると言われ、1年間で世代を交代する。

その交代する日だけは町は晴れる、そして神は空に帰り、空から降りてくるのだ。

それを祝うのがこの神変祭。まさに書いて字のごとく、だ。


そして今にぎわう町でみんなから名前を呼ばれる人気者のこの女性、名をエドナ・カルナウフと言う。

この町にとって、また森にとって重要な人物であるエドナ。

何故かというと、降りてくる神様のお世話係であるのだ。

降りてくる神様は最初は子供であり、時間がたつにつれ、成長していく。

それは普通の人間となんら変わりないのだが、成長するスピードが違う。

他の神様はどうなのか知らないが、1年で成人し、老いる。

寿命が、1年なのだ。

その成長を見守り、無事空に帰すのがエドナの仕事である。

その資格を持つ者は、代々蒼い目を持つものとされている。

エドナの瞳にも、美しい蒼が宿っている。


エドナの唯一の休養日であるのにこんなにあわただしくてよいのだろうか、と稀に人々は思うのだが、普段の生真面目な性格に対して、こんな騒ぎが好きな一面も持っているため、エドナはこの日が休養日であることを心より嬉しく思うのだ。


「エドナ!酒は足りてるかい!?」


「あぁ!こっちはもう十分さ!」


男衆に混ざって酒を飲む姿は勇ましく、女衆に好まれると同時に、いつか嫁の貰い手がつくのかと心配する奥様方もいる。

まぁ、エドナは嫁に行く気もさらさらないし、なんなら婿を貰う性格であろうともっぱらの噂だ。


一つに結った金髪と蒼い目。

黙っていれば素敵なお嬢さんなのだが、1度口を開けば勇ましさのほうが際立つ。

そんなところも皆に愛される理由の一つであろう。


ガヤガヤと町が揺れるのではないかと思うほどの騒ぎ。

子供たちはそこらを駆け回り、音楽団は笛太鼓を鳴らし町中を練り歩く。

この日にだけ咲く花、日の光を浴びれば開花する花たちが雪の下から顔を出し、

女衆はそれを髪飾りにして、広場にて踊りまわる。

エドナを含んだ男衆は酒と食事を前に酔っ払い、何がおかしくてか大笑いする。

町が一番、にぎやかな日。



夕刻が徐々に近づき、祭りも少しづつ興ざめし、皆それぞれの家に戻り始めた。

もうすぐ日が沈む。

次日が昇るときにはもう、雪が降り始めているのだろう。


季節は春。

春が、この町での1年の始まりだ。


完全に日が沈み、それでもいつもより寒くないなと思いながらいつもは厚い雲に覆われている空に星が浮かんでいるのをエドナは眺めてから、家に入った。


明日からきっと、忙しい日々が始まる。

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